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ねこへの愛は国境を超える。猫用IoTトイレで米国進出を狙うToletta Catsインタビュー

「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる」。そんなミッションのもと、ねこの尿計測から健康管理を行うIoTねこトイレ「toletta®」を開発・販売する株式会社トレッタ キャッツ。Plug and Play JapanのHealthプログラムSummer/Fall 2020 Batch(Batch:Plug and Play Japanにおいて、一定期間実施するアクセラレータープログラムを表す1つの単位)を卒業したあと、前澤ファンドから出資を受け話題に。また、アメリカのペットブランド大手、Mars Petcareが出資するLeap Ventures Studioに日本から唯一採択され、出資を受けたことを期に、米国法人を設立した。
国内のペット市場規模は1兆円、ペット医療市場の規模は2,623億円と言われる中、10兆円と言われるアメリカ市場に挑むToletta CatsのCEO、堀宏治氏に話を聞いた。

堀 宏治 株式会社トレッタキャッツ 代表取締役
NTTデータ、Johnson&Johnsonにて、病院システム及び病院経営コンサルティングに携わり、2003年、Global Health Consulting Japanを起業、取締役副社長。2006年、メディカルアーキテクツを起業、代表取締役。後に事業売却。2012年、ペットボードを起業、代表取締役。後に事業売却。2015年、トレッタキャッツを起業、代表取締役。現在に至る。

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(写真提供:株式会社トレッタキャッツ)

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ーー米国法人を設立されるとのこと、おめでとうございます。Plug and Play JapanのHealth Batch 2プログラムに参加いただきましたが、当社のアクセラレータープログラムに入った理由を教えていただけますか?

堀氏(以下敬称略):設立当初から、各種のアクセラレータープログラムには積極的に参加しようと思ってはいました。しかし事業がスケールのフェーズに入ってきたのと、B2Cで直接販売していたのとで、「大手企業とのコラボレーション」という点にはそこまでニーズを感じていなかったんです。ただ今回数年ぶりにアクセラレータープログラムにエントリーした理由は、海外展開を考えていたからです。海外市場に関してまだまだわからないことがいっぱいあるので、Plug and Playが強みとするグローバルなネットワークを活用しながら学べることがあるかなと思ってエントリーしました。

ーー参加されてみての感想はいかがですか?

企業パートナーの方々は基本的に人間の健康にフォーカスされているので、直接的なコラボレーションというのはプログラム期間中には生まれなかったのですが、Plug and Play Japanのコネクションを通じて、様々な投資家や事業機会を紹介していただきました。また、Plug and Play からアメリカのカンザス州にあるTopekaという都市でもアニマルテックに特化したアクセラレータープログラムがスタートし、そこがまさに僕たちもチャレンジしたいと考えている場所だったんです。カンザスシティはAnimal Health Corridorと呼ばれるくらい、アニマルヘルスの企業が集中している場所なんです。アニマルヘルスに特化したプログラムというのはなかなかないので、そこへ参加するための足掛かりとしてすごく良い機会と考えました。

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ーースタートアップにとって、アクセラレータープログラムは次のステップに進む大きなきっかけになるということですね。アメリカ市場に展開するにあたって、どのようなアプローチを考えておられるのでしょうか。

カリフォルニアに100%子会社を設立予定です。私が日本本社とアメリカ支社の社長を兼任しますが、しばらくはアメリカに軸足をおいてやっていこうと思っています。
私自身がアメリカで事業経験がないので、アメリカで日本と同じことはやれないなと思っていました。日本だとB2Cのビジネスモデルでやっていますが、アメリカのペットカルチャーの実態をまだつかみきれていないんです。そこでアメリカでは動物病院などと提携してユーザーにサービスを展開する、B2B2Cのモデルでやろうとしています。

ーーアメリカ展開にあたり、これからどういったパートナーを探しておられますか?

一つは動物病院ですね。日本では個人で運営されている動物病院がほとんどですが、アメリカの場合は動物病院がフランチャイズ展開されているので、Mars Petcare傘下の4000くらいある動物病院と提携して進めていこうと考えています。
もう一つはオンラインの動物診療のパートナーです。コロナの影響でオンライン動物診療がすごく成長しているんですね。オンライン動物診療事業者とコラボレーションしてtoletta®を広めようとしています。リアルとオンラインの両方から広めていきたいですね。
あと一つはペット保険を提供している企業です。アメリカでは、ペットの医療費は人間と同じで非常に高額なのでペット保険の加入率は日本よりもアメリカの方が圧倒的に高いです。コロナの影響もあり保険に関心が高まっているので、当社のプロダクトとは親和性が高いと思っています。なのでその3つのコラボレーションエリアでご協力いただけるパートナーを探しています。

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(写真提供:toletta cats)


