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第8回 知財若手の会 ~若手で学ぶ「発明ヒアリング」~を終えて(1/20 20:30~22:30)

※本記事はLeXi/Ventブログの再掲です。
作成者:あや

はじめに

こんにちは。知財若手の会の運営です。
1月20日(土)に知財若手の会の第8回のイベント(若手で学ぶ「発明ヒアリング」)を開催しました。イベントの振り返りと今後の活動についてお話しします。
知財若手の会は「若手」で語る知財をコンセプトとして活動しており、イベントを中心に若手同士で語る・発信できる場を提供することが目的です。詳しくは以下の記事をご覧ください。


第8回 知財若手の会について

今回は知財若手の会のプラチナスポンサーTechnoProducer株式会社様との合同イベントです。代表取締役CEOで発明塾塾長の楠浦崇央さんとシニアリサーチャーの畑田康司さんをお招きし、オンライン(チザワカスペース)での開催となりました。

前半は「「頼られる知財部員」になるための発明発掘ヒアリングのコツ ~発明のポテンシャルを引き出し強い特許を取るスキルの身につけ方~」というテーマでご講演いただいた後に質問・ディスカッションの時間を設け、後半は交流会を行いました。


プログラム紹介

  • 開会挨拶(10分)

  • 楠浦さん、畑田さんご登壇(30分)
    登壇者ご紹介
    発明塾立ち上げの経緯
    発明ヒアリングの具体的なテクニック

  • 質問・ディスカッション(20分)

  • 交流会(55分)

  • 閉会挨拶(5分)


「頼られる知財部員」になるための発明発掘ヒアリングのコツ

登壇者ご紹介

今回のイベントにお越しいただいた楠浦さんと畑田さんについて、楠浦さんからそれぞれのご経歴をお話しいただきました。

楠浦さんはメーカーでの設計開発や新規事業開発を担当され、その後ベンチャー企業のCTOとして研究シーズの事業化を推進されたのちにTechnoProducer株式会社や発明塾を設立されました。
ご自身のご経験を基に、「人が持っていない武器」を持つことが重要であること、特許情報のように一般的ではない情報を読み、特許についての知識をつけることは他の人と差がつくポイントであるというお話をされていたのが非常に印象的でした。

畑田さんは在学中に学生向け発明塾に参加され、メーカーでのエンジニアとしてのご経験やスタートアップ企業での新規事業立ち上げを経て、TechnoProducer株式会社のシニアリサーチャーに就任されました。
テーマ別 深掘りコラム」や「イノベーション四季報」の執筆をご担当されているほか、個人発明家としても活動されています。


発明塾立ち上げの経緯

TechnoProducer様は「発明塾」を提供されている企業様です。
「発明塾」は特許情報を使った技術マーケティングによって「新規事業を量産する知財戦略」を支援するサービスで、2010年に学生有志の参加により発足されました。

大学生でも世界で戦える発明を生み出すことができる情報分析手法や発明のアイデアの育成方法など、学生向け発明塾で得たノウハウを基に、「誰でも成果が出せる」方法論の確立と教材化が行われ、現在の「企業内発明塾」や「e発明塾」が誕生したとのことです。
詳しくはTechnoProducer様サイト内の楠浦さんの紹介ページにも記載されておりますので、是非ご覧ください。


発明ヒアリングの具体的なテクニック

今回のイベントのテーマでもある「発明ヒアリング」のテクニックについて、学生の漠然としたありきたりなアイデアを良い発明に育てた事例から、以下をポイントにご説明いただきました。

  • 「課題-解決ロジックツリー」による「課題への上位概念化」
    発明のアイデアを技術要素ごとに分解し、それぞれが解決する課題を整理することで、発明者の背景にある思考回路を言語化して把握する

  • トレードオフによる「正しい問い」の設定
    「課題-解決ロジックツリー」で整理した発明が内包する課題のトレードオフにより発明の本質を把握することで、トレードオフを解決できる「発明の理想状態」という「正しい問い」に到達できる

