【回想】初めての「性被害」と「二次被害」の話
最近自らの性被害をカミングアウトする流れになってきている。
それをきっかけに、自分が何度も性的に不快な思いをさせられた経験が「性被害」であったことに今更ながら気づいた次第だ。
私が遭った性被害の中にレイプやレイプ未遂は含まれていない。当時はそこまでいかないと「その程度のことで」と周囲に言われるのがオチだったので、私自身も自分に起こった性的に不快なできごとを性被害だと認識していなかった。いや、無意識にそのような認識を持ってはいけないと思っていたのかもしれない。
しかし何十年も経過した今「あの時のあの経験はやっぱり性被害だったのだ」と認めてもよい時代になっている。
それを受け、私が過去に遭った多くの性被害の中で最もショッキングだった初めての「性被害」と同日に起きた「二次被害」の話をしようと思う。
初めての「性被害」は高校生の時
初めて私が「性被害」に遭ったのは高校生の時だった。
休日私服で書店に行き、平積みの漫画雑誌を立ち読みしていた時、突然背後に人の気配を感じた。
休日で漫画雑誌コーナーは混みあっていたので、最初は雑誌目的の誰かが背後から来たのだろう…くらいに思っていた。
ところが。
その直後いきなり誰かが背中にべったりと密着してきて、私の臀部に硬い何かが当たったのを感じた。
そんな経験は生まれて初めてだったので、「硬い何か」が勃起した男性器であることに気付くまでに数秒かかってしまった。
その間に男性器はさらに硬く勃起してぐいぐい私の臀部に押し付けられ、私の体は背後から男に羽交い絞めにされてしまった。
その瞬間、思考がフリーズしてどう対処すればいいかわからないまま体が硬直し、しばらく微動すらできなくなった。
私が男にべったりと抱きつかれていた場所はレジのすぐそばだったが、レジの店員は私が救いを求めてアイコンタクトをしても何も反応しなかった。周囲に大勢いたはずの客も遠巻きに私を眺めるだけで、やはり助けてはくれない。なんてこった。
かくして、もはや自分で事態をなんとかするしかないと我に返った私は、ようやく無理やり体をひねって自分を羽交い絞めにしていた男を振り切ってにらみつけた。
そんな私を見て男は一言発した。
「気持ちよかったでしょ?」
その言葉に背筋が凍った私はすぐ書店から出て家に飛んで帰った。
あの時の気持ちの悪い男の顔と背中に感じた人の体温、勃起した硬い男性器の感触が体から離れない。また、その姿を見て見ぬふりをした店員や客のふるまいもホラーでしかなかった。
しかし、家に戻るとさらにショッキングなできごとが私を待ち構えていた。怒り狂った母によるセカンドレイプ(二次被害)を受けてしまったのだ。
初めての「二次被害」は母からだった
這う這うの体で家に帰った私は、書店で性被害を受けたことを母に話した。当然、被害を受けた私に寄り添う言葉を期待して…
ところが。
私の話を聞くなり母は私に向かって怒り狂い、ありとあらゆる暴言を投げかけた。ここでは思い出せる限りの暴言を箇条書きで記したい。
・どうせ本に夢中になってぼんやりしていたんでしょ!
・ぼーっとして隙を見せるからそんな目に遭うのよ!
・なんですぐ逃げなかったの?あんたバカ?
・本当は男の言う通り気持ちよかったから逃げなかったんじゃない?
・男に隙を見せて男性器を押し付けられるなんて恥ずかしいと思いなさい!
・あんたがそんなにバカだと思わなかった!
・私はいつも触られないうちに逃げたわよ!
・世間体が悪いから今日のことを他の人には絶対言っちゃダメよ!
・ぶくぶく太って醜いから襲ってもいいと思われたのよ!
……ほかにも色々な言葉で罵倒されたが、あれから40年くらい経っているのでさすがに全部は覚えていない。でも、上記だけでもひどい罵詈雑言が並んでいるので、全部覚えていたら私はおかしくなっていただろう。人間が忘れる生き物でホントによかったわ。
当時は女性がちかんや露出狂などの性被害にあっても「お前に隙があったから悪い」と言われる時代だったからある程度しょうがない面はある。しかし、実の娘が性被害を告白したのにこの反応をする母親ってどうよ?これって今で言う毒親ですよね?
母親には物心両面でお世話になってきたのであまり恨み言を言いたくない。でも、「ぶくぶく太って醜いから~」と言われたのをきっかけにおそらく一生完治しない食べ吐きの摂食障害が始まったのも事実だ。
40代で摂食障害の治療を始めた際にそのことを母に告げたら「人のせいにするな」と一蹴されたが、今になって「あの時は私も気が動転していたのよ」と言い出したから少しは責任を感じているのだろう。知らんけど。
性被害より母の反応の方がショックが大きかった
性体験どころか男女の清いお付き合いすら未経験だった高校生時代に経験した二つの性被害は、その後の私の人生にずっと暗い影を落としている。
性被害そのものでショックを受けたことは言うまでもない。しかし、それよりもショックだったのが子どもの味方であるべき母に二次被害を受けたことだった。
そのことは今思い出しても胸が痛い。思い出す度に高齢で心身が弱った母に罵詈雑言をぶつけそうになる自分を必死で抑えている。もちろん今これを書いている瞬間も。
その経験から、私は絶対母と同じことはしないと誓い、今日までそれを実行してきた。身内が遭った性被害については、加害者を震え上がらせる対応をしたこともある。
だからこそ声を大にして言いたい。
性被害は加害者が100%悪い。
被害者には何の落ち度もない。
また、親である人たちにも声を大にして言いたい。
子どもが性被害にあったら100%子どもの味方になってください!
万が一子どもが性被害に遭っても、親が全面的に味方になって子どものショックや辛い気持ちを受け止めれば、私のように何十年も自分を傷めつける子どもや自ら命を絶つ子どもを一人でも減らせる。そのことを心から祈るばかりだ。