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[ネコミミ花火 / あなたの物語に曲つけます] ヒロキの場合

ネコミミ村まつり:サブ会場『あなたの物語に曲つけます』の物語募集はは、本日15日いっぱいです
多少の遅刻は受け付けます。書いてる途中!という人はコメントください☆

ここでひとつ。せかっくなので私も物語を書いてみたいと思います。

先にこちらをお読みください。(4,000文字くらい)

このお話のB面的な物語です。



[ネコミミ花火の物語] ヒロキの場合…

★このお話は「あなたの物語に曲つけます」の対象には入れません。
その代わり、誰かテーマ曲作ってくれませんか?

※注意:若干グロいです。

 名前も知らない、ましてや話したこともない下級生の女の子がモジモジしながら何かを言おうとしていた。

 俺はこの時間が嫌いだった。

 相手にとっては一大事なのだから仕方ないとは思うのだけど、これから言われることはだいたい察しはついているし、それに対して俺がどう答えるのかは俺には分かりきっていることだ。どうせまた花火大会に一緒に行きたいというアレだろう。

 相手が本題を切り出すまでの気まずい雰囲気が、何度体験しても慣れなかった。

 この子もそうだけど、どうしてまたよく知らない奴と花火なんか見たいと思うのだろうか?

 …むしろよく知らないからかもな…。

 と俺は思う。俺の本当を知ったらこの子だって一緒にいたいとは思わないだろう。

「あ、あの、えと、今度の花火大会…一緒に行って欲しいんです…」

 下級生の女子はそういうと、泣き出してしまった。

「あたし…ヒロキ先輩に、ひっく、ちゅ、ちゅう、中学のころから、ひっく、憧れで…ぐす…一度でいいから、ひっく、一緒に…じゃないとあたし、しんじゃいますからっ!!」

 目の前の女子は泣きじゃくりながらとんでもない発言を繰り出してきた。

 …これは面倒な奴に絡まれてしまった…。断ってもオーケーしても面倒なやつだ…。約束だけして当日何とか口実をつけてバックれるか…。

「行けるかどうかわからないけど…」

 俺がそういいながら予定を確認するフリをするためにポケットから携帯を取り出すと、ヤンデレ女にその携帯を奪われてしまった。

「約束ですよ先輩。連絡先交換してください」

 そうして俺は無理やりこの子と連絡先を交換し、花火大会にも行く流れになってしまった。

 俺の連絡先を手に入れると、ヤンデレ女子はさっきまで泣いていたのが嘘のようににこやかになり、手を振って自分の居場所へと戻っていった。

 やれやれと気を取り直して下校の支度をしていると、ミキがクラスの女子たちと楽しそうに話をしながら帰っていくのが見えた。

 そういえば、ミキは誰かと花火大会に行くのかな?とチラッと思った。

 ミキとは高校生になってからあまり話さなくなってしまったが、斜め向かいに住む幼馴染である。

 彼女がいつもつるんでいるのは、彼氏など作らないタイプの女の子たちに見えるけど、人は見た目で判断できないものである。

 ミキにも彼氏とかいたりするのかな??

 そう考えると心の奥にチクリと何かがひっかかるような感覚がした。

 俺はその感覚を払いのけるように首を振るとそそくさと家に帰った。

 そして何の対策も立てられないうちに花火大会当日になってしまった。

 タイミングよくキスケの呼び出しでもあれば大喜びで手を汚しに行くのだけど、今日に限ってキスケから連絡はなかった。

 携帯を見るとヤンデレ女から何十件もメッセージが入っていた。

 これはばっくれたら酷いことになりそうだ…と思い、俺は諦めて出かけることにした。

 焼きそばとか汚らしく食べで幻滅してもらえればいいか…。

 渋々夕闇迫る道を歩いていると、浴衣姿のミキに遭遇した。

 慌てた様子で花火大会会場とは反対方法に向かって行こうとしている。

「あれ? ミキ? 何してんの?」

 声をかけると彼女はびっくりした様子で振り向いた。心配そうな表情。恐怖心すら感じられる表情をしている。

 そんなことより、俺はミキの浴衣姿に心奪われてしまった。

 久々にまともに向かい合った彼女はすっかり大人の女性のようになっていて、浴衣が似合っている。

 …最高にかわいい。と俺は素直に思った。

 俺にジロジロ見られていると気がついたのか、ミキは腕組みをすると仁王立ちなってイラつきを体全体で表現した。

「キスケが逃げちゃったんだよ。まったくこんな時に」

 ミキのその言い草が子供の頃そのままで俺はほっとしてしまった。

 それより、キスケが行方不明と聞いて俺は俺で腹立たしく思うところがあった。

 キスケのやつ…俺に連絡よこさないとは何事か?

