フィンランド旅行記#5エストニアの森で泣く。Arvo Pärt Centreに行ってきた。
彼がイギリスに帰国した水曜日の午後、私は次の日に向かうエストニアはタリンへ行くための準備を始めます。エストニアに行くことは決めていたし、目的地のArvo Pärt Centreへ行くことも決めていたにも関わらず、それ以上のリサーチは全くしていない状況だったからです。
いつもなら「まあ、なんとかなるな」と恐らくサウナにでも行っていたかもしれませんが、直感的に「今回は計画しないとやばい気がする」と思ったし、予想通り結構大変でした。
今回はいつもと違って、誰かのためになるものを書きます。でも誰のためになるんだろう…?Arvo Pärt Centreにわざわざ建築を見に行く人。多分なかなかいないと思います。
エストニアのタリンに行って、タリンの観光は全くせず、Arvo Pärt Centreに行く未来の物好きにこの記録は捧げます。実際に行くまでが長いので、読むのが面倒な人は目次で「行き方簡単まとめ」までとばしてください。私がした失敗など、諸々知りたい方はこのままお読みください。
何も参考にならない
リサーチを始めて分かったことの一つに、Arvo Pärt Centreに行ってきた!みたいな記事がないことに気が付きます。英語でも日本語でもタリン観光について書かれていてもArvo Pärt Centreに行った人はいない。トリップアドバイザーはあまり参考にならない。今まで私がやってきたことは大体他の方がやってきてインターネットの世界に残してくださっていますが、Arvo Pärt Centreに行った人は見当たらない。
参考までにタリンの街からArvo Pärt Centreまでの道のりを。
バスで1時間ほど、そんなに遠くありません。
そんなに遠くない!なんだかできる気がしてきた!
と思ったら、
私バスの乗り方わからない。やっぱりできない気がしてきた。バスの乗り方も、言葉もわからないや。やっぱりできない気がしてきたの行き来。
諦めて寝ることにしました。
そもそもなんでArvo Pärt Centreに行きたいのか。
数年前にDezeenかなんかで藤本壮介さんがハンガリー・ブタペストに建築予定の音楽センターについての記事を読み、何て素晴らしい、素敵な場所!と思ったことがことの始まりです。
以下リンクはDezeen(英語)とarchitecturephoto(日本語)による藤本さんの建築に関して。
https://www.dezeen.com/2022/01/23/house-of-music-budapest-hungary-sou-fujimoto/
https://architecturephoto.net/135144/
そもそも私の芸術愛の始まりは音楽・クラシックにあり、こんな素敵な建築がこんな素敵なロケーションでしかも音楽センター!とワクワクしたことを覚えています。建築、ロケーション、人々がどのように相互に作用するのかみてみたい!と心が踊りました。
それから月日が経ったある時、建築を学んだ彼と2人で藤本さんのハンガリー・ブタペストの建築の話になった時に、彼からArvo Pärt Centreが話にあがりました。似たような建築について、卒論で書いたんだよね。訪ねることはできなかったんだけど機会があれば行ってみたいな。と
そんなわけで、今回、日帰りエストニア旅行の目的地になったのも上記の理由からでしたが、彼がフィンランドに滞在する日程的に彼がエストニアに行くことは厳しいことが後から分かり、
結果的に1人で行くことになりました!
