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クリプト政権の誕生とそのキーマンたち

【クリプト狂時代】

「ビットコインは詐欺にしか思えない」2021年夏、ドナルド・トランプはそう言った。「ドルに対抗しようとする通貨は嫌いだ」

それからちょうど3年後の2024年7月、ナッシュビルで行われたビットコイン・カンファレンス「Bitcoin 2024」にて、ドナルド・トランプ次期大統領はクリプト業界人を20世紀初頭の発明家や実業家に例えた。

「あなた達はまさに現代のエジソン、ライト兄弟、カーネギー、ヘンリー・フォードだ。私の仕事はあなた達を解放すること、あなた達を『アメリカ人が最も得意な事』ができるよう促すことです…それはつまりWin! Win! Win!」

2022年の大暴落から生き残ったクリプト業界の大物たちは、トランプがこの約束を守るだろうと大きな賭けをしている。2024年の大統領総選挙、クリプト業界は政治資金管理団体(スーパー PAC)を通じてトランプを支援したほか、プロ・クリプト(クリプト推進派)の議員を党派問わず支援し、下院250人に上院12人(銀行委員会長を含む)を当選させ、大勝利を収めた。大統領総選挙でトリプルレッド(内閣、上院下院すべて共和党勝利)となった結果、新政権の閣僚、高官、政府機関幹部、議員の多くがもはやプロ・クリプトとなった(なお司法トップである最高裁判所裁判官も共和党派が多数)。

とどのつまり、この大統領総選挙の結果は、シリコンバレーのテクノロジー新興企業に代表されるニューマネーがウォール街の既得権益に代表されるオールドマネーに対抗した「資本主義権力再編の始まり」と言っても過言ではない。政界への発言権と利益の再分配が行われようとしているのだ。クリプトやAI に代表される新興産業は「効率性、イノベーション、分散化」を重視しており、「規制緩和」を求める声が高まっている。(この動きは、テクノロジー産業に富がさらに集中し、格差拡大を加速させる、という内部矛盾に繋がるのだが、それはまた別のお話)

新トランプ政権ではビットコインを戦略的な連邦準備金に組み入れる可能性も検討されている。ちなみに米国政府は現在すでに190億ドル(3兆円)相当の18万3000BTCを保有しており、これは国家として最大のビットコイン所有者である。さらにテキサス州、ペンシルバニア州、アラバマ州、オハイオ州でもビットコイン備蓄法案が提出された。

ビットコインの半減期から半年、クリプト狂時代(Crypto Rush)の到来が期待されている。以下、アメリカを中心としたクリプト黄金時代に欠かせないキーマンを紹介する。
(2024年12月現在)

まずは、もはやクリプト政権といっても過言ではない第2次トランプ政権の政府関係者から。(閣僚に関してはトランプの氏名を受けたものの、まだ議会承認前)

JD ヴァンス JD Vance (40)

副大統領

オハイオ州上院議員。元ベンチャーキャピタリスト。
元企業弁護士。元海兵隊。

ラストベルトの白人労働者の姿を描いた回想録「ヒルビリー・エレジー」のヒットで名を上げたヴァンス。イェール大学法科大学院を卒業後、シリコンバレーでPayPalマフィア親分のピーター・ティールのもとベンチャーキャピタリストとして働いた。後にテック業界の支援を受けてベンチャーキャピタル企業Narya Capitalを設立し、 2022年ティールからの資金援助を受けて上院議員に就任した。

25万~50万ドル相当のBTCを保有するビットコイナーであり、「クリプトは不合理な執行措置への解決策」として称賛している。

上院議員として証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長に書簡を送り、クリプトへの執行措置に対する懸念を表明、ゲンスラーを「クリプト業界を規制するのに最悪の人物」と呼んだ。規制「SAB121」を撤廃するための共同決議にも賛成票を投じ、クリプト関連企業が銀行から締め出されるのを防ぐことを目的とした法案を提出。2024年6月、SECと商品先物取引委員会によるクリプト市場の監督方法の見直しを目指し、デジタル資産規制をクリプトに優しい形に見直す法案も起草した。

