救済のない世界だからせめて祈る(月一フォトエッセイ)
海の煌めきは妖精の轍。その光をめがけて生い茂る緑の隙間を駆け抜ける。視界が開けて、白い砂浜を踏む。すると光はたちまち遠のいていく。掴めない煌めきは波と踊るようにあちらへ、こちらへ、またあちらへ、不規則に飛び回る。
今年は、雨を降らせる龍にあまり元気がなかったのだろうか。いつのまにか終わりを告げた雨の季節。地上の森羅万象を焼き払うがごとく照りつける太陽。それでも命は輝いている。強い光を浴びながら、同時に色濃い影を落としながら。
潮の香りをめいっぱい吸い込む。「海に還りたい」と小さな声でこぼした、今はもういないあなたの背中を思い返した。火に焼かれ小さくなった体は、海ではなく地下の壺の中。その壺をこすったら、魔法のランプみたいにあなたが出てこないかな。
予期せず止まる電車。タイムラインに流れる訃報。画面を通してあふれ出す言葉の剣、槍、斧、弓矢。こぼれ落ちる痛み。やり切れず、自分の意識を現実から引き離すためにここへ来た。
いつから君は、消えていった命を前に「祈ること」をやめてしまったの?
緑と青の狭間に自分ひとり。二度と同じ旋律を奏でることはない、風の声と波の音色。海辺で妖精たちと追いかけっこをしたら、大きな葉っぱの下でひと休み。空と海の境界線が溶け合う。自分の輪郭も曖昧になる。ふと鮮やかな花が揺れたら、私はやっと息を吹き返す。
この世界に救済の女神はいない。ただ連綿と続く「今」が存在するのみ。だからせめて祈る。あちら側にはきっと、何にも縛られぬ安息があってほしいと。
*
折本配布のお知らせ
みんな無事に生きてますか?意味わからんぐらい暑すぎて本当に意味がわからない。最近は地球と職場の気温差が激しすぎてたびたび耳の調子を悪くしています。ご自愛強めに日々を過ごしたいところ。
さて、ただいまコンビニのマルチコピー機の「ネットワークプリント」を使い、上記の文章と写真から抜粋して作った折本を配布しております。カバンの中や手帳のあいだに潜ませて、心を鎮めたいときや一息入れたいときなどにパッと開いてみてはいかがでしょうか。
折本とは?
一枚の紙をカンタンに折りたたんで作る本のこと。今回はA4サイズの紙の表面だけに全ページを印刷し、皆さんの手でちょっと切り折りしていただくだけで小さな冊子が完成します。
ネットワークプリントの利用方法
お近くのコンビニにあるマルチコピー機をご利用ください。A4サイズのカラー片面印刷で1枚60円(こちらは印刷代で、私の収益にはなりません)。フチ・余白・ちょっと小さめ設定は「なし」推奨です。
配布期限が一週間程度となっているので、ご希望の方はお早めに!
◇セブンイレブン
予約番号:10221116
(2023/08/07 23:59まで)
利用法はこちら↓
◇ローソン・ファミリーマート
ユーザー番号:HLWB99BJW5
(2023/08/08 18時頃まで)
利用法はこちら↓
折り方
一か所だけカッターで切れ込みをいれる必要アリです。
*
月報
数年ぶりに夏祭りに行った。アルバイト帰りに行ったので、露店の営業終了時間ギリギリだった。夏祭りの開催自体も数年ぶり。すごい人出。だが露店の数は以前に比べればかなり少なく、どこもかしこも大行列。私は疲れすぎて不機嫌なギャル二人が切り盛りする大盛り焼きそばだけ買ってすぐ帰った。夏祭りの空気感が好きだから、ほんの少しだけでもそれを肌で体感できてよかった。
浴衣で花火大会デートしたい(一年ぶり五億回目)。もう何年もこれ言ってる。一体あと何年この願いごとを唱え続けるつもりなのか?もはや呪詛に近くなってきてはいまいか?だが今夏も叶う気配ゼロ。叶える気もゼロ。むしろ労働に身を費やすつもり満々という始末。それも人生と開き直るばかり。
なんならすでに楽天でブーツを検索している。ユニクロで発売されたばかりのウール素材バケットハットも早く試着しに行きたい。帽子がなかなか似合わない私に、今年ユニクロで買った春夏用のバケットハットが思いのほかしっくり来たから。それにしてもアパレルの世界は季節のめぐりが早すぎないか?さぁ夏本番!って時期にもこもこアウターが並び出す。まぁそれを見るのも好きなんだけど。
今月の一曲
打首獄門同好会/なつのうた
これ聴かないと夏始まらない
良いんですか?ではありがたく頂戴いたします。