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アート関係を必死に理解しようとしてレビューするマガジン

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#アート

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

これはなかなかよかった。
ゴーギャンのような南国の明るい絵のイメージがあるが、そこに至るまでの道のりがかなり険しい

8歳から69歳まで、一生にわたる作品を展示している。
このキュレーションはうまかった。
おかげで田中一村がいかにオリジナリティーをいかに獲得していくか、もしくはオリジナリティーの獲得がいかに難しいかを観ることができた。

8歳の頃は神童と呼ばれた。
水墨画のような作品が多かったがプ

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「石川九楊大全」展

「石川九楊大全」展

書家・石川九楊の展覧会。
「後期【状況篇】 言葉は雨のように降りそそいだ」にいった。

「エロイエロイラマサバクタニ又は死篇」(1972年)
「風景交響」等(1980年代)
戦争やテロに関する作品(2000年代)
「河東碧梧桐109句選」(2022年)
といったように、年代ごとに展示されている。

自分は書に関してはズブの素人なので、ここに書く感想は書における常識なのかもしれないし、石川九楊という

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村上隆 もののけ 京都

村上隆 もののけ 京都

「村上隆の五百羅漢図展」(2015年)よりはこぢんまりとした印象。

よく知られている日本画のテーマやモチーフをスーパーフラットに解釈した作品群と、村上隆によく登場するキャラクターの現在形が展示されていた。そういう意味では、新作ではあるものの、どこかで観たことのある作品、ということになる。

これが現在の村上隆なのかもしれない。
つまり、ウォーホルは大衆文化のアイコンを大量に複製することでアートに

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「デ・キリコ」展@東京都美術館

「デ・キリコ」展@東京都美術館

デ・キリコの「形而上絵画」というキーワードを聞くと、半ば条件反射的に埴谷雄高の「形而上文学」を連想する。埴谷雄高は「死霊」において「虚体」というキーワードを提示し、実体のない、存在だけの人間について書いた。
デ・キリコもまた絵画において実体のない本質的ななにかを探し求めたのだろう。

画面の色の話をすると、デ・キリコは郷愁を描いた。それは空の色合いによくあらわれていた。テレンス・マリックの映画でよ

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展覧会「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」

展覧会「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」

「CURATION⇄FAIR」という新しいアートイベントが行われている。
展覧会と、アートフェアを、それぞれ期間をわけて行うイベントだ。
自分は展覧会のほうにいった。展覧会と、アートフェアで取引される作品が同じものなのかはわからない。

会場は九段下にある「kudan house」という施設だった。
ここは普段あまり一般公開されていないそうだ。
1927年に建てられたというから、昭和の最初期だ。

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日本民藝館

日本民藝館

柳宗悦(1889-1961)が1936年に建てた施設。
普段使いの工芸品の中に美を発見した柳宗悦は、民藝運動を展開する。民藝とは「民衆的工藝」の略。

食器や時計などと一緒に十字架などのイコンも陳列されている。日本の仏壇はなかったが、宗教的なアイテムも工芸品なのだろう。
自分は初心者なので細かいことはわからないが、眺めていると、なるほどたしかに味わいがある。
展示物だけでなく、建物そのものにも雰囲

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特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」

特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」

「やまと絵」の定義は時代によって変わるそうだ。

本展では、平安時代、鎌倉時代、室町時代を中心に、絵巻物や屏風を展示している。目玉になるのは4大絵巻(「源氏物語絵巻」、「信貴山縁起絵巻」、「伴大納言絵巻」、「鳥獣戯画」)。

自分が知らないだけなのかもしれないが、平安時代に描かれた「阿字義」という絵巻物には、カタカナでフリガナが振られていて驚いた。

また、鎌倉時代の絵巻には庶民の姿が描かれていた

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アーティゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」

アーティゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」

展覧会のタイトルにある「ジャム・セッション」とはなんだろうか、と考えていたのだが、おそらくは石橋財団のコレクションに対して、山口晃がアンサーを出すという行為をジャム・セッションと称しているのだと思う。
そして、それはアートに向かい合うとき、観客もアーティストに対して同じことをしているのだ。

「サンサンシオン」というのは、「感覚」を表すフランス語だそうだ。
ここで問われているのは、我々の感覚は、い

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「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」展

「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」展

火薬を使ったパフォーマンスで有名なアーティスト。展覧会で展示されているのは、火薬を使って作った絵画のような作品と、パフォーマンスの構想を描いた作品(企画書のようなものもあるが、ちゃんと火薬を使ってイメージを描いてあり、作品になっている)。

冒頭「火薬を使用したのは、若い自分が、社会的統制に対して反発心を持っていたからでもあるでしょう」と書かれていた。
彼はずっと日記を書いているようなので、この言

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デイヴィッド・ホックニー展

デイヴィッド・ホックニー展

これはすばらしかった。
デヴィッド・ホックニーという作家は、プールに飛び込んだ瞬間の絵が代表作なんでしょ、くらいでさほど好きでもなかった。ただ、こういう風に回顧展として作品に触れると、いろいろと見えてくるものがある。

ホックニーはイギリスのブラッドフォード出身のモダンアートの作家だ。若かりし頃にピカソの作品に出会い、大きな影響を受ける。
絵画を描くときの自由なスタンスというのを学んだのだと思う。

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Tokyo Gendai

Tokyo Gendai

パシフィコ横浜で開催されたアートフェア「Tokyo Gendai」。
世界のアートギャラリーが出展しているから現代のアートのトレンドを知ることができる、というのが売りになっている。

会場を回って、「子どもっぽさ」というのがひとつのキーワードになっている気がした。それはマンガっぽさなのかもしれない。それが現代アートのトレンドなのだろうか。ただ、そもそもここは商談の場であることを考えると、世界中のギ

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奇想の絵師 歌川国芳 | うらわ美術館

奇想の絵師 歌川国芳 | うらわ美術館

国芳は結構見ていると思っていたが、知らない作品が大量にあった。
あまりにも時間がなく、じっくり観られなかったがすばらしかった。

水滸伝のような武者たちが大活躍するスペクタクル絵巻に題材をとった作品群は、いかにも国芳といった作風で、大満足。歌舞伎の見得のような、決めのポーズで怪物を退治する姿など、躍動感があっていい。
赤や黄色、青などをベタ塗りし、人物や妖怪変化を適度にデフォルメすることで漫画チッ

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特別展「国宝・燕子花図屏風 光琳の生きた時代1658~1716」

特別展「国宝・燕子花図屏風 光琳の生きた時代1658~1716」

はじめての根津美術館。

尾形光琳の「燕子花図屏風」を中心として江戸時代前期の屏風や絵巻の展示。

源氏物語の屏風などもあり、とてもいい。

それにしても、日本美術の展覧会にいくと「源氏物語」を題材とした作品が多いので、読み直しておかないといけないと思った。

「夏草図屏風」も展示してあって、これは過去に観たかもしれない。そう、尾形光琳のことはよく知らないのだ。狩野派との違いもよくわからないくらい

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マティス展 Henri Matisse: The Path to Color

マティス展 Henri Matisse: The Path to Color

マティスというアーティストについてほとんど知らなかった。
名前もスタイルもまったく違うモネと混同していた。

会場で「ジャズ」シリーズの展示を観て、はじめて「観たことがあるな」と気がついた。なぜこん

なにも理解していなかったのか。

自分なりに考えてみると、いくつか理由があって、「ジャズ」シリーズがあまり好きではないということや、マティスの作風というのが把握しにくいということ、もしかしたら、日本

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