イーロン・マスク Elon Musk (53)

政府効率化局(DOGE)共同責任者

南アフリカ共和国出身の起業家。
Space XとTeslaの最高経営責任者、
X(Twitter)執行会長/最高経営責任者。
PayPal、OpenAI、xAI等も共同設立。
「PayPalマフィア」表の顔。

政府効率化局(DOGE)はシンクタンクのような組織で政府には入らず、大統領に助言する形で、大統領令を発動させ、行政管理予算局で執行していく仕組み。

政府効率化局(DOGE)の頭文字はドージコイン(DOGE)のティッカーと同一。マスクはドージコインへの支持を頻繁に表明しており、市場に影響を与えている。The Boring Companyによるラスベガスの地下高速交通システム「Vegas Loop」ではドージコインを運賃として利用可能にした。
2024年初め、Xスペースで「私はまだ大量のドージコインを所有しており、スペースXは大量のビットコインを所有している」と語っている。現在、テスラは1.1万BTC以上を保有しており、その価値は10億ドルを超える。

2021年5月にお笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ」出演したイーロン・マスクは、報道番組コントのコーナーで経済専門家のキャラに扮し、「DOGEについて解説するも全く理解してもらえない」というコントを展開。「(ゴッドファーザーならぬ)ドージファーザーと呼んでくれ」とジョークを飛ばし、「To the Moon!!!!」と叫んだ、途端に大暴落、という事態を引き起こした。(出演前に番組で触れることを公言していたため、ピークは期待値マックスとなった出演直前だった。つまり「噂で売って事実で買え」を実証)

デービッド・サックス David Sacks (53)

クリプト&AI責任者(White House Crypto & AI Czar)

元PayPalの共同創業者COO。起業家。
ベンチャーキャピタル企業Craft Ventures共同創業者。
All Inポッドキャスト司会者。「PayPalマフィア」若頭。

マスクと同じく南アフリカ生まれでマスクの盟友。マスクやピーター・ティールらPayPal出身者が集まる「PayPalマフィア」の一員である。JD ヴァンスのNarya Capitalの初期投資家でもある。早くからクリプトを熱心に支持しており、ソラナなどを保有していたこともある。ビットコインの登場で革命が起きるとし「私たちは今、新しいタイプのウェブの誕生を目撃している。これを分散型ウェブ、あるいは通貨のインターネットと呼ぶ人もいる」と語っていた。

ホワイトハウス直轄で新設されるクリプト&AI責任者(Crypto & AI Czar)は、3兆ドル規模のデジタル資産市場の成長促進を支援する新たな政権ポストである。クリプトの規制緩和推進を担い、クリプト支持者がホワイトハウスに直接働きかける際の窓口となるほか、デジタル資産を担当する連邦機関、議会などとホワイトハウスの調整役となる見込みだ。他にも1800億ドル規模のステーブルコイン市場の枠組みを作ることや、金融規制当局と協力してこの分野で活動する米国企業のためのセーフハーバーを作る可能性もあると報じられており、SECやCFTCの負担が大幅に軽減するとみられる。トランプは「サックスは政権のクリプトとAIの政策を主導する。この二つの分野は今後のアメリカのビジネス競争力にとって極めて重要だ。サックスはアメリカが両分野で明らかに世界のトップに立てるよう力を注ぐだろう」と言及。

クリプト責任者の元々の最有力候補は違った。しかし、最終的にAIも傘下となったことで、サックスが変革を目指すリーダーに選ばれた。サックスはCraft Venturesを通じてxAIやcopy.aiなどのAI企業に投資している。クリプトとAI、2つのテクノロジー業界が補完し合い、アメリカを技術的に前進させ、規制政策の緩い他国に追い抜かれまいという新政権の意向を示している。ひとまず政府に求められていることは(技術やアイデアやビジネスチャンスの)「邪魔をしないこと」。それに付随して法律や規制が必要な場面もできるだろう。Solanaの強力な支持者でもあるサックス。なお、サックスの名前を冠したミームコインは発表直後に16,000%急騰している。(もちろんその後、数日で暴落した)トランプは、サックスが大統領科学技術諮問委員会のトップも務めるとも明らかにしている。ちなみにサックスはJD ヴァンスの議員出馬に際し、100万ドルを寄付していた。

