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時間をこえるものと、時間がやわらげるもの

Eyes of the storm/ポールマッカートニー写真展

 9月に六本木の森タワーに観に行った。ここに展示されていた写真の数々は、ポールがどれほどジョンのことを気にかけていたかを、どんな言葉よりも激しく語っているように感じた。

 カメラのレンズは、そのまま撮影者の視線で、「誰を見ているか」だけでなく、「どんなふうに見ているか」も伝えているから。そして、何十年経ってもここに写っているジョンはとてもかっこよくて、魅力的だ。

 ほかのどのメンバーよりも至近距離で、無防備に撮影されていた写真の中のジョンが、アメリカに渡って世紀の大成功を収める中で、だんだんと人混みにまぎれて、ファインダーをのぞくポールから遠ざかっていく様子が手にとるようにわかったのは胸が痛かった。あの頃ポールはジョンにどんな気持ちを抱いていたのだろうか。それでも、マイアミでの束の間の休息ではしゃぐジョンの姿をおさめた写真を見てなんとなく救われる気がした。

 その後のビートルズのことを思うと、どうにかバンドを蘇生しようと奔走したポールはいじらしいほどだし、さらにその十年後のジョンとの突然の別れには言葉もない。
 でも、「ただ昔を懐かしむために写真を見返すのもいいものだよね」という趣旨のことを、この写真展についてポールが語っているのを聞くと、せめて時間が和らげる痛みもあるのかも知れないなとは思う。(2024.11.15)

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