 ミキにキスケ捜索を手伝おうかと提案したが、あんたはあんたのデートに行けと怒って行ってしまった。

 …ということは、やっぱりミキもデートだったのか?

 キスケを早く見つけてミキを安心させてやりたい気持ちもしたが、このまま花火大会が終わるまでミキにはキスケを探しててもらおうか…とも思った。

 ちょっと意地悪い考えだ。

 しかし、こちらは好都合。

 俺はすかさずヤンデレ女にばあちゃんが危篤と嘘をついてデートをドタキャンした。

 そのメッセージはすぐに既読になったが返事は来なかった。この子の処理はまた後日。

 俺は気持ちを切り替えてキスケに念を送った。

《おい、キスケ。どこにいる?なぜ連絡しない》

《新東さんの裏の林》

 キスケからはすぐに返事があった。

 その様子からすでに交戦中であることが窺えた。

 キスケのやつ、すぐ怪我するんだから勝手に行くなって…。

 俺は身勝手なキスケに腹を立てつつ、急いで新東さんちの方へと走った。

 途中でミキに遭遇しないか不安もあったが、さっきあいつは反対方向に走って行ったし大丈夫だろう。

 昔からミキは感が鈍い。キスケが不在であることはすぐに気がつくくせに、彼がどこに行ったかはいつも当てずっぽうだ。

 俺たちが一仕事終わらせるまでに見つかることはないだろう。

 新東さんちの裏庭に到着するとキスケは既に猫神の姿になり祟り神と向き合っていた。

 これは俺だけが知るキスケの真の姿である。この土地に代々受け継がれてきたネコミミ様のお仕事だ。

 キスケの飼い主であるミキもこのことは知らない。

 猫神つまりネコミミ様はこうして人間の生活の中に溶け込んでこの土地を守っている。

 俺はその使徒ってわけだ。俺が使徒になった経緯は話すと長いのでまた今度。

 キスケの本当の姿、猫神の姿は、獣人フェチなら泣いて喜びそうなネコミミ和装少年である。
 腰に大小の刀を差し祟り神と戦う。

 俺の役割はそれの後方支援と後処理である。

 祟り神は様々な容姿をしている。

 土地に溜まった念が集まったものや、使われなくなった古い建物や道具、誰にも知られずに死んだ生き物の魂など、発生源も様々だ。

 祟り神は放っておくとその場所に災いをもたらすので駆除が必要だ。

 今、キスケと向かい合い、ドロドロとした怨念を垂れ流している祟り神は、これまで見たこともない代物だった。

「キスケ、こいつ何だ?」

「わからにゃい。オイラも初めてみた」

 キスケが祟り神から目を離さず言った。幸いまだ怪我はしていないようだ。刀も抜いていないところを見るとまだ戦い始めたばかりなのだろう。

 祟り神はゆらゆらとその巨体をゆらしてこちらを威嚇していた。

 俺は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 なんだこいつは…。

 全体的に紫色の濃い怨念に覆われて、そして顔は…烏と猫が混ざったような容姿をしている。

 体からは黒い羽がびっしり生えていて、その間から無数の小さな人間の手のようなものが突き出ていた。それらがモゾモゾと勝手に動いて気持ち悪い。

 下半身はビロビロした肉色のひだが幾重にも重なって、どうにも卑猥なものに見えて仕方なかった。

 まるで女性器をいくつもつけているような…。

 それがこちらに向かってネチネチと音を立てながら開いたり閉じたりしていた。

 こんな気味の悪いやつは初めてだ。

「ヒロキ、詠唱たのむにゃ」

 キスケに言われて俺は相手の動きを鈍らせるための詠唱を開始した。

「かしこみかしこみももうす、みこみみさま、ねこみまさま、それはネコミミをかじるようなもの、その、おこころをもて、そくばく、そくばく、なんなりと」

 俺が言い終わると、祟り神が唸り声を上げてその場に拘束された。

 見た目は超絶不気味だったが普通の祟り神のようだった。

 祟り神が固定されたのを確認すると、キスケは刀を抜きいつもの口上を述べ始めた。

「吾輩は猫神である。名をキスケと申す。我が名においてお前を一刀両断浄化致す。覚悟の程はよろしいか」

 キスケは形ばかり相手の反応を伺うと、何のためらいもなく刀を振り下ろし、文字通り祟り神を縦に真っ二つに切り裂いた。

 祟り神の肉が切れる音がして、それの体は糸を引きながら二つに割れた。

 生臭いような汗臭いような独特の臭いがたちのぼる。

 これでいつもは終わりなのだが、今回は続きがあった。

 割れた祟り神の身体の中から何人もの裸の女たちが這い出してきて、きゃーとかわぁーとか言いながら四方八方へと走って逃げて行ったのだ。