2024年6月、サックス邸で行われた一人当たり
30万ドルの夕食会のスクリーンショット。
20名の投資家が集められ、誰を副大統領候補に選ぶべきか
非公式のアンケートが行われた。
夕食会には他の副大統領候補も出席していたが、
参加者全員が同じ回答をした。
「副大統領はヴァンスに」
若かりしイーロン・マスクとデービッド・サックス。

ボー・ハインズ Bo Hines (29)

クリプト評議会(大統領デジタル資産諮問委員会)事務局長

(the Presidential Council of Advisers for Digital Assets)

元カレッジフットボール選手

政治にも暗号資産にも初心者と言われるハインズは、2022年と2024年の2回、ノースカロライナ州下院議員選挙に立候補した経歴があるのみ。29歳という若さでの大抜擢となるハインズだが、クリプト&AI責任者でクリプト評議会議長となるサックスの下で「未来を担う若者たち」代表として事務局長を担うべく、期待がかかる。

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ちょっと閑話休題して、政権入りしてない人物なのだが一人、影の暗躍者と筆者が推測する重要人物を先に紹介する。

ピーター・ティール Peter Thiel (57)

PayPalマフィアのドン

PayPal、米軍を支えるAIデータソフト企業Palantir創業者。
Meta(Facebook)、OpenAI最初期投資家。

「影の米大統領」の異名を持つドイツ生まれの起業家・投資家。「PayPalマフィアのドン(組長)」と呼ばれ、イーロン・マスクとはPayPal時代からの腐れ縁。
革命的サービスの「創業者が経営する企業」に一点張りすることで異次元の成功を収めるベンチャー・キャピタル会社Founders Fundも経営。また、大学を退学して起業する学生のための奨学金「ティール奨学金」でイーサリアムのヴィタリック・ブリテンなど数々の天才起業家を産み育ている。

また、政治家、多国籍企業・金融機関・財団代表、王族など世界的有力者が年一集まる秘密会議「ビルダーバーグ会議」で運営委員を務める。

2016年の大統領選で、民主党支持の多いシリコンバレー界隈ではなから共和党トランプを推し、第1次トランプ政権で政策顧問となる。その後、トランプと一度距離を置いたが、最終的にはJD ヴァンスの仲介でまた仲直りした。ヴァンスの元上司であり、ヴァンスの副大統領任命に重要な役割を果たしている。

2022年にマイアミで開催されたビットコイン・カンファレンス「Bitcoin 2022」で、「法定通貨制度の終焉」を宣言し、ビットコインに投資するようBlackRockやウォール街の銀行を説得、この動きが2024年の現物ビットコインETF・現物イーサリアムETFの実現につながったと言われている。なお、投資の神様ウォーレン・バフェットを「反社ジジイ」呼ばわりし、アンチクリプトの既得権益や老舗金融機関を個人から搾取するだけの中間業者と批判している。

ティールは個人としてのみならず、Founders Fundとしても2014年からビットコインに投資しているが、2022年に一度キャッシュアウト、2023年にまた2億ドル(約300億円)分のビットコインとイーサリアムを購入したと報告されている。

「Bitcoin 2022」にて、ビットコイン・カンファレンスで、ピーター・ティールは100ドル札を取り出し、「これは本当に奇妙だ。これは何?」と尋ねた。 彼は紙幣を振り回しながら「トイレットペーパーとしてはおそらくあまり良くない。壁紙としても良くない。これは一種の粗悪な法定通貨だ」と語った。

若かりし頃のティールとマスク
PayPal マフィア。

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スコット・ベッセント Scott Bessent (62)

財務長官

投資家。ヘッジファンドマネージャー。
Soros Fund Management最高投資責任者。
マクロ投資会社Key Square Group創設者。
母校イェール大学評議会メンバー。

