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子育てが終わった今だから言えること

子どもを持つ親に世間は非常に冷たい。

しかし、自らが子育て現役中にそれを言えば、必ず叩かれるのがオチだった。

「今どきの親は子どもに何かあるとすぐ人のせいにする」

「そういうことは立派に子どもを育て上げてから言え」

「今の親は根性が足りない」

「若くして子どもを産むとろくな親になれないものね」

などなど。

そのような連中に対し、本当はもっと声を上げて怒りたかった。

しかし、子どもをまともに育て上げられるかどうかわからないうちは反論しようがない。もし何か悪いことが起きれば「ほら見たことか」と言われるから。

そんなわけで、いつのまにか何も言えなくなった。

それからン十年。

今や私の子どもは経済的自立を果たし、それぞれの職場でそれなりに頑張っている。

そんな子どもたちは、世間から見てもそう悪くはないらしい。周囲の小うるさい年配の男女から(多分おせじだろうが)お褒めの言葉を頂く。

また、年が行った人間が幅を利かせるこの日本において、私自身も年齢的に偉そうなことが言える年代になった。

立派に子どもを育て上げたかどうかはわからないが、少なくとも世間に出して恥ずかしくない子どもを育て上げた今の私だからこそ、小うるさい年配者の批判をはねのけて言えることがある。

「今の現役親世代はもっと声を上げて怒っていい!」

超ベテランの先輩ママだって、そんなに立派な子育てをしてきたわけじゃない。むしろ、今の母親よりもっとずぼらでいいかげんな子育てをしている親の方が多かった。それを棚に上げて何をいわんやだ。

そもそも、今70~80代が現役子育て世代だった頃は、乳幼児を家に置いて買い物に行くなんて日常茶飯事だった。当時の母親の多くは専業主婦だったにもかかわらずだ。

私が現役だったころは、小学校低学年が同じ感じだった。今思えば、なんと恐ろしいことをしていたことか。

また、昭和40年代の子どもは、幼稚園や保育園に自分で通うのは当たり前、私も車がぶんぶん通る大通りを歩いて徒歩10分の幼稚園に通っていたものだ。

さらに言えば、子どもが病気になっても「寝てりゃ治る」と病院にも行かない親などごまんといたし、それが原因で死んだり障害が残ったりした子どもだって、今よりずっと多かった。

今の基準で言えばそれは明らかに親(母親)の手抜きだと言っていいだろう。そう考えると、私たち先輩母たちだって、ろくな子育てなどしていなかったのだ。

それを指摘すれば、「昔はみんなそうだった」「時代が違うから仕方ない」と言い訳するシニア世代も多い。

でもそういう言い訳は、同じ先輩親としてかなりみっともないと思う。自分も時々そちらの人間になりかけるので、ホント気をつけなければ。

それに「時代が違う」という言葉、そっくりそのままシニア世代にお返ししてもさしつかえないだろう。今の時代には今の時代に合った子育てがあり、それは昔とは天地がひっくり返るほど様変わりしているのだ。

そんなみっともない言い訳をしている親の子でも、まがりなりに自立している人ほんと優秀。親が立派に育てたからそうなったのではなく、その親がたまたま運よくそういう子どもに恵まれただけなのだ。間違っても自分の功績などと思うなかれ……だ(半分自戒)

私もその一人。親としては全くダメダメで、とてもとても偉そうに現役パパママを批判できる立場にないほどのダメ母だ。(それでもまともに育ってくれてありがとう子どもたちよ)

もっと悪いのは、私の年代以上の父親。ダメ親どころか親ですらない、「名ばかり父親」だらけだ。

子育てをことごとく母親に丸投げし、子どもの節目の記憶すらおぼつかない「父親」も多い。

そんな「名ばかり父親」が今の子育て世代を「親として云々~」などと言いうのは片腹痛すぎる。へそでお茶を沸かせるぐらいちゃんちゃらおかしくてたまらない。

私たち年配世代の親は、そのような時代のことをよくも棚に上げて若い親を批判できるものだ。少しは己の黒歴史を振り返れって反省しろ!と思う(自分も)。そうすれば、現役子育て世代にもっと温かい目を向けられるはずだ。

確かに子育てに関する制度や設備は、私たちが子育てしていた頃より格段に良くなった。

しかし、子どもを持つ親への態度は、昔よりも格段に悪くなったと思う。こう言っちゃなんだが、私が今の時代に現役子育て世代に戻りたいか?と問われたら、間違いなくNOだ。というか、こんなに子どもやその親に冷たい時代に子どもなど産みたくないというのが本音だ。

そんな身勝手な大人ばかりの社会になったのは、おそらく私たち上の世代がおかしいと思っても声を上げてこなかったからだ。私自身、冒頭の言葉を言われたとき、下手に空気を読んでしまい流れに逆らわないことを選んでしまったことを深く後悔している。

せめて、子育てが終わった上の世代として、現役子育て世代の努力を批判するようなことはせず、可能な限りその味方にならねばと思う今日この頃だ。

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