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わ~好きな小説の場面の中に、知り合いが居た!

 社会派小説のベストセラー山崎豊子の「沈まぬ太陽」・・・私の好きな小説です。
 日本航空の実際の人物の会社との戦いを緻密な取材を重ね、ほぼノンフィクションような形で書かれた小説です。映画化もされたとても有名な作品です。

 さて、この小説は、会社の嫌がらせで主人公の恩地元がアフリカに飛ばされる「アフリカ篇」からその物語は始まります。
 その中のエピソードのひとつにこんなものがあります。主人公の恩地が何とかこのアフリカの地で仕事をしなければならないと思い、現地で仕事をしている日本人を集め日本映画「男はつらいよ」上映する場面があります。集まった日本人はそれぞれ故郷を思い出しとても喜んだというものです。

 私には二十年来のお付き合いのある陶芸家の村田肇一さんという方がいらっしゃいます。
 村田さんは若い頃、アフリカのケニア共和国で現地の人に陶芸指導をしたという異色の経歴をもった作家さんです。
 私より大分年上の先輩なのですが、会えばいつも楽しい酒を酌み交わす間柄です。

 ある日二人で酒を飲んでいる席で、好きな映画の話になり村田さんがいつもの大阪弁でこんなことを仰いました。

「映画としてはあんまり、『男はつらいよ』とか好きやないけど・・・アフリカで寅さんを観たときは感動したわ」
「アフリカで寅さん観たんですか?」
「ケニアに居たときな、商社?航空会社?の人か何かが・・・現地にいた日本人を集めて寅さんを観せてくれはったわ・・・娯楽のない場所やったから、いや嬉しかったわ」

私はあれ?どこかで聞いたような?・・・グラス片手に少し考えていたら・・・思い出しました。あ!沈まぬ太陽のアフリカ篇だ!
「ケニアに居たのはいつですか?」と村田さんにたずねると
「1975年から77年やけど・・・」と教えてくれました。

 早速、その夜書棚から沈まぬ太陽を引っ張り出し、調べてみたところ主人公の恩地元がケニアに赴任していた時と、村田肇一さんがケニアで陶芸指導していた時期が全く重なっていました。

「わ~好きな小説の場面の中に、知り合いが居た!」と思うとこの小説がより臨場感のあるものに感じました。私にとってちょっとワクワクした出来事でした。

それ以来、書棚には「沈まぬ太陽」と共に、陶芸家・村田肇一さんの作品「アフリカの動物」を飾っています・・・

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