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結婚以来初めて自分の意思で買った仕事用マイパソコンをめぐる話

パソコンはライターが仕事をする上で必要不可欠な道具ですが、現在使用中の仕事用のパソコン(購入時価格約10万円)には特に深い思い入れを持っています。

そのパソコンは長年の結婚生活で初めて事前に夫の承諾を得なかった大きな買い物です。また、ライター収入で初めて手に入れた自分だけのパソコンでもあります。

結果的にはそれを買ったことを機に私自身の物事への考え方が大きく変化し、仕事においても人生においても以前は予想だにしなかった新たな方向に大きく動き始めています。

そこで、子育て後の女の生き方の一例として、専業主婦だった私が自分の意思で仕事道具のマイパソコンを買うまでの経過や、マイパソコンを買った後に自分の中で生じた大きな変化についてお話したいと思います。

おそらく今回は長い文章になると思いますが、興味を持たれた場合は続けてお読みください。

1)自分のためにお金を使うことに強い罪悪感を覚えた専業主婦時代

結婚して仕事をやめてからずっと専業主婦だった私は、自分のために大きな買い物をすることに強い罪悪感を覚えていました。

夫の名誉のために言っておきますが、夫がそれを強要したわけではありません。ただ、自分の収入がない私が夫に無断で大きな買い物をすることが自分で許せなかったのです。(小さな買い物は支障なくできましたが)

それもあり、開業届を出してから3年は家族共用のパソコンで仕事をしていましたが、納期が迫っている時に夫や子どもが休みで長時間パソコンを使うとずいぶんやきもきしたものです。

そういう時はいつも仕事を家族の邪魔が入らない夜中や早朝に行い、睡眠時間を削って記事を執筆していました。

2)戦前生まれの両親の影響で古風なジェンダー観を持っていた

若い世代からすれば、そのような私の考えはさぞかし馬鹿げていることでしょう。事実、先鋭的なフェミニストの知り合いからは「あなたのような人が女性の地位を大きく下げている」と何度か激しく叱責されたこともあります。おそらくそれは事実でしょう。

しかし、私は戦前生まれの両親の影響で、「女は仕事より家庭」「嫁いだら夫に従え。老いては息子に従え」という古風なジェンダー観を持っていた人間です。両親もまたそれを実践していましたので、どこかで反発を覚えながらもそれが正しい夫婦のあり方なのだと思っていた節があります。

だから結婚生活では時折夫に反発しつつも、最終的にはほぼ全面的に夫に従って来ました。

3)私の仕事を反対した夫も古いジェンダー観の持ち主だった

仕事に関して言えば、夫は私が外で働くのを非常に嫌がりました。当時の男性には多かった「男は妻子を養ってなんぼ」といった古いジェンダー観に夫自身も持っていたのだと思います(たぶん今も)。

子どもが小さい頃生活が大変で仕事を決めてきた時には、「子どもがいるのになぜ働くんだ?その職場に電話して断るように」と夫に怖い顔で言われて仕事に就くのを断念しました。

以来私は、長きにわたって夫の強い反対を押し切って働くことはしませんでした。

とはいえ、子どもが大学の頃は正直生活が苦しい時はありました。ただ、幸い夫婦ともに結婚前からの十分な貯えがあったので、それを切り崩すことでなんとかできたのは確かです。そのこと自体はとてもありがたいことだと今も思っています。

4)子どもの自立でそれまでのジェンダー観が大きく揺らいだ

かくして、私は非常に長い年月を専業主婦として生きてきました。また、女性だからこれからの人生も家族のケアや親の介護を最優先させて生きていくのだと本気で思っていました。それでも生活が苦しければ、高齢でも雇ってもらえる何らかの仕事に就くしかないと考えてもいました。

その気持ちが大きく揺らいだのが子どもが自立したころです。

正確には大学院生だった上の子が就活を始めた頃ですが、その頃ちょうど更年期障害で精神的に不安定になり、それまでおとなしく(?)従ってきた夫の一挙一動にカチンと来ることが激増していました。

それまでは、夫に仕えることや家族のケアを最優先とし、自分のしたいことは家族のケアに支障がない範囲で楽しむ程度にとどめていました。それでも子育てという大きな仕事があったのでそれなりに充実した毎日を過ごせていたと思いました。

しかし、子育てが終わった後のことを考えた時ぞっとしたのです。私から子育てを取ったら何も残らないことに気づいたからです。

また、家庭を顧みず仕事に没頭していた夫(私の年代の夫はたいていそうだと思います)とあと30年余りを共に過ごすことを考えた時、性的役割分担で完全に分業状態、お互い仕事に子育てに忙しすぎてろくに深い話もしてこなかった夫婦がどうやってこの先の人生を共に過ごせばいいのだろうか?と思うとまたぞっとしました。

その時初めて、私は自分がこれまで素直に受け入れてきた古いジェンダー観に疑問を持ち始めたのです。

5)結婚以来初めて「夫に反対されても働きたい」と強く思った

……このままでは自分がダメになる。

そう思った私は子育てに変わる新たな生きる道を探さねばと模索した結果、たどり着いたのが「夫に反対されても働きたい」という強い思いでした。

働けば経済的な自由を再び取り戻せますし、老後資金の足しにもなります。それに仕事によって視野も広がりますから、夫の一挙一動ばかり目に入ってイライラすることも減るに違いないと思いました。

