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『短歌往来』2022年3月号

①特集「全国の冬の植物を詠む」ひとたびも樹氷の素顔は思はざりき大白檜曽(おおしらびそ)の名も知らずして 冨樫榮太郎〈蔵王の樹氷の本体がトドマツ科の大白檜曽である。「樹氷」という有名な呼称によりそれを纏った大白檜曽の名が霞んで終(しま)ったようである。〉蔵王の樹氷を詠った一連。蔵王の樹氷は大白檜曽という木が氷雪を纏った姿らしい。英語名はsnow monster。思わず検索して写真を見た。かなり特徴ある姿。大白檜曽という木の名前も初耳だ。夏山へもとの針葉樹を見に行こうという歌で一連が終わっていて、なるほどと思った。

地図の眼をもちて入りゆくこの街の緑の肺と呼ばるる森へ 工藤貴響 「ヴァンセンヌの森」の一連より。パリ郊外に広がる森での散策。「地図の眼」が上手いと思った。「緑の肺」も固有名詞に近いのだろうが、一首中で効いている。イラスト、写真と合わせて美しい風景が描かれる。

2022.4.10.Twitterより編集再掲