  • アイデアや思いつきをツールとしてトレードオフに切り込み、「発明の理想状態」を考えることが発明のスタート

また、ご説明いただいたテクニックを応用し、「頼られる知財部員」に近付くための社内での発明ヒアリングのコツについても、いくつか若手に向けてご説明いただきました。

  • 「課題-解決ロジックツリー」を用いてヒアリングした発明の構成要素を分解し、それぞれが何の課題を解決するかを整理する

  • 「Why/Why So」といった問いかけで発明の背景にある思考回路を明確にし、言語化する作業を手伝う

  • 発明の比較対象となる先行技術を調査することで、トレードオフを明らかにする材料を提供し、「発明の理想状態」に到達するまでのプロセスを支援する
    (「発明を育てる」ための調査を手伝う)

10年後や20年後の未来を想像し、ちょっとした思いつきや改善・改良をどのようにして良い権利にできるかは、知財の知識や発明を育てる知識の有無によって大きく異なり、知財部員に求められる重要なスキルになるとのことでした。
テーマのサブタイトルにも「発明のポテンシャルを引き出し強い特許を取るスキルの身に付け方」とありますが、「発明を育てる」という考え方は、強い特許を取るためにまさに必要不可欠かと思います。

発明ヒアリングのテクニックに関するご講演ではありましたが、課題の分解や上位概念化、相手のバックグラウンドを踏まえたコミュニケーションの取り方について、知財部員のみならず、どのような立場の方にとっても非常に役立つものだったのではないでしょうか。


なお、「課題-解決ロジックツリー」についてはTechnoProducer様サイト内の「テーマ別 深掘りコラム」、「特許になるアイデアの出し方を知り、特許アイデアを量産する」でも詳しく紹介されていますのでおすすめです。


質問・ディスカッション

楠浦さんからご講演いただいた後、ご参加いただいた若手から楠浦さんへ質問をさせていただきました。その中から一部を抜粋して掲載させていただきます。

Q.研究者とのやり取りで気を付けているポイントは?
A.良い発明を出す人は、考え方やアイデアが整理されていないことがあるため、要素を分解して課題を探すようにしている。
また、出てきた発明に対して揚げ足を取ってしまうと、本来育てるべき議論ができなくなってしまうため、相手の得意なことや着眼点といった個性を活かし、アウトプットに繋げることを考えている。

Q.知財部員単独で将来の仮説を立てて特許化を行う際に、「取り上げるテーマ」の選び方のコツは?
A.特許や論文の出具合によってトレンドを探るだけでなく、海外ファンドの動向などによっても今後の世界的な重点施策を見極めることができるため、知財情報だけでなく知財情報以外を含めた分析を行うことが重要。

Q.将来実現したい社会のため、特定の分野を特許で先に押さえておくという考え方はどうか?
A.そういったことを考えている人がいるため、先読みの特許が出されている。実際には特許に書かれた預言を介して対話が行われ、未来の市場が創造されていく。
特許はコミュニケーションツール。

Q.発明をビジネスとして成立させるための課題(キャッシュポイントやビジネスモデルのハードル)について、どのタイミングで研究者に提示するか?
A.研究者は研究をやりたいがために研究者になっていることを考慮し、ある程度技術的な節目を付けてからビジネスの話をする方がスムーズである。
本人たちの思考の流れを尊重しつつも、相手の力を使いながら自分のペースに引き込み、上手くコラボレーションしていくことが重要。

質問タイムでは次から次へとチャットやマイクオンでの質問があり、プログラムとして予定していた時間をオーバーするほどで、若手の熱量を感じました。


交流会

後半は、3グループに分かれての交流会を行いました。楠浦さんと畑田さんにもそれぞれ各グループを回っていただき、若手との交流会の時間をいただきました。

交流会の前の質問タイムでも質問が盛んに行われていましたが、交流会でもお二人への質問が絶えず、知財実務に関する若手の疑問に丁寧に答えていただきました。
どのグループでも話が盛り上がっていたようで、1時間弱の時間を設けていた交流会もあっという間に終了しました。


