[鶴亀杯] 審査員賞 大橋ちよ賞
鶴亀杯。大橋ちよ賞 発表します!!!!
詠み人を伏せた状態で、純粋に句のみで選びました☆
◎1位
ぬばたまのGは夜店の陰を這う
詠み人:プッククンさん
私の1位は、ダントツでこの一句でした。
読んだ瞬間に一目惚れです。
「ぬばたまのG」ですよ!!!
この唯一無二感。すばらしいです。
そうして「ぬばたまのG」の後に畳みかけるように「夜」「陰」の文字が続きます。
「ぬばたま」は黒いんです。ツヤツヤの黒です。
陰と陽も際立ちます。
なにしろ全体的にカッコよい句です。
「Gが」と言わずに「Gは」なのもカッコよい。
「ぬばたまのGは夜店の陰を這う」
うう…かっこよすぎてゾクゾクします。
私は、読む人によって受け取り方が様々に変化するようなものが好きです。
この句もそんな広がりのある句かなと思います。
受け取った人の心情や状況によって、いろいろな解釈がされる句です。
詠み人であるプッククンさんから勝手に離れてどんどん走って行ってしまう句なのです。
それを可能としているのは、この句が絶妙なバランスの上に成り立っているからかなと思います。
誰もが想像できるシーンでありつつも、受け手側が妄想するための余白があるんです。
夜店って意外と不衛生よね…と過去に見た情景がフラッシュバックする人もいるかもしれません。
華やかなものの裏には陰がある…と読む人もいるかもしれません。
夜店の陰を這うGに自分の姿を重ねる人もいるかもしれません。
夜店のGを何者かに例えて考える人もいるかもしれません。
私はこの一句で地球の生命の歴史を感じてしまいました。
Gは約3億年ほど前に誕生し、1億年前くらいから姿がほぼ変わってないそうです。
つまり、そのくらいには既に完成形だったということで…。
我々なんてせいぜい4万年ですよ。
Gはおそらく、人類が滅亡した後も地球に残ることでしょう。
この世の真の支配者はGなのかもしれません。
我々とGは長い長い時の中でほんの一瞬交差してるだけなのです。
夜店の灯りは神の瞬きより短く。
諸行無常の響きあり、なのであります。
夜店の闇を這いまわるGの一句から私はそんなことまで想像しちゃいました。
で、妄想が暴走して、この句で曲を作っちゃいました。
こちら、勝手に副賞としてプッククンさんに捧げます。
どうぞ聞いてください。
もちろんコードはGオンリーで作りました。
G線上のGです。
※曲のタイトルに句を使わせていただきました。
さあ、みなさんも、Gの妄想を膨らませましょう☆
◎2位
胎の子にせがまれて食む枇杷ふたつ
詠み人:すうぷさん
この句を読んで、私は妊婦のころの自分に一瞬にして舞い戻っちゃいました。
それほどにバーンとその時の心情が蘇ったのです。
妊娠中って驚くほどに食の好みが変わったりしますね。
私もわりとフルーツばかり食べてました。
枇杷ではなくスイカでしたが。
ふたつ食べちゃっているのもいいですね。
妊婦時代って、自分で思ってたイメージと全く違っていて、ものすごく野性的というか、生命の根源に触れる時間でした。
本能に突き動かされるというか、まさに胎の子に操られているようなそんな感覚がずっとあって。
「胎の子にせがまれて食む枇杷ふたつ」
「食む」が動物的でとてもよいです。
無心でふたつ、むしゃむしゃ食べちゃう。
この句で、「枇杷」の部分は何でも作れそうに思いますが、やっぱり枇杷なのがいいなと思います。
私は普段あまり枇杷は食べないので、胎の子にせがまれて食べそうだなと思うのです。
すうぷさんにはこちらの子守歌をぜひ。
◎3位
三姉妹けんけんぱあの夏の夕