「クリプトは若者や市場に参加したことのない人々を呼び込んでいる」と語るベッセントは、ブロックチェーン・スタートアップやDeFiに投資しており、金融システムの近代化におけるブロックチェーンの長期的な可能性を声高に支持してきた。ベッセントが財務長官となった暁には、イエレン現長官によるアンチ・クリプトからの大きな転換となると見られ、これまでで最もクリプト推進派の財務省となるだろうと言われている。
ちなみに同性愛を表明する2人目の米国閣僚となる。

キャロライン・ファム Caroline Pham

商品先物取引委員会(CFTC)委員長

新トランプ政権では、商品先物取引委員会(CFTC)がクリプトの規制当局となる予定で、委員長代行にキャロライン・ファムが選出された。
ウォール街のバンカー出身。スタッフレベルでも委員としてもCFTCで働いた経験を持つ彼女は、退任する民主党のロスティン・ベーナム委員長の後を引き継ぐ。

ポール・アトキンス Paul Atkins(66)

証券取引委員会(SEC)委員長

弁護士。金融コンサルPatomak Global Partners創業者。

次期SEC委員長となるアトキンスはクリプトを厳しく取り締まったゲンスラー体制から方針転換を図り、業界育成に軸足を置くことになる見込み。
2002-2008年のSEC委員時代には、SEC の透明性・一貫性およびSEC訴訟などの費用対効果の分析を提唱。金融サービスが SECの規制に適合するよう規制緩和を推進したほか、投資家が被害を受けた状況を調査・是正すべく努めた。

クリプト推進派として知られるアトキンスは、デジタル商工会議所が設立したToken Alliance(トークン連合)で共同会長を務め、業界初の包括的ガイドラインを策定するなどし、多くの企業のブロックチェーン活用をサポートしてきた。また、PayPal親分ピーター・ティールやOpenAIのサム・アルトマンが支援するDeFiプロジェクトのリザーブ・プロトコル(Reserve)の顧問でもある。

ハワード・ラトニック Howard Lutnick (63)

商務長官

Cantor Fitzgerald最高経営責任者。
証券会社BGCグループも経営。

Cantor Fitzgeraldウォール街の金融サービス企業。911の被害で日本でも有名になった。2021年からTeser(USDT)の米国債ポートフォリオ、2023年からは債券ポートフォリオを管理。さらにビットコインファイナンス事業を開始することを発表している。

ラトニックは「ビットコインはコモディティである」と主張し、「現物ビットコインETFは米国人がビットコインを購入するための方法だ」としながらも「ビットコイン自体は米国のものではない」と語っている。

ヴィヴェック・ラマスワミ Vivek Ramaswamy (39)

政府効率化局(DOGE)共同責任者

バイオテックスタートアップRoivant Sciences創業者。

マスクと共に政府効率化局を仕切る。元大統領選立候補者だったが、辞退したのちにトランプ・キャンペーンに参加。SECなどの機関による規制手法を批判し、消費者保護を確保しながらイノベーションを促進する枠組みを提唱。2024年11月、ラマスワミが共同設立した金融サービス会社Strive Asset Managementは一般人向けポートフォリオにビットコインを組み込むことを発表した。
ちなみに論破の達人として知られ「アメリカ版ひろゆき」との異名を持つ、とかなんとか。

ロバート・ケネディ・ジュニア Robert F. Kennedy Jr.(70)

保健福祉長官

政治家。弁護士。ケネディ家の異端児。

有名ビットコイナーで、米司法省などが犯罪者から押収した20万BTCを米国の戦略的準備資産として保有するよう働きかけている。陰謀論をもろもろ提唱していることもあり、民主党系の他のケネディ家メンバーからは非難されている。

トゥルシー・ギャバード Tulsi Gabbard(43)

国家情報長官

31歳でハワイ州選出下院議員。
21歳で州議員という史上最年少記録を持つ。

民主党だったが、2024年選挙でトランプに接近し共和党に。
2017年にはライトコインとイーサリアムを保有していた。クリプトの分散型の性質を損なうとして中央銀行デジタル通貨(CBDC)を批判している。

