電気工事士試験において複線図を手早く描き起こす方法+おまけ
筆記試験合格おめでとうございます。
2023年6月12日に、2023年度上期の第2種電気工事士試験の筆記試験結果が公表されました。
筆記合格者の方、おめでとうございます。次は技能試験ですね。早い人は既に練習を開始されていることでしょう。
第2種電気工事士の技能試験において、複線図を描けるようになっておくとミスが格段に減ります。悪いことはいわないので、最初のうちは描きましょう。
複線図の描き起こし方 5ステップ
複線図の描き起こしはパターン化できます。
私がおすすめするのは以下の5ステップです。
慣れたら1分くらいで描けます。サンプルとして2023年の候補問題7番を使います。なぜ7番か。
三路スイッチがあるからです。一番好きな器具です。
1.器具を配置、施工範囲外を線でくぎる
2.三路スイッチ・四路スイッチの同じ番号を繋ぐ
※見にくくなるので描いてませんが、ボックス内で接続するところは●で印を付けましょう。
3.負荷の接地側に白線を入れる
※ここで忘れてはいけないのは同時・常時点灯のパイロットランプです。見落しがちなので注意。
4.電源に近いスイッチ(とスイッチを使用しない負荷)の非接地側に黒線を入れる
※この段階でほぼ色が確定します。スイッチ周りは線色問わずとされることが多いのですが、色を決めておくとチェックのときに楽です。
※ア・シ・クでも、R・W・Bでも分かればOKです。アとク、RとBは似ているから気を付けたいところ。
5.スイッチから負荷に線を入れる
技能試験の候補問題はこの手順でミスなく複線図に描き起こせます。パズルみたいに解けるようになります。
複線図の練習って無意味?
技能試験の候補問題が公表されるようになり、試験時間も長くなったことから、「複線図は描かなくても大丈夫!」という人が増えました。
複線図は苦手意識を持つひとが多いので、こういう言葉は救いに聞こえるでしょう。
たしかに試験の評価対象は出来た物であって複線図ではないですし、現場作業中に毎回複線図を描き起こすことはないでしょう。
しかし、複線図を「描けるけど時間がもったいないから描かない」のと「描けないから描かない」のはまったく意味が違います。
電気工事士技能試験の概要と注意すべきポイントは読みましたか?電気技術者試験センターは技能試験で
① 回路を的確に構成する能力
⇒器具を単線図通りに配置していること、接続の誤りがないこと
② 配線図や施工条件を理解し遵守する能力
⇒設計図などで示される意図や施工条件を読み取り、設備の使用目的に合った回路を作ること
③ 接続等の作業を的確に行う能力
⇒いついかなる環境で工事しても、利用者が安全に利用できるような仕上がりであること
の3つを評価するとしています。
複線図は①・②の能力の補助です。正直、複線図を描かなくたって、①・②の能力が高ければ合格できます。
でも、複線図が描けないひとは①・②の能力は低いです。
だって、自分が結線する内容をそのまま線で描くだけですよ。
上でも書きましたが、複線図はパターンを習得したら1分かそこらで描けます。この1分すら惜しいというギリギリのかたは、ちょっとしたことでタイムオーバーになります。そういうかたは③の能力も怪しいです。
理想は複線図ありで30分以内です。
ミスを減らして施工することは大事です。複線図を起こせば結線の確認が容易です。時間は手技の速さ・正確さ、無駄な手順の排除で縮めましょう。
電気工事士は比較的簡単な試験で取得できるため、甘く見られるのかもしれません。
しかし、電気工事士の有資格者でなければ自分の家ですら電気工事をすることができないのは、質の低い工事は火災や感電につながって危ないからです。
正直なはなし、複線図すら描けないかたは欠陥なく技能試験を終えられたとしても合格させるべきではないとも思います。
たまたま13問の候補を暗記して解答できたってひとに、日本全国どこでも一般電気工作物の工事が認められるってのは受験者としても不安じゃないですか?
夏のエアコン工事にきてもらった電気工事屋さんが、「いやー、電気工事士試験の候補問題の形なら結線できるけど、それ以外は回路の想像もつかないんだわ。親方に結線図描いてもらわんとねー」とか怖いでしょう?
これから電気工事士の技能試験を受けるかたは、複線図の描き方をぜひマスターしてください。
描けるようになったら、描かなくてもわかるようになってきますから。だから複線図の練習は無意味ではありません。
おまけ
電気工事士技能試験を受験するかたにおすすめするのは濡れタオルです。
手袋の使用が認められているので、着用されるかたも多いでしょう。
しかし、とくに上期試験は暑い時期、エアコンがきいていても汗をかきやすいです。手汗はケーブルがすべります。汗に含まれる塩分とか皮脂とかでぬるぬるするんですよね。
手がすべったらケガしやすいです。濡れタオルでこまめに手汗を拭うといいでしょう。
私は20年以上前に第1種電気工事士、第2種電気工事士に合格しました。
実は2種は技能試験で3回も落ちているのですが、都合4度の第2種・2度の第1種の技能試験で、いずれにおいてもほぼ例外なくケガ人がでました。
電気工事士の技能試験の話を聞くと、いつも最初に受けた年のことを思いだします。
机保護用のボール紙を真っ赤に染めて、試験監督に「手当てしてください」と言われても辞められず、ついには「試験終了です!とめてください!」と言われても諦められなかったおじさんが斜め前の席にいました。
試験終了後1分ほどたって、とうとう完成しなかった回路の前でへたり込み、それから手当てを始めたおじさんの姿は20年以上経っても忘れられません。あれほど悲しい試験の終わりかたはありません。
もう1人忘れられないのは技能試験の練習中に私の後ろの席でケガしたクラスメイトです。電工ナイフがすべったとのことで、そのまま病院です。
今では電工ナイフがなくてもワイヤストリッパで全部まかなえるのかもですが、ペンチでリングスリーブの先から出た余りを切るとき、弾いた線が目にあたるとかありますから、練習や受験の際にけがしないように気をつけてくださいね。
あと、第2種電気工事士に合格できた人はぜひ第1種電気工事士にもチャレンジしてみてください。
上に書いているとおり、2種の技能試験に3回も落ちた私ですが、4回めの2種技能試験に合格した年にそのまま1種の技能試験に合格できています。
第2種電気工事士の技能試験で養われた正確な手技は第1種電気工事士試験でも十分活きてきます。趣味で電気工事するひとは別として、仕事とするなら第1種電気工事士に合格して損はないので間を空けずに頑張りましょう。