ーーIoTトイレそのものというよりは、トイレを通したヘルスケアソリューションを複数の領域で提供されていくということですね。

当社のプロダクトを通して、これまで得られなかったねこの健康データが得られるようになるんです。動物病院にとっては、家庭でねこのモニタリングデータが手に入ることによって、今までできなかったアプローチができたり、医療の質をモニタリングできるようになったりする。オンライン診断にしても、飼い主の訴えだけではない、エビデンスにもとづいたデータが手に入るのでより質の高い医療を提供できる。保険についてはリスクが可視化されるので、健康状態にあった商品を選定できたりします。ペットケアのDXという、新しい事業展開を促進できるんじゃないかと思います。

ーー競合に対する優位性はどこにあるのでしょうか。

データの量と質だと思います。今国内では10,000頭弱のねこにご利用いただいています。ペット向けのIoTトイレとしては国内で圧倒的にトップになっています。データが増えれば増えるほどデータの価値が高まっていくので、僕らとしては広範囲にデータを取得していきたいですね。どれだけ短い期間でユーザーを獲得してデータを増やしていけるか、アメリカの企業と組むことで普及スピードをどれだけ早められるか。ここが勝負になるかなと思います。

ーーローカライゼーションをする中で、気づいた日本との違いはありますか。

日本のねこトイレの形状がアメリカや他国と違うんです。アメリカ人がtoletta®を見た時に、IoTトイレという特長よりもまず「トイレの形状そのものが違う」と驚かれるんです。アメリカのねこトイレっていわゆる箱型と呼ばれるタイプで、バケツに砂を入れているだけなんですね。日本で普及しているトイレは砂を入れたトレイの下にもう一つレイヤーがあって、砂がおしっこを吸収せずに下に落ちていく、2層構造なんです。なのでアメリカでは吸水性の良い砂が使われ、日本では吸収しない砂を使う。臭わないし、掃除も楽なのでいいことづくめなんですね。アメリカだと家が広いので臭いも気にならないのですが、日本の家は狭いのでおしっこの臭いが気になる。そのために2層構造のトイレが生まれてきて、この10年くらいで急速に進化している。海外のトイレは尿と糞が同じレイヤーに入るので計測するための区別がつかないんです。なので彼らは尿を図りたくてもできなかった。日本はたまたま2層になっていたので、尿を計ることができたんです。このカルチャーは、「from Japan」として推進していきたい部分ですね。特許もとっているので、他社が我々と同じ方式で計るというのは難しい状況になっています。
あとは、アメリカ人がまず気にするのが「このトイレをうちのねこが使ってくれるかしら」ということ。ねこはセンシティブな動物で、気に入ってくれないと使ってくれないので、一度はおためしで使ってもらうようにしています。人だけではなくねこにも受け入れてもらう、という意味でのローカライゼーションですね。日本でも昔は箱型から2層式が受け入れられるまでの移行期間があったので、消費者へのナーチャリングなど、過去の日本同様のサポートは必要かと思います。海外で商品を説明すると「どこそこの国にある○○というサービスと同じだよね」というように、似たような製品があることが多いじゃないですか。でも尿量を計測できるねこトイレというのは、日本や世界中で我々しか作っていないんですよ。

ーー他のペットアイテムとのコラボは。

フードや猫砂など他のアイテムと組み合わせることで、ねこに最適なものを提供する、パーソナライズ(ねこに使うのはおかしいかもしれませんが)されたサービスを提案できるんじゃないかなと思っています。

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(写真提供:株式会社トレッタキャッツ)

ーー投資家に伝えたいことはありますか。

人間とペットで市場規模は違うんですが、一社あたりのシェアを見ると人間のヘルスケアはレッドオーシャン化していると思うんです。でもペットについてはまだプレイヤーが少なく、毎年ペットテック市場は25%程度成長していっているので、ポテンシャルはあると思います。我々のように、日本のスタートアップで海外市場にチャレンジしているという事例はあまりないと思うので、こうして海外に展開しようとしているという背景からも、ある程度ポテンシャルと実績は裏付けられているかなと思います。新しいペットテクノロジーが世界を変えようとしているということを、投資家の方にご理解いただけると嬉しいですね。


ーー最後に、ねこ好きの方にメッセージをお願いします。

ねこを飼っていらっしゃる方にとって、家族の健康というのは一番の関心事だと思います。 我々自身もねこオーナーなので、みなさんの思いを形に変えて、ねこちゃんが健康で長生きできるような社会を作っていきたいと思っています。また現在、採用も積極的に行っています。基本的にはリモート勤務もOKですし、海外に住んでおられる方でも良いので、ぜひアプライしていただきたいなと思います。

ーーありがとうございました。

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(写真提供:株式会社トレッタキャッツ)

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