ファミコン版ドラクエ2は難しい!でも何故?
現在と比べると、ファミコンはとにかく難しいゲームが多いです。
それは当時から既に国民的RPGであり、シリーズ第2作目にして240万本も売り上げたドラゴンクエストⅡでさえ、例外ではありません。
実際にプレイしたことがなくても、終盤の難所「ロンダルキアの洞窟」やブリザードが繰り出すザラキなど、今作の難しい点はいくつも知っているという方は少なくないでしょう。
しかしながら話題に上がりやすい表面的な部分を把握している方は多くても、ゲームとしての具体的な仕様や、そもそもの難しさの根本的な原因は何だったのか…正確に知る方は果たしてどれだけいらっしゃるでしょうか。
ファミコン版ドラクエ2が難しい真の理由…、それは同シリーズでも類を見ないほどの、「不安定さ」にこそあったのです。
◆モンスターの一部の攻撃は能動的に防ぐ手段がない
このゲームでは、さまざまなモンスターが実に多彩な攻撃を繰り出してきます。しかしそれらの多くは、装備品や防御コマンドで十分な対処が可能です。
例えばゲーム中盤で購入できる魔除けの鈴があれば、こちらを眠らせてくるラリホーや呪文を封じてくるマホトーンは、完全ではありませんが90%の確率で防いでくれます。(装備なしの状態でも50%の確率で回避)
それ以外にもベギラマやイオナズンといった攻撃呪文は、魔法の鎧などの防具でダメージを軽減できますし、先の防御コマンドでも攻撃呪文の威力は半分に抑えてくれるのです。
このように、ある程度は被害を自発的に防げる一方で、対処不能な攻撃も少なくありません。
代表的な例として、中盤から登場するドラゴンフライが使ってくる炎は、なんと防御でダメージをまったく軽減できないのです。
これは終盤に登場するドラゴンやフレイムの炎も同じで、防ぐ手段は水の羽衣など、ごく一部の防具で半減するのみとなっています。
一方で、バブルスライムが使う毒攻撃や、うみうしが使う睡眠攻撃は、防御でダメージを減らせるものの毒や睡眠といった特殊効果は防げません。
どうにかダメージを0に抑えない限りは、状態異常を喰らう確率が下がらないのです。
この辺りは後続の作品でも共通している仕様なので、一見して特に問題なさそうに見えます。
しかし本当に恐ろしいのは、前述の睡眠攻撃を今作のラスボスも使ってくることなのです。(!)
レベルや防具にもよりますが、通常の単体攻撃でも全体攻撃の炎でも、だいたい100前後のダメージを喰らわせてくる中で、更に眠らせてくるのですから、たまったものではないでしょう。
他にもこちらのMPを減らしてくる不思議な踊りや、確率で即死させてくる呪文のザラキなどは、装備でも防御でもまったく防ぐことができません。
ザラキに関しては、終盤に群れを成して出現するブリザードに苦しめられたという方も多いのではないでしょうか。即死呪文を防ぐアイテムも、登場するのは次回の3からになっており、2の時点ではわずかでも確率を下げる手立てすらまだ存在していないのです。
特筆すべきは、このファミコン版のみ不思議な踊りの仕様が後続の作品と大きく異なっている点でしょう。
その効果はなんと「最大MPの約1/4を減らすことがある」という恐るべき性能で、極端な話がこちらのレベルアップでMPが上がるほど、不思議な踊りの威力も比例して上昇していくというとんでもない仕様となっております。
不思議な踊りの聖地として名高い、「海底の洞窟」でMPを一度に20~30くらい持っていかれたプレイヤーの方も多かったのではないでしょうか。間違いなく、シリーズ中でも最強の性能です。
そして回避不能な攻撃の最たるものとして、自爆呪文のメガンテがあります。
ゲーム最終盤のロンダルキア台地にて、最大3匹が同時に出現するデビルロードの得意呪文です。喰らうと文字通り、一撃で全滅します。
後のシリーズでは防具で防げたり、あるいは特定のキャラクターにメガンテへの耐性が設定され避けられるようにもなった呪文ですが、ドラクエ2のファミコン版にはそんな仕様は一切ありません。必中です。敵に使われた時点で全滅が確定します。
どれもこれも対処が難しく、全滅も視野に入れなければならない攻撃ばかりです。
そう考える方も多いかもしれません。それはその通りです。どんな強力な攻撃も、使ってくる前に倒すなり封じるなりすれば怖くはないでしょう。
しかし、そうはいきません。ファミコン版ドラクエ2はとある仕様のせいで、先手を打って倒すこと自体が非常に困難なものになっていたのです…。
◆敵も味方も素早さ順に行動してくれない
…恐らくこれが、ドラクエ2を高難易度たらしめている最大の理由ではないでしょうか。
このドラクエ2、敵味方それぞれに素早さの値がちゃんと設定されており、戦闘の際にはその数値の大きさに従って行動の順番が決定します。
ところが、このファミコン版独自の仕様により、なんとこの素早さがほとんど機能していません。
厳密に言えば、完全に素早さ通りに行動するわけではなく、元の素早さに対して乱数(ランダム要素だと思ってください)が合算される仕組みになっており、素早さがある程度近ければ、多少遅いキャラクター(モンスター)でも先に動ける可能性がある。これがドラクエ3以降の、基本的な仕様となっています。
そしてこのドラクエ2、何が問題かというと、ファミコン版では戦闘中1ターン毎に敵も味方も全員に0~255の乱数が付与され、その値が高い順に行動するようになっているのです。
これによって一体何が起こるのか。
例えばローレシアの王子は最大レベルの50で素早さが140、最弱の敵であるスライムの素早さは3に設定されています。
ここで戦闘中に、ローレシアの王子に付与される乱数が1で、スライムに付与される乱数が139だったとしましょう。
すると王子の最終的な素早さは141、スライムの素早さは142と計算され、成長しきった王子に対してスライムが先に動くということが平然と起こり得るのです!
