ドクター・スリープ(2019年)
「シャイニング」(1980年)の40年後を描いている。「シャイニング」も本作もスティーヴン・キングの小説を原作としているが、内容が違うので、ここでは映画のみに焦点を当てる。
ちなみに、おもしろいかどうか、という点については、前作がキューブリックの傑作だったことを踏まえると、どんなに頑張っても酷評は免れないだろう。だから、作品の良し悪しについては触れないでおく。
ざっくりとしたストーリーは下記のようなものだ。
主人公は「シャイニング」の主人公であったジャック・トランスの息子、ダニー。彼は前作の舞台であった「オーバールックホテル」のトラウマが残っていて短気なアル中になっていた。父親のジャックと同じだ。
しかし、友人の助けもあって依存症から抜け出すことができた。病院での仕事も得ており、死ぬ間際の患者に寄り添って「シャイニング」の能力で、患者の頭に直接話しかけていた。それゆえ、「ドクタースリープ」という名前で呼ばれるようになっていた。映画ではこの「ドクタースリープ」という名前が説明されるのはここだけで、全体的にはあまり活用されていない。
「トゥルー・ノット」と名乗る能力者の集団がいて、彼らは「シャイニング」の能力を持った人間の生気を吸って力を得ていた。「トゥルー・ノット」の犯罪に気がついたアブラという少女がもう一人の主人公だ。彼女もまた「シャイニング」の力を持っている。
ダニーとアブラは協力して、「トゥルー・ノット」に立ち向かう。
「トゥルー・ノット」との戦いというのが、ストーリーとしてのミッションになる。ただし、ダニーにとっては自らのトラウマの解決がミッションだ。ここで、トラウマは自ら立ち向かわなければ解決できないし、そのためには勇気が必要だ、というテーマが伝わってくる。このテーマはうまくストーリーに盛り込んでいた。また、「シャイニング」の力は使い方によっては善にも悪にもなるという前置きは必要ながらも、力は伝えていかなくてはならない、というメッセージも盛り込んでいる。
現代社会では、人々は打ちのめされて、メンタルを病んでいる人も多い。この映画のダニーもそうだ。しかし、打ちのめされてばかりでは本当の意味での自分を取り戻すことはできない。人生には、自分自身に向き合わなければならない時がある。その経験を乗り越えた人が、強くなれるのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=YgLsQiodvhw&t=54s