マイケル・ウォルツ Michael Waltz (50)

国家安全保障担当補佐官

フロリダ州下院議員。

ビットコイナー。個人投資と立法活動を通じて、広範な暗号通貨セクターに対する支持を示してきた。「FIT21(21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法)」や「クリプト規制SAB121撤廃を目指す法案」に賛成票を投じたほか、米中央銀行デジタル通貨中央銀行デジタル通貨(CBDC)禁止法案の共同提案者でもある。

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続いて、アメリカを中心としたクリプト業界のキーパーソンを紹介する。その前に、2024年大統領総選挙を大きく揺り動かした、クリプト業界ロビイストによる団体フェアシェイクについて説明しておきたい。

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特別政治活動委員会フェアシェイク

Fairshake, Super PAC

フェアシェイクはクリプト推進派の候補者を支援する
スーパーPAC(特別政治活動委員会)だ。

スーパーPACとは企業や富裕層から選挙資金を集め、その資金を連邦議会で寄付者の利益を擁護する可能性のある候補者に分配する政治資金管理団体。スーパーPACでは、候補者と直接連携せずに(候補者の承認や指示を受けずに)、「キャンペーン広告の作成・放映」などの形で支援。この「独立支出」により、米国の選挙資金調達法の下で政治的な争いに無制限に資金を投入することができる。

スーパーPAC・フェアシェイクは、コインベース、ジェミニ、リップルなどのクリプト企業が設立。「米国を次世代のインターネットを構築するイノベーターの本拠地とすることに尽力する候補者を支援」しつつ、ブロックチェーン分野の「より明確な規制と法的枠組み」を推進している。
「OpenSecrets」によれば、2023年から2024年にフェアシェイクが集めた寄付金は2億ドル(約310億円)超え。2024年大統領総選挙で最も資金を集めた団体であり、企業が行った献金のほぼ半分をクリプト関連企業が占めたこととなった。

寄付金はクリプト推進派の候補者のみに与えられたが、党派を超えて民主党と共和党の両方(60%以上が共和党候補者)を支援し、 250人以上のクリプト支持派の議員が下院に選出され、上院議員も12人近くが当選した。この一連の勝利は、クリプトロビーの勢力拡大と、米国政治の将来を形作るフェアシェイクの影響力拡大を強調している。

大統領総選挙の熱が冷めやらない中、フェアシェイクは2026 年中間選挙に向けて動き出しており、2024年11月末時点で既に1億ドル超え(153億円)を調達している。

なお、リップルのCEOは、アンチ・クリプトのゲンスラーSEC委員長がいなければ、フェアシェイクは存在しなかっただろうと語った。

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ブライアン・アームストロング Brian Armstrong (41)

米国最大の取引所Coinbase 最高経営責任者

経歴:IBMの開発エンジニア、Deloitteコンサル、
Airbnb エンジニア。2012年にCoinbases創業。

特別政治活動委員会フェアシェイクの主力メンバーで、トランプの勝利を「新時代の幕開け」と称し、マール・アー・ラゴで面会し、潜在的なクリプト政策についての考えを伝えている。
Coinbaseは大統領総選挙でフェアシェイクを通じて7,500万ドル以上を寄付したが、すでに2026年中間選挙に向けて2025年中にも2500万ドルを寄付すると発表。米国での規制の明確化は今後数十年にわたり、世界中でクリプトがどう採用されるかを決める大きな要因になるとし、アンチ・クリプト候補者を落選させ、プロ・クリプト候補者を支援することに注力する必要があるとの姿勢を示している。アームストロングは、法案を成立させるためには超党派で取り組む必要があるため、党派に関係なく、プロ・クリプトの候補者を支援すると明言している。
Coinbaseは常に法に従うよう努めると主張。Coinbaseが「証券取引所として」登録されていないというSECの訴えを批判。 逆にSECの不明瞭さについて裁判で訴え返している。

マイケル・セイラー Michael Saylor (59)

