[ショートショート] 懺悔と変化:ある植物のこと
花屋の店先に、小さな植物がひとつ売れ残っていた。
私はそれにサンと名をつけ家に連れて帰った。
サンは肉食だった。小さな虫を好んで食べた。
サンはどんどん大きくなった。
大きくなると、バッタなど大きな昆虫を食べた。
それでも足りなくなると、サンは魚や鶏肉を食べた。
私はサンが欲しがるものを何でも買ってきて与えた。
サンはみるみる大きくなった。
サンは犬や猫を欲しがった。
私は犬や猫を買ってきてサンに与えた。
そしてついにその日がやってきた。サンが人の子を欲しがったのだ。
私は途方に暮れた。だって人の子は売っていないのだから。
しかたないので私は人の子を盗んでサンに与えた。
人の子を食べるとサンは二択を提示してきた。
それには、「変化させる」「変化させない」と書いてあった。
私は「変化させる」を選んだ。
翌朝、サンが人の形になっていた。
「おいお前、俺の朝食を作らせてやってもいいんだぞ」
サンが初めて口にした言葉だった。
「べつに頼んでいるわけではないんだぞ」
サンは俺様系ツンデレ男に変化していた。
ああ、神様。私は懺悔します。
残り物には懺悔があるのです。
(491文字)
今回の表裏、どちらのテーマもタイトルにできるように書いてみました。
『可愛い子には変化をさせよ』
『残り物には懺悔がある』
たらはかに(田原にか)さんの『毎週ショートショートnote』に参加します。