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「クワイエット・プレイス」(2018年)

非常によくできたホラー映画。

音を立てるとモンスターに襲われる世界。
その中でサバイバルしているアボット一家の物語。
冒頭、幼いボーがモンスターに襲われて死ぬ。
音の出るおもちゃを手にしていたのだ。
その事件は家族のそれぞれに傷をつける。
痛みの中で彼らは家族とはなにか、自分の役割とはなにかということを考えていく。

この映画の特徴は二つある。
シナリオの執筆開始が2016年であり、wikiによると政治的な風刺を含んでいる、とのこと。トランプ政権のことを言っているのだと思う。
そこから、目が見えず、聴覚が発達しているモンスターが誕生したのではないか。現実を直視せずになんでも攻撃するモンスターのいる世界で、人々は声を潜めて暮らしていかなければならない。
もう一つは、この映画が下手な感動ものよりも優れた家族映画になっているところだ。こういう極限状態において本質的な問いを投げかけるのは有効な手法なのかもしれない。

特に感動したのは、エミリー・ブラントがバスタブで出産するシーン。
モンスターが家に侵入しており、陣痛の痛みにも声を立てられない。
家を離れていた夫と息子は近くまで帰ってきて、赤い電球が灯っているのを見て、危険が迫っていることを察知する。
夫の指示で、息子は打ち上げ花火を上げる。花火の音とそちらに反応していくモンスターの唸り声が混然一体となり、瞬間、音が消えて、エミリー・ブラントが出産の叫び声をあげる。
それまでの緊迫感が破られて、銃を持った夫が走り、遠くにいた娘が花火を見て走り出す、という動的なイメージに転換する。
映像、演技、音楽、編集のすべての要素がかみ合った、映画のすばらしさを実感できるショットになっている。

製作費26億円。
興行収入530億円。
ものすごいヒットだが、ほとんど人が出てこないのに製作費が26億円もかかるのか、というところに驚きもある。

時代の空気をとらえて、それを独創的な形で表現する。
ただし、独創的なだけでなく、クラシカルな要素(本作では家族愛)も盛り込み、観客がとっつきやすいようにする。
映画に限らず、芸術作品は作られた理由があるから、それを自分なりに考えていくことで見えてくるものもある。

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