[コラム] 日本の異世界ファンタジーを楽しむための基礎知識
日本のファンタジー、特に異世界系のアニメや漫画、ライトノベルを楽しもうとしたときに、いきなり何の説明もなく当たり前のように “いろいろなもの” が出て来て、戸惑うことはないだろうか?
この “いろいろなもの” は、80年代くらいからこっちのゲームやアニメ、漫画や小説などを継続的に楽しんで来た人にとって、常識的に持っている基礎知識なんだろう。
で、現在生み出されている多くの物語は、そういった世代の人たちが作っているわけで。
2020年代の現在、日本に多くある異世界系のファンタジー世界は、恐らくだけど、80年代に出てきたウィザードリィやドラクエなどのゲームの世界観を基盤に発展してきたものだろうかと思う。
このドラクエっぽい世界観は、直接的にも間接的にも J・R・R・トールキンの『指輪物語』の影響を多大に受けており、この物語を知っているのと知らないのとでは、その理解度はだいぶ違ってくると思う。
無論、それだけではないんだけど。
というわけで、日本の旬のファンタジーを楽しむためにはある程度の基礎知識が必要なのかも。
この記事では、そんな基礎的な知識をできるだけまとめてみようと思う。
ただし、私もそんなに詳しくないから間違いもあるかも。
そしたらごめん。
◎ファンタジー世界にあるもの
・ギルド
元々の意味は、中世くらいに西洋にあった商人や工業に携わる人たちによって結成された組合みたなものである。
転じて、ファンタジー世界では “冒険者ギルド” として、冒険者たちへの依頼の管理やステータスの管理などを行っている職安と役所を兼ねたような場所として登場することが多い。
ギルドで管理している依頼は、掲示板のようなところに紙で貼り出されている。
冒険者となった主人公などが、そこを見て、自分の目的にあった仕事を探してこなしたりする。
依頼のことをクエストと言ったりもする。
各人にステータスのようなものがある場合は、レベルによって受けられる依頼などが決まっていたりもする。
私の場合、RPGは古いドラクエかFF、クロノクロスくらいしかやり込んでないので、あまりこのギルドというものに馴染みがないんだけど、ゲームではお馴染みのものなのかな?
オンラインゲームなどでは、パーティーよりも、もっと大きな団体をギルドと言ったりするらしい。
・パーティー
冒険に出る仲間の最小単位のグループのことを指す場合が多い。
水戸黄門ご一行様みたいなのを想像するとよいかも。
・ステータスやレベル
ギルドの説明で普通に使ってしまったが、ステータスとは何ぞや? という人もいるかな。いるよね。
ゲームの世界では、キャラクターの強さを数値で表すのが一般的で、それらをステータスと言う。
例えば、攻撃力 10、魔力 5、防御力 8、みたいな感じ。
また、体力や魔力の残量を数値として示したりする場合もあり、その場合、体力は HP(ヒットポイント)、MP(マジックポイント)と呼んだりする。
HPがゼロになれば死ぬし、MPがゼロになると魔法が使えなくなる。
そして、その身体能力や精神力の総合的な評価として、レベルがある。
いきなり強い主人公とかでなければ、普通の人、つまりレベル1から始まる。
通常であれば、魔物を倒したり、依頼を達成したりすることでステータスやレベルは上がる。
勝手に上がる場合もあるし、ギルドや教会などで何らかの手続きが必要な場合もある。
これらの数値は、キャラクターの強さを解りやすく簡単に説明できる効果がある。
なんじゃこの数値!! 規格外にめっちゃ強い!! など我々が喜ぶ中二っぽい演出が可能だ。
これはゲームの世界そのものだ。
このように能力が数値化して見える…という状況をすんなり受け入れるほどゲーム的世界は我々の心身に浸透している。
ファンタジー世界において、ステータスやレベルがある場合、それが主人公だけに見えている場合もあるし、または住民全員が当たり前のものとして把握していたりする場合もある。物語によって扱いはバラバラだ。
※数値化されたステータスが全く出てこない物語ももちろんある。
ステータスは、ゲームの画面のように視界に表示される場合もあれば、冒険者ギルドで管理されていたり、または教会などの神聖な場所で何らかの方法で提示されたりと、確認する方法は物語によっていろいろある。
物語の中でステータス的なものが数値で見えているからと言って、その世界がVR(仮想現実)だとは限らない。
そのへんは慣れないと区別が難しい場合もある。
・スキル
一般的には能力のことを指すが、物語によっては特定の条件が満たされた際に獲得できる特別なものとして出て来たりする。
主人公がユニークスキル(その人のみに与えられるこの世で唯一の能力)を持っているケースも多い。
ユニークスキルというものは、元々はオンラインゲームなどにあったものかなと思う。
これを物語の中に取り入れることで、中二的な好奇心を掻き立てる面白い効果を生み出したりする。
このユニークスキルがあまり便利すぎ強すぎとかだと、チート設定と言われたりする。
※チートというのは元々はゲーム用語で、バグを利用した不正行為のこと。
・称号や二つ名
レベルとは別で、称号や二つ名といった設定がある場合がある。
これは登場人物のランクみたいなものかな?