覚悟を決めて船に乗る。
フィンランドからタリンまでは船で2時間ととても簡単に行けますし、これに関しては先輩方が記事にまとめてくださっているので問題ないかと思います。
(割愛)
船内、かなり豪華ですので楽しみましょう。私は不安でいっぱいだったので片桐さんのエッセイをまた読んでケラケラ笑ってました。
※ここからはArvo Pärt Centreに行きたい方向けのアドバイスです。
私は、
のチケットを何にも考えずに取りましたが、Arvo Pärt Centre まで行って帰ってくるにはこれがおすすめです。帰りのチケットが私が取ったものより遅い分には問題ありませんが、早いと恐らく船に乗り遅れるかと思われます。
着いたエストニア、わからないから観光案内所へ
前日リサーチしたにも関わらず、あれもわからない、これもわからない、で終わってしまったので「これは聞くしかない!」と諦め、到着早々テキパキと旧市街地の観光案内所に行きました。
旧市街地、本当に可愛らしい、素敵な街なのに、余裕が全くない私は、一直線に観光案内所。着いたらすぐにお兄さんを捕まえ、「Arvo Pärt Centreに行くためだけにエストニアに来ましたが、どうやっていけばいいのかさっぱりです!」と元気よく伝えました。
さすが、観光案内所のお兄さん「Arvo Pärt Centreは最近人気のデスティネーション、127番か128番のバスに乗ってLaulasmaaで降りたら着くよ!€2.8ね、運転手に渡せばいいよ」
と全部地図に書いてくれ、大変助かりました。
が、ここで私は次のバスがいつくるかを聞き忘れます。
聞き忘れたのでGoogleで調べると11:52amにバスが来るとか来ないとか。現時刻10am。
ここでタリンの観光を少しでもすればよかったのですが、なんせ頭の中はArvo Pärt Centreでいっぱい。余裕がないのでカフェでお茶すること。カフェでお茶するにも居ても立っても居られなかった私は結局バス停で待つことにしたのでした。
バスが来た、「お兄さん!このバスLaulasmaaに行きますか?」
見出しの質問に対してお兄さんから「いいえ、行かないよ!これはエストニアの田舎に行く!」と返事が返ってきた時、「じゃあ、違うんだ、乗らない」の思考回路に何故か至らず、「えーい!128番って上に表示されてるし、エストニアの田舎に行くなら間違いない!」とバスに飛び乗り、運転手さんに握りしめていた€2.8を渡しました。
運転手さん、ニッコリ笑って何故か80セント私に返してくれながら”Yes,Laulasmaa”の一言。
「ありがたい。これでなんとかArvo Pärt Centreに行けそうだ」と少しホッとしました。ありがとう運転手さん。
Laulasmaaに留まったのかわからないまま、森の中を突き進むバス。
結果的にいうと、Googleマップの青い点(GPS)をずーーーーっと睨みつけていたにも関わらず、私はバス停を逃しました。
え?Laulasmaa。
これは田舎のバス・電車あるあるですが、本数も無ければ各駅間が遠い。私が乗っていたバスも例外ではなく、森の中をグングン突き進み、
「もうここで!おろしてくれ!」と叫ぼうか迷っているうちに次のバス停に到着。そこでおりました。Arvo Pärt Centreから離れた青い点(GPS)に絶望し、ちょちょぎれる涙。
徒歩40分で着けるから大丈夫…と炎天下の中トボトボ歩く私でしたが、周りを見渡すとめちゃくちゃ綺麗な森と整備された歩道!「ここまで来たら!行くしかない!」と気合を入れ直し、歩き出した私です。
※帽子とお水は必ず持ち歩きましょう。日差しが強くて、お水もなかったのでしんどさ倍増でした。
やっと着いたArvo Pärt Centre。
炎天下にヘロヘロになってやっと着いたArvo Pärt Centreでしたが、受付でいきなり帰りのバスの時刻表をみて動悸がします。到着時刻2pm、4:02pmのバスに乗らないと、ヘルシンキに帰れない。やっと着いたと思ったら今度は帰ることの心配。
「でもここまで来たんだ!全て吸収するしかない!」ともう何度目かもわからない気合を入れます。(エネルギーの無駄遣い)
受付で€6と身分証を引き換えにオーディオガイドを借りて、やっと私のArvo Pärt Centre散策が始まります。
本当に空気が澄んだ地にあるとても美しい建築。
マドリードとベルリンに拠点を置く建築設計事務所 Nieto Sobejano Arquitectosが手がけ、その名の通りエストニア出身の作曲家Arvo Pärt のアーカイブとして機能しつつ、音楽ホール、カフェなども兼ね揃えた施設です。
私が最も感じたかった森・建築・人の相互作用ですが、揺れるたびに音楽を奏でる木々と森に溶け込む建築は見事でした。ここで行われるコンサートに集う人はこの地に惚れ惚れするに違いありません。写真を撮りながら、オーディオガイドから流れるArvo Pärtの作品を楽しむ時間は贅沢そのものでした。
Arvo Pärt Centre、行ってよかった。
色々ありましたし、エネルギーを無駄に使い込んだ私でしたが、無事帰りのバスも来て、ヘルシンキに帰る船にも乗ることができました。訪ねてからは、建築と自然環境の共存について、環境問題などの規模感ではなく、役割と機能面から考えることになったり、人と建築のつながり、Arvo Pärtにとってこの建築はどのようなものなのか、を考えたり。結果的に無事に行けてよかったと思います。
建築家、建築学生、音楽家、音楽学生の皆様におすすめできる場所です。
行き方簡単まとめ
とても簡単に行くことができます(汗)
日帰りでも行けますが、タリンからセンターまで1時間と少し、バスの本数も少ないので計画的に行くことをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。