ぬくもり
言葉が水に影響を及ぼすという話を聞いたことがあるだろうか。
水を入れたコップを2つ用意する。
1つには「ありがとう、きれいだね、かわいいね」などとポジティブな声をかけ続ける。
もう1つには「汚い、バカ、死ね」などネガティブな声をかけ続ける。
数日間同じことを繰り返した後、その水を顕微鏡で見ると前者にはとても綺麗な結晶が、後者には形が崩れた結晶ができている、というものだ。
私は昔、何かの機会に上記の内容が書かれた本を手に取った。
本には実験結果の横に画像も載せられており、「おお!」と小さく感動したのを覚えている。
その後、この話を当時付き合っていた彼に何気なく話したのだが
「そんなこと絶対に外で言わないでくれ。頭が悪い奴だってバカにされるから」
と言われた。
とても辛く、悲しかった。
私が信じているものを否定され、ひいては私自身の人格も否定された気がした。
心の中で思っていることはきっと、あの日見た結晶のように繊細で、もろくて傷つきやすいのだと今になってわかるようになった。
それは私が、小説やエッセイを書くようになったからだ。
心で思っていることや普段は口に出して言えないこと。
それを文字にして可視化する。
そうやって生まれた「何か」は大きなパワーを持っている反面、防御力が非常に低い。
傷つくリスクがあることはわかっている。
だけど、表現することをやめられない。
それは「この結晶、綺麗だね」と私が生み出した「何か」を手のひらですくって、愛でてくれる人がいるから。
その暖かさを覚えてしまったから。
これからも一人でも多くの人のぬくもりに触れられますように……。
一人でも多くの人に包み込んでもらえますように……。
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この記事は..梟.._さんのこちらの企画に参加させていただいたものです。
以前にTwitter上でお見かけし、何の偶然か、昨日再び「表現とこころ賞」というフレーズをTwitter上で見つけました。締切が明日までということで、本日、私なりに書かせていただきました。(趣旨が違ったなら申し訳ございません……)