愛すべきインターナショナルなクラスメートたち
ハワイ・ライフがスタートした年、まだ20代だった私は大学院に入る前に、ハワイ大学の構内にあるNICEとHELPという英会話プログラムに、1タームずつ通いました。
故郷の北海道室蘭では、あっけらかんとしたニュージーランド人の女性に「英会話レッスンの月謝いらないから、その代わりピアノ教えて」と30分ずつの交換レッスンを提案され、そんなマンツーマンの授業に慣れていた私ですが。
このハワイ大学の語学プログラムには、世界中からいろいろな人が集まってきていて、ある意味カルチャー・ショックも経験したし、ユニークな思い出もたくさんあります。
例えば、ある日宿題を写させてくれと頼んできた韓国人男子のクラスメート。 わざわざ海外まで勉強しにきてるのにねえと思いながらも、快く写させてあげていたら先生に見つかり、「写した方も写させた方も悪い」と私まで怒られたのですが。
彼はいきなり立ち上がり、ものすごい形相で自分のノートをバシッ!と床に叩きつけたのです。 今でいう「逆ギレ」ですね。 どう考えても自分が悪いのに。 その時私は、韓国人ってやっぱり感情的になりやすいのかなとステレオ・タイプな考えを持ってしまった記憶があります。
が、その後、自分の国の歴史についてスピーチするという授業があった時、今度は中国人男子が泣き出したのです。 彼は毎朝派手な寝ぐせがついたままの髪で登校していたのですが、「日本人が中国人にどんなひどいことをしたか・・ それを考えると・・」と涙をこぶしでぬぐい続けました。
日本人の私はいたたまれない気持ちで、どういうリアクションをしたらいいのかわからず、黙ってうつむいていたのですが、英会話の授業でそんなトピックを持ち出すべきなのかという疑問は感じていました。
もし私が「だけどこういう歴史だってあるよ? 中国だってひどいことたくさんしてるじゃない?」などと反論したら、日中友好どころか反目し合うことになってしまいます。 幸い、私にも彼にも歴史について激論を交わすほどの英語力はありませんでしたが。
かと思えば、アウトサイド・アクティビティでクラスでどこかに出かけることになり、バス停で待ち合わせしたのですが、イタリア人のその名もガリレオが、待ち合わせ時刻を30分過ぎても現われないのです。
携帯のない時代、先生も「何かあったのかな? しかたない、もう次のバスに乗ろう」とあきらめかけた時、「ハーイ、エブリバディ」と何事もなかったかのように登場したガリレオ。 謝るどころか、まったく急いでいる様子もなく。
しかも、手にはピザの箱を抱えていて(ネタのような話ですが実話です)、「Woud you like pizza?」と一人一人に訊いて回るではありませんか。 みんな怒るというよりは、もう笑いだしてしまいました。 さすがイタリアンというか。 得なキャラですよね。
ドイツから来ていた女の子は、お国柄、勝手に几帳面なお堅いタイプかと思いきや、休み時間は煙草をスパスパ吸い、いつもロックなTシャツを着ていて、どこか大人っぽい雰囲気の女の子でした。 ドイツに帰る前にお寿司屋さんに行きたいと言い、二人でお寿司を食べたのもいい思い出です。
彼女やガリレオは、英語はもう十分に話せたし、これからアメリカの大学に入りたいというわけでもなく、家がお金持ちで、大学の夏休みを利用して半分遊びに来ていた感じでした。
そんな中、私がいちばん仲よくしていたのが、ノンというタイ人の女の子で、彼女は当時アラモアナにあった大きな本屋さんを買い取った、タイの実業家の姪っ子ということで、叔父さんが所有するワイキキの高級コンドに一人で住んでいました。 「叔父さんはお金持ちだけどうちは普通」といつも言っていましたが。
彼女とは毎日いっしょに帰り、よく私の当時のアメリカ人のボーイフレンドもともに3人でイベントなどに出かけ、お互いにつたない英語で一生懸命会話しました。 どうしても単語がわからない時などは、紙に絵を描いて伝えたりもして。 あの頃彼女といつもたくさん笑っていたという印象があります。
その時は、学校へ行けば普通に彼らに会えたわけですが、タームが終わればほとんどがバラバラ。 当時20代だったのに今や40代や50代になっている彼らは、今どこでどうしているのやら。
インターネットもなかった時代なので、今ならもちろんFacebookやらLINEやらでつながるでしょうけれど、お互いに住所や電話番号を交換したものの、いつしか連絡も途絶え・・ 今ではノンとFacebookでお互いの誕生日にお祝いメッセージを送るくらいです。
まさに一期一会な語学学校。 あの時のクラスメートたちが、韓国で、中国で、イタリアで、ドイツで、タイで、みんな元気にしていたらいいなあ。 とハワイに暮らし続けている私は、遠い目になって思うのです。
✨英会話コーナー✨
You have a reason to get scolded. もしも過去に戻れるなら、逆ギレした男の子に言ってやりたい言葉です。 怒られるようなことしてるじゃん、ってことですね(^-^)