 これには俺もキスケも驚いて固まってしまった。

 祟り神からこんなものが出てくることは今までなかったのだ。

「何、いまの?」

 我に返り俺が言うと、キスケも首を振って心当たりがないことを示した。

「わからにゃいけど、祟り神の核の一種なのかな。見てくれないか」

 俺は頷いて祟り神の残骸に近寄り、パックリ割れた切断面を確認した。そこには見事な核がランランと輝いていた。祟り神の核は虹色に輝く宝石のようなものなのだ。

「核は残ってるぞ」

 俺は祟り神の肉塊から核を取り出すとキスケの方へと転がした。
 キスケはそれを刀で突いて粉々に壊した。

 俺は他に残っているものがないか、祟り神の体内に腕を突っ込んで掻き回し確認した。

 溶け始めた祟り神の肉がグチャグチャと音を立てて気色悪かった。祟り神のビラビラした下半身にどうしても目が行ってしまって嫌になった。

「核は以上だ」

 しばらく祟り神の体内を漁ってから、俺は結論づけて言った。

「どうする? さっきのヒト型追う?」

 俺が振り返って聞くと、キスケは首を横に振ってため息をついた。

「もう限界にゃ。そいつを食ってくれ」

 俺は頷くと、真っ二つの祟り神の肉を素手で引き剥がすとムシャムシャとそれを食べた。生ゴミのような臭いが口の中に充満する。

 何体食っても慣れないこの味…。

 猛烈に拒絶反応をする胃を宥めながら飲み込む。

 肉を飲み込むと俺の中に祟り神の情報…遺伝子見たいなものが入って来た。

 それはこの祟り神の由縁を表すものだ。

「こいつは…成就への執念だ。花火大会の」

 俺が受け取った情報をかいつまんで説明すると、キスケは頷いて懐から浄化の護符を取り出して俺に手渡した。
 浄化の護符を受け取ると俺は穢れた両手と口元を拭いた。

 そうこうしているうちにキスケはみるみる猫の姿へと戻ってしまった。猫神の姿を保つのには相当な力を使うらしく、せいぜい十分くらいしか持たないのだ。

「さっきの逃げて行ったやつは核ではにゃいだろう。そのうち勝手に消滅する」

 キスケは前足をぺろぺろしながら言った。俺はキスケを抱き上げるとそっと背中を撫ででやった。

「ゴロゴロゴロゴロ…そう言えば、ヒロキお前、今日はミキとデートだったんじゃ?」

 それを聞いて俺は思い出した。

 しまった!ミキ!

 時間を確認すると花火大会まであとわずかだった。

 今キスケを連れて行ったら、ミキは彼女のデートの相手の元へと行ってしまうだろうか…。
 俺はまたそんなことを考えてしまった。

「いや、ミキのデートの相手は俺じゃないよ。それにミキはたぶん、今もお前を探してる」

「にゃんと?デートの相手はお前じゃにゃいのか?浮かれてたからてっきり…邪魔しちゃいかんとオイラ気を使ったのに」

 とりあえず、ミキのところに行こう…。

 そう思ったが、自分がミキの連絡先を知らないことに気がついた。

「キスケ…いまミキどこにいる?」

 それを聞くとキスケは呆れたようにあくびをすると「神社」とひとこと言った。

 俺はキスケを抱いたまま神社へ向かった。

「お前にゃ、ミキの連絡先くらい知っとけよ。早くモノにしないと本当に他の男に取られちゃうぞ」

 それは嫌だと俺は思った。

 いい加減自分の気持ちに素直になってもいい頃かもしれない。
 俺は自分でも驚くほどにミキが恋しいと思った。

 あの気味の悪い祟り神に触れたせいもあるかもしれない。渦巻く欲望に少し当てられたか…。

 今はとにかく一刻も早くミキに会いたかった。

 神社に行くと階段の下にミキがいた。ミキは俺とキスケを見ると駆け寄ってきた。

 彼女の目にはキスケしか映ってないようだった。

 俺のことは見えてもいないのか…と少し寂しく思った。

 ミキがキスケを受け取ろうとするとキスケは嫌がって俺にしがみついた。

 俺はキスケの無言のメッセージを受け取った。

(仕留めろヒロキ…)

 もう少しで花火が始まる。花火を見るんだミキと俺で。

 他のやつのところなんかに行かせない。

 俺はミキの持っていた水をもらってグビグニ飲むと、キスケを抱いたまま、意を決して神社の階段を登り始めた。

「ちょっとどこいくの?」

 ミキが言うとの同時に後ろで花火が上がり始めた。

 ドンドンドンと胸に響く花火の音が俺の背中を押してくれているように思えた。

(おしまい)


ネコミミ花火のエピソードです。
自分の企画と合体させたので少々グロくなりました。すみません。


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