元々働くことは嫌いではありません。すでに複数のボランティア活動や短期の仕事はやっていました。また、夫は定年が近いこともあり、私が継続的に働くことに強く反対しなくはなっていました。

そのような状況から「今が仕事を始めるチャンスだ」と思ったことは言うまでもありません。

6)紆余曲折の就活を経て在宅ライターにたどり着く

そこでさっそく仕事を探しましたが、やはりアラフィフでの再就職は厳しいと実感せざるを得ないことが続きました。また、再び外で働き始めるにはあまりにもブランクが長すぎて、心理的にも再就職への第一歩を踏み出すのに苦労したことは事実です。

もっと悪いことに、その間に更年期障害と持病の悪化で体調が崩れ、それ以上就活を続けるのが難しくなりました。

そこで、まずは体調が悪くても家でできそうな仕事を探そうと思い、今も続けているボランティアの取材ライターや、昔2年ほどやっていた育児情報誌編集の仕事を生かした仕事を探しました。その結果、クラウドソーシングでそのような仕事にありつけました。(搾取案件でしたが)

その後、元銀行員の経歴でオファーが来て良い条件で仕事が来るようになり、その後さらに良い条件の仕事に恵まれて今に至ります。

銀行を辞めてからだいぶ経っていますが、幸いにも基本的な金融知識は意外としっかり記憶に残っていました。また、銀行員時代の友人知人とのつながりや、仕事を通して学べる新たな金融知識にも助けられる形で、今の仕事が成り立っています。

7)それでも「自分の意思でパソコンを買う」ことへのハードルは高かった

「そろそろ自分専用の仕事用パソコンが必要ではないだろうか?」と思ったのは、ライターの仕事が軌道に乗り始めた約3年前です。その時点で自分にその財力とそれを買う正当な理由があることは理解していました。

しかし、それでも「自分の意思でパソコンを買う」ことへの心理的ハードルは高い状態が続いて中々買えませんでした。そのレベルのものは長年ずっと夫に伺いを立ててから買っていたからです。

また、夫の理解の範囲を超える「Webライター」なんて私がやっているものですから、それなりに収入があっても夫がそれを仕事として中々認めませんでした。

そのせいか、一度だけ「自分用のパソコンが欲しい」と口にした時も「家族共用のパソコンがあるのになぜそんな無駄遣いをするのだ?」と言われてすごすご引き下がりました。自分でもそういう気持ちがあったものですから。

ただ、仕事が年々増え、仕事に費やす時間が増えていく中で自分専用の仕事用パソコンがないのはあまりにも不便すぎます。それが理由で仕事にも支障が出始めたので、それに背中を押されるように夫の許可なくパソコンを買う決心がつきました。

8)葛藤を経てようやく仕事用マイパソコンを買った後に生じた大きな変化

以上の葛藤を経てようやく仕事用マイパソコンを入手した私ですが、一度ハードルを越えるとだいぶ気持ちが楽になって私の中にも大きな意識の変化が生じました。

まず、どこか腰掛気分だったライター業に本腰を入れて取り組めるようになり、資格の取得などのスキルアップも積極的に図るようになりました。

また、仕事で必要だと思うアイテムを予算の範囲でならためらわずに買えるようにもなり、それによる恩恵も多大に受けています。

例)
・肩こり・五十肩緩和用リアルフォースキーボード
・姿勢をよくする椅子
・パソコンスタンド
・執筆に必要な書籍や電子書籍
・予備の仕事用パソコン

それらのアイテムのおかげでこれまで以上に作業効率が上がって腰や肩の不調もだいぶ良くなっています。

しかしもっとも大きな変化は、ン十年ぶりに「妻でも母でもない自分」を取り戻したことです。それによって自立心や自信がつき、夫が先に亡くなってもなんとか自分で生きていける心づもりができました。

夫婦といえども必ず別れの時が来てどちらかが一人遺されます。また、子どもにも自分たちの生活がありますからおんぶにだっこで頼ることは不可能です。

だからこそ、私のようになんの取柄もないような弱い女でも一人でなんとか生活できる程度の生活力と生きる知恵、ある程度は一人で生活できるだけの心の強さがないと困ります。

専業主婦だった頃はそれができる気がまったくしませんでしたが、個人の名前で企業を相手にちゃんと仕事できている今の自分ならなんとかなると思えるようになりました。

また、家のこと以外は何をするにも夫の指示を仰いでいた私ですが、他のことに関しても自分の意思で決定できるだけの力がついたと思います。それだけでも私としては劇的な変化だと言えます。

9)自らの意思でマイパソコンを買える今の自分なら何があっても大丈夫だと思う

今後も人生が続きますが、その道は決して平たんではないと思います。おそらくこれまでにない試練が次々と襲うこともあるでしょう。

それでもなお生きていかねばならないのならば、色々な意味で自立して強く賢く生きねばなりません。また、それができるかどうかは全て自分次第です。

しかし、アラフィフにしてまた仕事を始めたこと、そして自らの意思でメインの仕事道具となるマイパソコンを買えるようになった今の自分ならなにがあっても大丈夫。たぶん今後の人生もなんとかなると信じています。


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