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企業知財部門の役割2023

これは、『知財系 もっと Advent Calendar 2023』の参加記事です。
知財系 Advent Calendar 2023」も合わせてどうぞ。

はじめに

私は、中小の電子機器メーカーで知的部門に所属しています。
B to B、技術が武器の会社ですので、主に特許権を活用しています。

知財部門の役割は『事業貢献』です。
とても当たり前だけど、これが全て。
決して特別なものではなく、全ての部門に共通するシンプルなもの。
自分の考えを整理するため、知財部門の役割をまとめてみました。

事業内容・事業規模によって、活用する知的財産権は異なるかもしれません。その点、ご了承ください。あくまでも私が所属している企業での考えです。

1.事業貢献とは

事業貢献とは何でしょうか。これはとても簡単です。
「社会貢献しながら利益を最大にする」です。
利益の最大とは何でしょうか。これも簡単です。
売上を最大にする』+『経費を最小にする』です。

2.売上最大

「特許権で売上を最大にする」とはどういうことでしょうか。

顧客の抱えている課題に対して自社商品を提案し、それを顧客が購入すれば売上です。
しかし競合も商品を提案してくるはずです。

その際、同じ土俵に上げない、上がったとしても自社商品が優位性を保てるようにするのが参入障壁です。特許権は参入障壁の一つとして機能します。

事業に必要な權利範囲で特許権を取得できれば、競合は自社商品の類似品を提案し辛くなり、その結果、売上につながる可能性を高めることが出来ます。

売りたい商品・売れる商品は何なのか、市場にどのような競合が存在するのか、どのような類似品を投入してくるのか、どのような権利化が見込めるか、競合が権利回避するのはどのくらい困難を伴うのか、等を総合考慮して、初めて事業に必要な特許権が取得できます。
つまり事業部門、開発部門、知財部門が協働し、経営層の意思決定を得ることで、特許権による参入障壁が構築できるのです。

そのため知財部門は、事業部門、開発部門から提供される情報を踏まえ、先行技術調査・進歩性判断を行い、権利化見込みを検討し、経営層を含めて、全社的に適切な権利範囲を考え、専門家と共に特許出願する能力が極めて重要です。

そして特許出願をしたならば、事業が必要とする権利範囲を出来る限り維持して、特許権を取得できるよう専門家と共に、審査官等と対等に戦う能力が必要となります。

これらの能力がなければ単なる特許出願、単なる権利化で終わってしまい、事業に必要な特許権、つまり「競合を抑え、顧客に購入してもらう可能性を高める特許権」は取得できません。

3.経費最小

知財部門が業務を行うと様々な経費が発生します。利益を得るには、売上を増やして、経費を減らすしかありません。商売の基本です。
『経費の最小』が必要です。

知財部門の経費は、売上原価へ計上されたり、販管費へ計上されたり、両方へ計上されたり、企業毎に計上先の違いはあると思いますが、以下のようなものが想定されるのではないでしょうか。

  1. 知財部門の人件費

  2. 国内外弁理士/弁護士等、専門家の費用

  3. ツール利用料

  4. 特許庁等への手続費用

  5. 出張等の費用

  6. 書籍やセミナーに関する費用

経費最小のためには、「常に改善」が必要です。
各個人/部門の能力向上や業務改善等で、より効率的に、ミスなく、業務を行い、ムダな経費削減を追求することが重要でしょう。

そして何よりも、その経費が本当に事業貢献に必要なのか、効果はあるのか、を考え、最小化していく必要があります。
「事業に必要な特許権はどんな権利範囲なのか」を理解していないと、それは多くの場合、ムダな経費となるでしょう。

4.企業理念

「どんな手段を用いてでも良いから、とにかく利益の最大を目指せ!」というわけではありません。
法令順守は当然ですが、「企業理念」に沿った事業活動により社会貢献の過程で達成しなければなりません。

全員が企業理念に沿った事業活動を行うことは、顧客・取引先・株主・従業員・地域社会等、全ステークホルダーに対して、企業の考え方/姿勢、つまり「こんな良い社会を目指すんだ!」という方向性が明確になります。実現を目指す社会が支持されれば、企業価値の向上にもつながります。
これは非常に重要な事業貢献です。

従って知財部門は当然に、企業理念に沿った活動が求められます。

まとめ

知財部門は、事業に必要な特許権の取得を目指して出願をし、審査官等と対等に戦って適切に権利化できて、初めて売上最大が目指せるのです。
また権利化に関する経費は最小にする必要があります。
そして利益の最大は社会貢献の過程で実現しなければなりません。

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