[ショートショート:アクションホラー] 夜舞桜 - Sweet Potato Head Counterattack #春弦サビ小説
小説のサビ部分。つまり盛り上がるところだけを抜き出して書く試みです。
唐突にいろいろ出てきますが、物語の前後を妄想しながら読んでいただければ幸いです。
夜舞桜 - Sweet Potato Head Counterattack
新宿歌舞伎町跡地にやってくると規制線が引かれていた。
やはり噂は本当だったのだろう。
木刀を握る手に力が入った。
ミサはこの中にいるのだろうか。
僕は裏側に回って、廃墟となったビルの隙間から規制線の内側へと侵入した。
静まり返ったかつての繁華街はガランとしていて、暗く人っ子一人いない様子だった。
売人たちもさすがに今夜は姿をくらましているようだ。
僕は足音を立てないように身を低くして暗闇を進んだ。
暗闇と言っても周囲の街の灯りが空に反射して真の暗闇ではなかった。
それがかえって不気味に思えた。
少し進むと、向こうの広場の方から何かドスッ、ドサッという鈍い音が聞こえて来た。
僕ははやる気持ちを抑えつつ走った。
広場に到着すると、人だかりができていた。
…いや…人だかりではない…。
芋頭たちだった。
四か月前に駆除隊によって撲滅したはずの芋頭たちが群れをなして何かに襲いかかっていた。
芋頭たちの隙間から、誰かが戦っているのが見えた。
ひときわ小柄な人影。
長い黒髪をポニーテールにしてゴシックロリータと呼ばれるファッションに身をつつんだ彼女。
ミサだった。
襲い掛かって来る芋頭をミサは次々と斬り捨てていた。
彼女が刀を振ると一瞬火花が散った。それがまるで夜に舞う桜のように見えることから、彼女は『夜舞桜』と呼ばれることがあった。
芋頭たちはミサに次々と襲い掛かり、ミサは斬って斬って斬りまくっていた。
僕は思わず彼女の元へと走り出していた。
ミサの様子が少しおかしく思えたのだ。
普段は目にも止まらぬ速さで動く彼女が、もたついて見えた。
彼女に群がる芋頭にめがけて木刀を振りかざし、一体一体頭を破壊していった。
僕が参戦すると、ミサはすぐにそれに気がついた
「何してるの? どうやって入った?」
「ミサ、怪我してるのか?」
ミサの左腕に切り傷が見えた。
その瞬間、僕は理性を失った。
ひたすら、視界に入って来る芋頭を叩き潰した。
ミサを傷つけたのがどいつかは知らないが、こいつら全部、再起不能になるまでグチャグチャのメタメタにしないと気が済まないと思った。
そうして僕の意識はここらへんで吹っ飛んでしまった。
気が付くと、僕はミサの腕の中で暴れていた。
「大丈夫、芋頭は全滅した。私も大丈夫ほら」
ミサの声を聞いていると、僕は落ち着きを取り戻した。
「ミサ、なぜ一人で戦ってた? お前の隊員はどうした?」
僕は訊ねながらミサの腕の傷を見た。
思ったほど深くはないが軽症でもなかった。
僕が正気に戻ったことがわかると、今度はミサが震えはじめた。
「私の部隊は全滅した。みんなやられちゃった」
見渡すと、そこら中に芋頭の死体と、人間の遺体も多く横たわっていた。
ミサは泣き始めた。
僕はミサの小さな身体を抱いてやった。
「なぜ僕を置いて行った?」
「だってあんた人間も殺してしまうじゃないか」
それには何も言い返せなかった。
「…とにかく、ミサが死んでしまったら僕を制御してくれる人がいなくなってしまう」
僕はミサを抱きかかえると、歩き始めた。早く傷の治療をしてやらないと。
「…私を助けようとする理由はそれだけ?」
ミサが小さな声で言った。
「バカだな…それだけなわけないだろう…」
僕も小さな声で答えた。
帰ったら僕を置いて行ったお仕置きをたっぷりしないとな…と思いながら。
・・・
▽挿入歌的にこちらをお聞きください
◎5/16 追記
『夜舞桜』の作詞者であるスズムラさんが、ミサのイメージで画像作ってくれました☆
作詞者はここではつまり原作者ですよ☆
血出てますが、タイトルにホラーってつけてるいいかな。
◎5/31追記
なんとですね。夜舞桜の作曲者まくらさんが、【僕】のビジュアルを作ってくれました。
青髪…いいですね
美しいですね…
お仕置きですよ。
ありがとうございました☆
妄想万歳★
▽作詞記事
▽作曲記事
◎あとがき的な
この曲では既に何人か物語を書かれていますが、私も書きたくて参加させていただきました。
まくらさんの小説に少々影響を受けている感じはありますが、別の世界のお話です。
スズムラさんの歌詞からなんか極限状態の二人の愛情…というシーンが思い浮かびまして、こんなお話になりました。
芋頭ってゆうのは、とくに細かい設定をまだ考えていない怪物たちなのですが、以前『逆噴射小説大賞』という物語の冒頭だけで面白さを競い合う大会でちょっと思いついた奴らです。
今回のは『サビ小説』ですので、↓こっちは『イントロ小説』かな。
※登場人物は一致しません
いつか長編にしてみてもいいかな、なんて今回思いました。
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