ビットコイン保有企業MICROSTRATEGY 会長

MICROSTRATEGYはソフト開発メーカーだったが…

CEO時代、史上最も異例な企業転換の1つとして、ビジネス分析ソフト開発メーカーだったMICROSTRATEGY を世界最大のビットコイン保有企業に転換させた。386,700 BTC、430億ドル相当のクリプトを保有する。それ以来、テレビやYouTubeに出演してビットコインの宣伝を行っており、過去にはビットコインを「人類の最高の財産」や「通貨暴落から逃れるための暗号化されたエネルギーの箱舟」と呼んでいた。 マイクロストラテジーの株価は今年550パーセント急騰した。「ビットコインは金融ネットワークだ」と語るセイラーは、 価格が上昇するにつれさらに購入することを計画。今後数年間で420億ドル相当のビットコイン購入を計画しており、その支払いにはマイクロストラテジーの株を使用するという。

大統領選結果による高騰後も「I’m not selling(売らない)」と断言し、強気の投資戦略を強調。「取り残されないように。ビットコインは急騰している」

キャメロン&タイラー・ウィンクルボス兄弟 

Cameron & Tyler Winklevoss (43)

取引所Geminiの共同代表

経歴:元オリンピックボート選手。
Winnlevoss Capital Management共同代表

双子のウィンクルボス兄弟は、Facebookの設立をめぐってマーク・ザッカーバーグと抗争したことで知られているが、マーク・ザッカーバーグへの訴訟で得た6500万ドルの和解金を元手に、2011年という相当早い段階(当時は1ビットコインが7ドル程度)でビットコインの可能性を感じ、ビットコイン全体の1%を総額1100万ドルで購入した。

ウィンクルボスの取引所Geminiは遵守の穏健派とみなされていたが、SECがGeminiの破綻した融資商品の合法性をめぐって同社を訴えたことで、規制当局への不満を爆発させた。キャメロンは2024年初めに早くもトランプ支持を表明、バイデン政権と連邦規制当局が「我々の経済生活様式と、アメリカを世界で最も偉大な国にしたシステムを解体している」と非難。ゲンスラー委員長を「SECの評判を永遠に傷つけた恥ずべき人物」と評した。 兄弟はそれぞれトランプ氏陣営に100万ドルずつをビットコインで寄付し、キャンペーン中に何度も会い、フェアシェイクにも数百万ドルを寄付した。兄弟は現在、アトキンスがSEC委員長に就任することを歓迎している。

パオロ・アルドイノ Paolo Ardoino(40)

Tether 最高経営責任者

経歴:Fincluster創設者。元Bitfinex最高技術責任者

イタリア出身のエンジニア。2017年に最高技術責任者としてTetherに入社したアルドイノは、2023年にCEOに。Tether社が発行するステーブルコインUSDTは、クリプトの事実上の準備通貨となっている。商務長官ハワード・ラトニックとTetherのつながりから、アルドイノはトランプ大統領の側近に近い存在となっている。ラトニックの証券会社Cantor Fitzgeraldは、主要顧客でもあるTetherの株式5%を保有。Tetherは1380億ドル以上のトークンを発行し、それを裏付ける準備金として大量の米国債を購入している。しかし、Tetherはマネーロンダリングや密売人のお気に入りの経路であると法執行機関から頻繁に引用されている。詐欺を取り締まるためにTetherが世界中の警察やその他の当局と協力していることを指摘。「もし米国が我々を殺したければ、ボタンを押せばどこでも殺せる。我々は米国と戦うつもりはない」と語っている。

リチャード・テン Richard Teng (54)