例えばドラゴンを倒すとドラゴンバスターとかドラゴンスレイヤーと言った称号が与えられたり、竜殺しの〇〇とかの二つ名を貰ったりもする。
ちなみに「バスター(退治屋)」とか「スレイヤー(殺す者)」はよく出てくる言葉。
・ダンジョン(迷宮)
元々の意味は、“地下牢” である。
実際のダンジョンは城の下にあったりするが、物語においてはその限りではない。
RPG黎明期に作られた「ウィザードリィ」などのゲームの舞台がダンジョンであったために、ファンタジー世界にはよく出てくる場所となった。
物語によってその形状は様々で、人工的に作られた迷宮の場合もあるし、自然に作られた地下洞窟の場合もある。
ダンジョンには魔物が住んでいて、冒険者たちの攻略すべき場所として登場する。
ダンジョンによっては、階層があり、20階層などとナンバリングされてることもある。
地下に行くほど階層の数は大きくなり魔物も強くなる。
・魔法
ファンタジー世界では魔法は普通にある。
昨今の異世界系の物語では、わりと白魔術・黒魔術系が多めかなと思う。
これもゲームの影響だと思う。
そのルーツをもっと辿ると、『指輪物語』や『ハリーポッター』などになるかもしれない。
魔法や魔術については、物語によってしっかり体系化されいることが多い。
この設定が甘かったり適当だったりすると、少々幼稚な印象になってしまったりするので、作る側は大変である。
よくある設定としては、魔術の属性である。
火・水・地・風・光…など魔術を使う本人に属性があり、その系統の魔法を得意とする、というパターンである。
このような時に、主人公は例外的に全属性持っていたりとかする。
魔法には、攻撃系、防御系、癒し系、創造系などさまざまな特性が持たされる。
人によって魔法が使えたり使えなかったり、先天的に持っている魔力量に差があったりする。
魔法は術式の展開によって発動したり、詠唱によって発動したり、物語の世界観よって変わる。
術式で展開するタイプの魔法の場合は、数式のように魔法を解釈していたりして、科学的に扱っていたりする。
詠唱によって発動する系の魔法の場合は、言葉を唱えることができないと魔法を発動できなかったりする。
主人公は詠唱なしで魔法を使えて驚かれる…なんて展開もよくある。
エルフなどは精霊の力を借りて神秘的な力を使ったりもする。
それは厳密には魔法と区別される場合もある。
魔法の演出としては、杖や指などから閃光や炎が飛び出す往年の方法もあるけれど、ネオンカラーの魔法陣が空中に出現するような描写が多い気がする。
この魔法陣の感じは水木しげる著の『悪魔くん』にルーツがありそうで、使い方が実は日本独特だったりするらしい。
癒し系の魔法の場合は、そよ風が吹き、下から緑の光がほんのり照らす…みたいな演出がされる。
魔法の効果音は、攻撃の場合は炎や雷といった音を出す場合もあるけど、魔法陣の出現と共に「ブーーン」というハム音的な効果音が使われ場合もある。
魔法の演出は時代によって大きく変わりそうなので注目すると面白いかも。
◎ファンタジー世界に住んでいるものたち
・人間
ヒトである。
異世界でも人間はいる。
人族とかヒューマンと呼ばれてる場合もある。
魔法を使える人もいる。
・勇者
人間の中でも特に優れた能力を持った人物がなるとされる場合がある。
単なる職業ではなく、救世主的な存在として出現したりする。
普通の人間よりも遥かに高い能力を持っている。
・エルフ
ヒトよりも優れた種族。森人と書かれる場合もあり。
基本的に寿命はなく、身体が著しく破損したり、生きるのが嫌にならない限り死なない。
先のとがった耳をしており、善良で美しい容姿をしている。
男女の性別があり、人間とも交配可能。
森に住んでいることが多く、精霊とコミュニケーションが取れたり、弓矢が得意だったりする。
ドワーフと仲が悪い。
エルフの原型はゲルマン神話に出てくるもので、J・R・R・トールキンの『指輪物語』に登場することにより、そのイメージが確立していった。
エルフの中でも上級の者が存在し、ハイエルフなどと呼ばれる。
エルフの中で邪悪な者や人間に害をなす者がおり、ダークエルフなどと呼ばれる。
人間とエルフの間に子が産まれる場合があり、ハーフエルフとなる。
彼らはしばしば差別の対象として描かれる。
・オベロン
妖精王(エルフの王)の名である。
元はヨーロッパの古い伝承に出てくるらしいが、シェイクスピアの『夏の夜の夢』に登場することによってそのイメージが確立した。