そして恐ろしいことに、この状況はゲーム開始からクリアまで一切変わりません。
レベルを上げてこちらの素早さが上がり、乱数の影響が多少軽減したところで、先に進めば当然敵も強くなり、あちらの素早さも上がっているからです。
実際にプレイした皆さんの中にも「なんか敵の方が妙に速いな…」と感じた方がいらっしゃるのではないでしょうか。原因はこれです。
乱数の影響については、敵も味方も条件はまったく同じなので、一見するとイーブンなようにも見えます。
しかしこちらは最大で3人なのに対し、向こうは4体以上は当たり前。多い時には7体くらい同時に出てきます。数で負けている以上、先行を取られる確率は、体感としてはもっと高いかもしれません。
なのでブリザードの群れに対しても、「ザラキが来る前に倒せばいいや」などという甘えた考えは捨てましょう。
間違いなくこちらが先に殲滅させられます。(実際は防御でも装備でもどうにもならないので、攻めるしかないのですが…)
◆仲間2人がだんだん役に立たなくなる
不安定さを助長している原因といえば、仲間2人の存在も大きいでしょう。
どんなに敵の攻撃が苛烈で、先手を取りづらかったとしても、戦って勝つしかない以上、やはり3人の力を合わせて倒すしかないのです。
ですが、それもまた難しいと言わざるを得ません…。
最強武器が鉄の槍なせいで、打撃面でまったく貢献できないサマルトリアの王子に、低防御力ですぐ戦闘不能にされてしまうムーンブルクの王女。ローレシアの王子と比較して、それぞれ別方向の貧弱さが話題になる仲間2人ですが、それでもまだ中盤までは活躍の機会があるのです。
具体例としては、4~5匹まとめて出現する対ドラゴンフライ戦でしょうか。サマルトリアの王子にいかづちの杖を振るわせて、ムーンブルクの王女にバギを使わせれば、意外なくらい余裕をもって1ターンで処理できてしまいます。
実はドラゴンフライに限らず、人面樹やバシリスクなど、ちょうどこの辺りの敵は攻撃呪文に無耐性で、なおかつバギ2発分で倒せる敵も多いので、オススメの戦法だったりします。
しかしそれも、あくまで中盤までの話です。後半に入れば、敵のHPも100を優に越えてくるため、まず火力が足りません。
ベギラマやイオナズンで代用しようにも、ベギラマは設定ミスなのか、使っても敵全体に20程度のダメージしか通らず、そもそも後半の敵は全体的に呪文への耐性が妙に高く、撃っても効かない敵が圧倒的に多いのです。
終盤に複数で現れて炎を吐いてくるドラゴンも、恐ろしいことに50%の確率で攻撃呪文が効きません。
攻撃以外の呪文で補助しようにも、ファミコン版のスクルトやルカナンは、元の守備力に対してどちらも1/8程度しか上下しないため、ほとんど誤差のような効果しか発揮しません。何度も重ね掛けして、ようやく本来の値の1/2くらいまで守備力を上げ下げすることは可能ですが、少なくとも雑魚戦では、その前に戦闘が終了していることでしょう。
こうなると終盤は、防御か回復呪文くらいしかやることがなく、少なくとも火力や補助ではまったく貢献できません。
敵の攻撃が苛烈を極めるロンダルキア台地において、ダメージソースがローレシアの王子1人だけというのは、あまりにも厳しすぎるのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したのはあくまで一例であり、細かいものを挙げていけば本当にキリがないのですが、特に難しさに拍車をかけていると言える代表的なものをピックアップいたしました。
なお「難しい」というよりも、「面倒くさい」といった類のものは、今回あえて省略しております。復活の呪文とか、ゲーム内に地図がないので地理が分かりづらいといった部分ですね。
このあたりは今ならスマートフォンやパソコンでいくらでも対応できますし、あくまで現代の感覚で見ても変わっていない難しさに絞ってお話しさせていただきましたことを、付け加えさせていただきます。