Binance最高経営責任者

経歴:Abu Dhabi Global Market規制官。
シンガポール証券取引所SGX最高規制責任者。

世界最大のクリプト取引所Binanceがマネーロンダリング防止不履行で米国当局から刑事告発を受け、創設者で前CEOのCG(チャンポン・ジャオ)が過去最高の43億ドルの罰金に加え、和解の一環として取引所を辞めて4ヶ月服役せざるを得なかったため、シンガポール出身のリチャード・テンが2023年にトップ座を引き継くこととなった。
テンは、アブダビ市場の元規制官であり、前任者CGに比べると慎重な人物だ。しかしBinanceは、今だに市場操作の容疑を含む13件のSECの告発と戦っている。 トランプの勝利によって米国市場がBinancに開かれるかもしれないと期待されている中、テンは「ビットコイン戦略的準備金の話や、より多くの企業がビットコインを社債に追加していることから、我々はビットコインが真に世界的に主流となる瀬戸際にいる」と語っている。

ヴィタリック・ブテリン  Vitalik Buterin(30)

Ethereum 共同創設者

ビットコインに次ぐネットワークEthreumを作った天才。

ピーター・ティールによる「ティール奨学金」を獲得した後に大学を中退、「ビットコインマガジン」を設立したロシア出身のプログラマー起業家。2013年に19歳でEthreumを創設した。

クリプトの保有量によってビリオネアになったと伝えられているブテリンだが、その活動は商業色が薄く、非営利財団を通じてEthreumのエコシステムを構築することに重点を置いている。 2024年夏、他のクリプトリーダーたちがトランプを支持していた一方で、「プロ・クリプト」という理由だけで候補者を支持することを批判した。「このような方法で決断を下すと、そもそもクリプト業界に参入したきっかけとなった価値観に反する大きなリスクを伴う」と。

クリプトは「サイファーパンク」と個人の自由と国際主義の価値観から生まれたものだ、とブテリン。2018年にプーチン大統領と並んで座る自分の写真を添えて「クリプトは権威主義者にもアピールする可能性がある」と警告した。トランプの名前こそ挙げなかったが、関税と移民規制の強化を批判している。また、多くのクリプト投資家が「権力欲の強いナルシスト」を「コインの取引を容易にする」という理由だけで支持している、と批判した。

ブラッド・ガーリングハウスBrad Garlinghouse (53)

Ripple Labs最高経営責任者

経歴:Yahoo! 幹部、Silver Lake Partnersシニアアドバイザー。
2024年、Ripple Labs に「証券法に違反していない」という判決が下され、法廷で部分的な勝利を収めた。ガーリングハウスはフェアシェイクの主要寄付者。CBS番組「60 Minutes」で、「フェアシェイクはSECとのクリプト戦争に対する反応だ」と語った「我々は別に規制緩和を求めているのではない。むしろちゃんとした規制を求めているのだ」

マーク・アンドリーセン Marc Andreessen (53)

ベン・ホロウィッツ Ben Horowitz(58)

Andreessen Horowitz共同創設者

経歴;アンドリーセンは NETSCAPE の共同創設者。ホロウィッツは NETSCAPE で働いていた。OPSWARE を共同創設。
これまで熱心な民主党支持者だったマーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツが7月にトランプを支持すると表明したことは、シリコンバレーに衝撃を与えた。共和党への両氏の寄付金は合わせて500万ドルに上った。フェアシェイクにもそれぞれ1250万ドルを寄付した。
ビリオネアの2人は、米国最大のクリプト企業およびテクノロジーベンチャーキャピタルファンドAndreessen Horowitzを経営している。アンドリーセンはバイデンの政策を厳しく批判しており、自身のポッドキャスト番組で「バイデン政権は抑圧」だと語った。

クリス・ジャンカルロ Chris Giancarlo (65)

デジタル商工会議所の諮問委員会メンバー

経歴:商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長。法律事務の上級顧問ほか。弁護士。
「クリプト父さん」の異名を持ち、同名の自伝も出版したジャンカルロは、SECの規制不備が業界の成長を妨げていると批判し、CFTCにデジタル資産市場の監督権を与えるべきだと主張、既存の証券規則をクリプトにそのまま適用するSECの方針を否定してきた。CFTC委員長時代にはビットコイン先物の規制を主導。現在はブロックチェーン推進団体であるデジタル商工会議所の諮問委員会メンバー。ステーブルコイン企業パクソスの取締役でもある。


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