現代のファンタジーはこの『夏の夜の夢』にも多大な影響を受けているので読むべしである。
・ドワーフ
ヒトよりも一回り体の小さな種族。
男女共にがっちりした体格で、男は立派な髭を生やしていることが多い。
高度な鍛冶技術や工芸技能を持つとされ、武器などを作る職人として登場することもしばしば。
酒飲みで頑固だが情に熱い性格として描かれたりする。
エルフと仲が悪い。
元は北欧神話に登場する妖精の一種。巨人ユミルの死体から産まれとされる。
白雪姫の七人の小人もドワーフである。
J・R・R・トールキンの『指輪物語』に登場して、そのイメージが確立していった。
・ドライアド/エント
ドライアドは木の精霊で、美しい女性の姿をしている。エルフとちょっと被る。
エントは『指輪物語』に登場した木の精霊。木のような巨人の姿をしている。
いずれも森を守護するものとして描かれることが多い。
・神
物語によって、神はいたりいなかったり。
現実世界の神とは違っている場合が多い。
・魔族
魔人と言われたりもする。
定義が物語によってバラバラなので明確には説明できないが、人間に敵対する魔物や妖怪といった感じの奴らを総称して魔族と言ったりする。
しかし、物語によっては人間とほとんど姿は変わらず、魔界的なところに住んでいる住民として描かれる場合もある。
髪の色や肌の色が現実の人間ではありえない配色をしていたりもする。
・魔王
魔族や魔物たちの頂点に君臨する者を指す。
物語によってその立場は異なるが、勇者や神と対する者として登場する。
・リザードマン
トカゲに似たヒト型の種族。二足歩行で人間の言葉をしゃべる。
恐らくはゲームの敵キャラが起源と思われるがちょっと曖昧。
武器や鎧を身に着けている場合がある。
敵キャラとして登場することもしばしばあるが、友好的なキャラクターとして描かれる場合もある。
知能は高い場合もあれば、低い場合もあるが、戦闘能力はだいたい高い。
・獣人
ヒトと獣がまざったような姿をしている。
多くは頭に犬や猫のような耳を持ち、尻尾がある。
ヒトより知能は劣るが身体能力・戦闘能力は高い、といった感じで描かれることが多い。
人狼などが元ネタだと思うが、特定の条件で獣になる…ではなく、常にヒトと獣が混ざったような容姿をしている。
もしかしたら、高橋留美子 著の漫画『犬夜叉』の影響があるのかも?
・スライム
ゼリー状・粘液状の怪物。
主人公が冒険を始めた際に、一番最初に倒す弱小の魔物として扱われることが多い。
ゲームがコンピューターになる前のテーブルトークRPGの敵キャラとして登場し定着してきた。
マスコット的なイメージもあって物語にもよく出てくる。
・ゴブリン
洞窟や森に住んでいる邪悪なもの。
緑色の肌を持ち、小さなヒト型の生き物。
醜い。
ヒトを襲う。知能はさほど高くなく、敵の中でも雑魚キャラとして扱われることが多い。
ちょっと知恵がついたゴブリンをホブゴブリンと言ったりする。
元はヨーロッパの民間伝承に登場する。ゲームなどの敵キャラとして登場し、ファンタジー世界に定着していったと思われる。
・オーク
特定のイメージはないが、醜い姿をしたヒト型の怪物と描かれることが多い。
豚っぽいイメージあるかな。
家畜や人を食べたりする。
邪悪で凶暴な者として敵キャラとして登場したりするが、わりと雑魚っぽく扱われることもある。
元は、『指輪物語』に登場するエルフが魔王的なものに捉えられて虐待された果てになる姿である。
それ以降、様々なゲームに登場してその存在が定着した。
・オーガ
ヨーロッパの伝承などに出てくるいわゆる「鬼」。
人肉を食べるとされる。その一方で知能は低いイメージ。
・アンデッド
死んでる系の魔物の総称である。
ゾンビや吸血鬼がこれに属する。
・ドラゴン/ワイバーン/ガーゴイル
いずれも竜の仲間である。
形状によって呼び名が変わる。
その他、出てくる生き物たちを羅列してるキリがないので、ここを見てくれ。
ファンタジー物語に登場するものたちはどこかしらから引用されていることが多いので、聞いたことのある名を見つけることができると思う。
この一覧ずっと見てられる!!
こんなもんかな…
また何か思い出したら書き足すかもしれないけど、ひとまずここまで~。
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