詠み人:ゆずさん
解説が不要なすばらしい句です。
情景がバーンと入って来ます。
遊んでいる子を見守る視線もそこにはあり、何なら蝉の声も聞こえてきます。
俳句ってこうやって作るんだなとしみじみ感じ入りました。
うちの子らがちょうどこういう時期です。
クソ暑いのに外で遊びたがります。
夕方少し涼しくなるとほっとします。
そして、子が遊んでいるのを見ていると、平和だなぁ~って思うんですね。
「三姉妹けんけんぱあの夏の夕」
ゆずさんの俳句の雰囲気にあっているなーと思う曲がありましたのでぜひ。
◎4位
連山の流れの果ての瀑布かな
詠み人:兄弟航路さん
投稿いただいた三句とも大自然を彷彿とさせるものでどれもすばらしかったです。
私は迷いに悩んでこちらの一句を推薦しました。
名前を伏せて審査していましたが、詠み人同じとわかりました。
山百足の句もとても好きだったのです。
「連山の流れの果ての瀑布かな」
文字のごとき情景を詠っているとも読めますし、流れを何かに例えて読むこともできたりして、受け取り側によって解釈がいろいろになる句だなと思います。
川の流れに人は人生を重ねます。
と言いつつも、この句の壮大さは、人の営みとは無縁の世界のようにも思え、それと同時に、この風景の中で心を動かしている人の存在も感じられます。
いくつもの旅を経て、どぉっと落ちる水。
この17音の中にドラマがあります。
連なる山をイメージして作った曲がありましたので、兄弟航路さんの句にはこちらを。
◎5位
結葉に紛れそよそよ妖精か
詠み人:chiyoさん
突然ファンタジーになるところがとても好きです。
夏の木漏れ日。揺らぐ葉っぱからチラチラと日光。
に透けて緑に輝く葉、葉、葉。葉がヒラヒラ。
それだけで、たくさんの俳句が生まれそうな風景です。
そこに妖精さんを登場させて瞬間の美しさを切り取るところにchiyoさんの個性が光っています。
「結葉に紛れそよそよ妖精か」
チラッとキラッと。
いつでも心にファンタジーを☆
chiyoさんの一句には、自然の営みを幻想的に歌ったこちらの曲がぴったりと思いまして、ぜひ。
◎6位
蝸牛くだ巻く吾へ友の酌
詠み人:IKUKO@するすみさん
「くだ巻く吾へ友の酌」に「蝸牛」がくっついていて、とっても面白い!! と思いました。
蝸牛がくだ巻いてる様が目に浮かんでしまった。
ぐでぇ~としている蝸牛に友が「呑め呑め~」と酒を注いでいる。
「蝸牛くだ巻く吾へ友の酌」
終わりなきループに巻き込まれたような、時間と切り離された世界に紛れ込んだような、そんな不思議体験ができる一句でした。
IKUKO@するすみさんの句へは、ご友人の台詞を代弁するような曲がありましたので、こちらをぜひ!
まくわ瓜頬ばりしたたる甘い汁
詠み人:ムーンサイクルさん
うら若き十代のころに「エロしりとり」なる遊びを友とずっとやってたんですよ。
あ、いかがわしい遊びじゃないですよw
それは、直接的表現ではなく、間接的な言葉を使って、どれほどエロいかを競いつつしりとりをするという遊びでした。
でも実は、これが詩的な比喩表現の特訓になってたのです。
エロい単語を使わずにエロさを表現するのって、すごく難しい。攻めすぎるとウケないし。
そのせめぎ合いがとても楽しかった記憶です。
この句を読んだときに、おお、これはエロしりとりと共通理念を持った俳句ではないかっ!!! と私は解釈したのでした。
絶妙なエロさ加減。耽美であり可愛らしくもあり、どことなくお上品。最高です。
「まくわ瓜頬ばりしたたる甘い汁」
エロしりとりで「まくわ瓜」って言っただけでも優勝ですよ!!!