おわりに

今回のイベントもたくさんの方にご参加いただきました!
「頼られる知財部員になるための発明発掘ヒアリングのコツ」というテーマでのイベントでしたが、企業の知財部員だけでなく、特許事務所勤務の方や研究開発職の方、学生の方など幅広い方にご参加いただきありがとうございました。

楠浦さんと畑田さんも、お忙しいところ知財若手の会との合同イベントのお時間をいただきありがとうございました。
今回のテーマである発明ヒアリングについては、「発明を育てる」プロセスについて、具体例を基に順を追って詳細かつ分かりやすくご説明いただき、すぐに実践しやすい有用なノウハウが得られました。
質問タイムでは、若手からの質問に対する回答を要約したものをリアルタイムでチャットに投稿いただくなど大変きめ細かな対応をしていただき、今回のイベントに参加した若手の理解度もぐっと向上したのではないかと思います。
また是非ご講演やお話させていただく機会を設けさせていただければ幸いです。


「チザワカ×TechnoProducer」のイベントを終えて

今回の合同イベントを終えて、TechnoProducer様から一言をいただきました。
現在、TechnoProducer株式会社として「知財若手の会」のプラチナスポンサーをさせていただいております。
そのご縁で、知財業界の若手の方からいろいろお話をお伺いして気づいたことは、やはり知財業界は良い意味で大きく変化している、ということです。

新卒で知財部員としてキャリアを積んでいくことがアタリマエになっている中で、キャリア形成やスキルアップをどうしていくか、若手の方が真剣に考え、また悩んでいらっしゃることがよくわかりました。弊社は「発明塾」の各種サービスを通じて、企業知財部の方と一緒に、新たな発明や事業を探し、育て、産み出す仕事をしております。

今後も若手知財人材の方と一緒に、「勝てる事業」「勝てる製品・サービス」「勝てる知財」を産み出しつつ、関係者全員が実績を出してキャリアアップできるようにしていきたい、と改めて強く思いました。

今回お伺いしたお話をもとに、全員がもっと幸せになれるサービスとして、「発明塾」の完成度を高めていきます。非常に良い機会を頂き、ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。

TechnoProducer株式会社 CEO/発明塾塾長 楠浦 崇央 拝


TechnoProducer様の書籍・メールマガジンのご紹介

イベントの中でもご紹介させていただきましたが、TechnoProducer様の書籍とメールマガジンについてご案内させていただきます。
他にも、X(Twitter)でも情報発信されておりますので、是非ご覧ください!

無料メールマガジン「e発明塾通信」
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や注目の特許情報を週2~3回配信している無料のメールマガジンです。
2008年にスタートし、新規事業開発の担当者や開発部門の技術者、知財部員を中心に5,500名以上に購読されています。非常に参考になり、読み応えのある内容になっておりますので是非お試しください。

新規事業を量産する知財戦略 ~未来を預言するアイデアで市場を独占しよう!~
今回のイベントでご登壇いただいた楠浦さんの著書になります。
オープンイノベーションの時代に事業の強みをつくる先読みの特許取得など実践的な知財戦略の考え方が発明創出のプロセスとともに具体的に解説されており、技術者、知財部員、企画部など、新規事業に関わるすべての方に読んでいただきたい1冊です。

イノベーション四季報™️
企業の最新動向や技術トレンドをIR情報や技術情報、特許や論文から分析し、今押さえておくべき本質的な情報が厳選して掲載された新メディアです。イノベーション四季報を読むことで「技術情報とビジネス情報がどのように繋がるか」が理解できるようになっています。
業界の情報をキャッチアップしたい方や、新規事業創出や新製品のアイデアを探している方、イノベーション投資を行いたい方など、多くの方におすすめです。


第9回 知財若手の会について

次回の知財若手の会は4月に東京で開催するオフラインイベント(知財情報分析の実務ワークショップ)を企画しています。他にも、オンラインでの若手LT会も実施予定です。
詳細については別途connpassやX(Twitter)で告知いたしますので、ご期待ください!

以上、今後とも知財若手の会をよろしくお願いいたします。

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