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[ショートショート] 面影を追って [riraさんの歌詞から:創作タイム]
歌詞からストーリーを書く試みです。
なくしたものから 溢れた涙
ひとり歩く 道には褪せた
はらりとひとひら 落ちてきた花
踏切の向こうには、空
会いたいよ
いえないよな夕日が沈んで
最後まで 見ていたいんだ
星たちが眠れず 光だして
きみをいざなう夜
ひとりじゃないって
言葉はいらない
空のむこう 舟に乗って
きみを見つけた
『面影を追って』
君がこの世を去ってからいったいどれほどの年月が経ったのだろうか。
遠い遠い記憶の果てに、僕は君の顔も忘れてしまった。
覚えているのはその柔らかな歌声。
うごめく僕の黒い心をそっと癒してくれた。
僕は僕の醜さを呪ったけれど、君だけは僕を愛おしいと言ってくれた。
孤独な僕には君が全てで、僕は君に溺れていた。
そして僕の呪いはじわじわと君と蝕んで行ったのだ。
息を引き取るときに君は言った。
「どうか自分で自分を殺さないで」
僕はその言葉をバカみたいに守り続けた。
“生ける屍” である僕は死を選ぶこともできず、ただただ長い時を生きてきた。
時代は進み、文明が栄え、人間は月にまで行くようになった。
それでも僕は死ぬことができなかった。
そびえ立つビルディングの隙間にうずくまって、日々残飯を喰らって生き続けた。
そこらじゅうを走り回っている車や電車に飛び込めば、きっとこの身体も再生されないだろうと考えたが、君の言葉に縛られて、僕は死ぬことができなかった。
街には死者の魂が溢れていた。やがて僕はそれらを食べるようになった。
食べると魂たちは喜び消えて行った。
僕は幾千もの魂を食べ続けた。
やがて僕は “生ける屍” から “魂を食す者” となった。
僕は暴食の亡者と化して一万と八千五十九の魂を食べた。
最後の魂を食べた時、僕は眩い光に包まれた。
目もくらむほどの光だった。
その光は慈悲に溢れ、僕の全てを受け入れてくれているようだった。
そう、君のように。
僕は懐かしさに震えて泣いた。
ついに君が迎えに来てくれたのだろうと思った。
だが違った。
光の中に君はいなかった。
そこにあるのは、ひたすらの幸福感のみだった。
歩みを進めると、僕は光り輝く川辺に辿りつき、一艘の舟を発見した。
それに乗り、川を上った。
どこまでもどこまでも川を上った。
ここまま進めば君のいる場所へと、ついに辿りつけるのではないかと願い。
(おしまい)
ちょっとあとがき
riraさんの歌詞から、亡くなった人への想いと解釈してみました。
そんで、最近熱中しているアニメ『葬送のフリーレン』と『デッドマウント・デスプレイ』の世界観がごっちゃになった感じになってしまった…。
どちらも人間よりもはるかに寿命の長い者の想いを描いた物語です。
人間よりずっと寿命が長い生き物…というとファンタジーの世界のようですが、現実世界にもいます。
ゾウカメなんかは200年ほど生きますし、樹木の中には何千年、何万年?も生きるものも。バクテリア類に至っては不老不死だとか…。
彼らから見たら、人間の営みはどんなふうなのかな…なんてことをriraさんの歌詞から考えたりしちゃいました。
タイトルがなかったので、つけさせていただきました。
PJさん企画の『創作タイム』
投稿された歌詞からいろいろ作るという試みです。
よろしくお願いします。