ムーンサイクルさんの一句にはエロ連句的な感じでこの歌を。
天の川びしゃびしゃさせてダイナマイ
詠み人:akkiy☆さん
この句を読んだその場から、私の脳裏にはビキニを着た乙姫が…。
それから事あるごとに私の頭に浮かんでくるビキニの乙姫。
気が付いたら、この句を呟いている私。
完全にこの句に脳が乗っ取られておりました。
それほどに常習性のある句です。
「天の川びしゃびしゃさせてダイナマイ」
今大会で私の忘れられない一句となりました。
ご本人の記事を拝読しましたら、「ダイナマイ」はBTSの曲だそうです。
といわけで、ここにはBTSの曲を貼るべきなのかもしれませんが…
以前に天の川を旅するイメージで作った曲があるのでこちらをどうぞ。
隣人の怒声にサイレンと夏の星
詠み人:MITEI NARICO🔰さん
映画のワンシーンのような一句と思いました。
文字だけ見ると、俳句のリズムではなさげに見えるのですが、声に出して読んでみるとしっかり俳句なので おお!! となりました。
視覚と聴覚で、それぞれ別の意味になる句なのかもと憶測したりしています。
「隣人の怒声にサイレンと夏の星」
若いころに治安がよいとは言えない感じのところに住んでいたことがありました。
と言っても日本なのでたいしたことないのですが。
夏場はみんな窓を開けているので近所の音がよく聞こえます。
夜なんか特に。
怒鳴り声やら奇声やら、いろんな音がしてました。
そしてふと見上げた喧噪の空にチラつく小さな星。
そんなことを思い出しました。
MITEI NARICOさんの句にはこちらの曲を。
不安定な感じがあってるかなと思いまして選びました。
※タイトル後付けす
前髪がデコに這いつくばる炎暑
詠み人:野乃さん
これは私の憧れの「句またがり」。
同じ内容でたぶん五七五の区切れ目にあわせて詠むこともできるのだけど、崩しているところが現代的でいいなと思いました。
「デコ」という言葉を使っているところも好きです。
「前髪がデコに這いつくばる炎暑」
昨今の尋常ではない暑さがジワジワ伝わってくる一句でした。
野乃さんの句には、横スクロールで戦っている感じのこの曲を。
夏草や家を絶やすと決めた叔父
詠み人:鮎太さん
★決勝進出おめでとうございました!!
叔父さんの背中が見えるようです。
「夏草や」で草ボーボーの庭が連想され、人がいなくなった家までもが想像できます。
そんな叔父さんを見ている鮎太さんの想いも感じ取れるような。
「夏草や家を絶やすと決めた叔父」
情景の奥にある感情に触れることができる。
俳句の素晴らしさを再確認できる一句でした。
鮎太さんの句には、こちらの曲を。
ひとつの終わりと始まりの物語用に作った曲です。
ポーポッポ ぼんやり目覚める 昼下がり
詠み人:花すみれさん
この句には明確に季節を連想されるところがなかったりもするのですが、私的には猛烈に夏を感じました。
あの鳴き声。
子供のころ、ラジオ体操に向かう途中でいつも聞こえていて、何の音だ?と気になって気になって出所をいつも探していました。
鳩の声なのだと知ったのはだいぶ後になってからです。
それから大人になって、初めて独り暮らしした家のすぐ前に鳩小屋がありました。
で、夏休みに夜遊びして帰って来て昼まで寝ていると、あの声が聞こえてくるのでした。
「ポーポッポ ぼんやり目覚める 昼下がり」
いやまさに、この句の通りです。
そんな記憶を呼び覚ましてくれた一句でした。
花すみれさんの句から、けだるい感じをイメージして、こちらの曲はどうでしょうか?
元々雨のSEは入っていたのですが、ハトの声を追加してみました。
※タイトル後付けっす
以上です。
今大会もすばらしい個性光る作品の数々。
刺激受けまくりでした!!!
ありがとうござました。
★Youtubeのリンクはご自由にお使いください★
8/4 追記