自分が、されたくないことはするな?
少し長めに一つお話を。
私がまだ新婚で、企業で仕事をしていた頃のお話。
結婚して初めて、高熱を出してしまった時のこと。
夫はとても優しい人なので、仕事行く前も、帰宅してからも
「何もしないで寝ててね。」
と、私を寝かせてくれた。
しかし心配なのが、彼は料理ができない。
食べることは大好き。
でも、食べるのが一人だけ、忙しい、など理由があると『とりあえず食べられればオッケー』という感じになる。
そのせいで独身時代の繁忙期、きゅうりとビールで過ごした挙げ句に平成の世だというのに『栄養失調で倒れる』をやったというのだ。
聞いたときは、ほんの少しだけど、申し訳ないんだけど、引いた。
そんな心配をよそに、夫は張り切って夕飯を作り始めた。
「できたから、来られたらおいで、無理なら運ぶよ!」
と聞こえたので、トイレも行きたかったし熱に浮かされつつも立ち上がって食卓へ向かった。
そこにあったのは、白い肉だった。
作ってくれたありがたさよりも『これはなんだ?』という思いが強く、そのまま「これは何?」と聞いてしまった。
夫は言った。
「生姜焼きだよ!」
と。
作ったことのない人間が、良かれと思ってわざわざ作ったのは、白い生姜焼きだった。
確認すると、生姜で焼いていた。
生姜焼きである。当たっている。
味は?と聞いたら
「え?生姜は入れたよ?」
と返ってきた。
熱に浮かされたまま座っていた私は、食材を無駄にできない、とフライパンへ戻し味を付けたのだった。
そして、自分は水分をとって寝た。
翌日も熱が続いていた私は
「私は気にせず、ご飯を買って帰るか食べるかしてきてね」
と伝えて寝ていた。
帰宅した夫は、私にもご飯を買ってきてくれた。
いつも優しい。
しかし、中身は『とんかつ弁当』だった。
38℃を超えた中、とんかつを食べた経験はなかった。
夫は具合が悪くなると食べて体力をつけて治す人である。
だから、自分がそうならみんなそう、だと思っていたのだと察した。
優しいのだけれど、少し変わってもらわないといけないな…と思ったことを覚えている。
その後、私はレトルトのお粥を常備するようになった。
あれから10年以上が経ち、今は私が不在でも子どもたちにご飯を作れるようになった。
そして、小4の長男に至っては、自主的に一人でハンバーグが作れるようになっている。
(この話は後日かけたらいいな)
ここで私が学んだこと。
『自分がされて嬉しいことは、相手がされて嬉しいとは限らない』
夫はいつでも胃もたれを気にせず、食べたいものを食べたいだけ食べて体調を戻す人。
でも、私はそれをされたら胃腸が悲鳴を上げてしまう。
子供にも同じことを話す。
「あなた達はくすぐられると楽しくて嬉しいかもしれない。でも、お母さんはイヤなの。
お母さんはミステリーが好きだけど、あなた達は好きじゃないでしょ?
だから、自分が好きだったり嬉しかったりしても、相手が喜ぶとは限らない。」
「『自分がされて嬉しいことをして、自分がされたら嫌なことを相手にはしない』のではなくて、『相手が喜ぶことをして、相手が嫌がることをしない』のが大切だよ。」
「全部自分を中心に考えると、相手を困らせてしまうよ」
今のところは通じている様子。
でも、もちろん毎回そううまく行くわけでもないので、今はそう出来る回数が増えるように、根気強く伝えているところだ。
繰り返しがひどいと、大きな声で言うこともあるけれど…。
自分と相手は別の人間で、それぞれが違うということを学んで行くのは大事なことだと信じている。
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