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短くても『卒業』

昼間はぽかぽかと暖かく朝晩はひんやりと肌寒い。
春がすぐそこに迫っている3月中旬は卒業シーズン真っ盛り。小学校、中学校、高校、大学。それぞれの卒業式で泣いた記憶が頭から抜け落ちている。もしかしたらうるうると涙が浮かんだこともあるのかもしれないけれど多分、泣いていないのだろう。

普段は喜怒哀楽のすべてが私の涙腺と直結しているんじゃないかと思うくらいの泣き虫なのに、あの、用意された空間ではなぜだか白けてしまうのだ。まぁ仲の良い友達とは今後も細々と連絡をとって会うことができるだろうしな、なんて冷めた考えを浮かべながら。

そんな私でも卒業式でぐっとくるときがある。それは寄せ書きを読んだときだ。

寄せ書きは自分が過ごしてきた小さな社会でどのように振る舞い、人との関係性を築いてきたのか可視化できる。それは社会の縮図と言えるかもしれない。「この人はこんな風に私のことを思っていたのか」、「全然書くことが浮かばなかったのだろうな」など、数行の文章から読み取るのはとても楽しい。

過去にもらった寄せ書きの中で印象的なものは直近でもらった、私が2週間の教育実習を終えたときにもらった寄せ書きだ。

担当クラスは1年1組。教育「実習」であるからもちろん教壇に立つこと、それに対する準備は大切だけれど、できるだけ朝から晩まで学校に滞在し、生徒と過ごすことに時間をかけた。授業の予習は家でできるからだ。

クラス全員の名前を覚える努力はもちろん、放課後の掃除の時間やホームルームの時間に積極的に交流を図った。丁度、球技大会と文化発表会が重なっていて、生徒との距離を縮めるにはとてもいい時期だった。

最終日、クラスのみんなに挨拶を終え、関係各所へも挨拶を済ませた私は中庭を歩いていた。すると生徒が7~8人走ってやってきて、クラス全員で作った寄せ書き色紙2枚分を手渡してくれた。

「ちよこちゃんへ」から始まる書き出しが多かったことが嬉しかった。
もっと話がしたかったと書いてくれている生徒、また遊びに来てねと書いてくれている生徒。学校へ来ようと思うようになったと書いてくれている生徒もいた。授業に関して書いている生徒は少なかったけれどそれはそれで構わない。だって私が“そういう”2週間を送ると決めたのだから。

その場で色紙に目を通していると、自然と涙が溢れてきた。卒業式でも泣かなかったのに。泣くつもりなんて全然なかったのに。

たった2週間。されど、2週間。
手の中に収まった2枚の色紙は私の2週間の縮図だった。

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百瀬七海さんのサークル、「25時のおもちゃ箱」に参加しています。
3月のテーマは「卒業」。
少し拡大解釈してしまいましたがそれもご愛嬌、ということで……。



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