書籍紹介「電子工作マガジン AUTUMN2021」(電波新聞社刊)
電波新聞社より年4回刊行されている「電子工作マガジン」を皆様にご紹介いたします。
今回ご紹介するのはAUTUMN2021(2021秋号)です。
紹介の関係上、書籍の一部を撮影またはキャプチャーして掲載しておりますが、あくまでも記事理解を助ける範囲に留めるよう配慮しております。もし関係者の方よりご指摘をいただいた際には、速やかに該当部分を削除させていただきますので、何卒ご了承のほどよろしくお願いいたします。
名前こそ「電子工作マガジン」ですが、実はプログラミング方面にかなりのページを割いているのが本誌の特徴。雑誌内組み込みとなっているコーナー「マイコンBASICマガジン」(通称ベーマガ)は、かつて20万部以上の発行部数を誇っていた電波新聞社の看板雑誌の名称であり、全国のパソコン少年少女のバイブル的な存在でもあったのですよ。
いまなおIchigoJam(Rを含む)やプチコンなど令和に受け継がれたBASICのプラットフォームで読者投稿のプログラムが掲載されており、そのクリエイティブ・スピリットはいまなお健在。全国にいるプログラミング少年少女のためにもまずはベーマガの別冊化、そしてゆくゆくは再度の独立雑誌化を目指したいところです。目指しましょうよ編集長、どうかぜひっ!!
前置きが長くなりましたが、今回の2021秋号はまさにそんな期待を持たせてくれる内容でした。さっそくそのあたりから紹介していきましょう。
PCレクチャー「IchigoJam BASICで秋の夜長にゲームプログラミング」
毎度おなじみくりひろし先生の連載漫画。電子工作マガジンにおけるキラーコンテンツのひとつなのですが、今回のはまさに「これこれ!こういうのを描いてほしかったんですよっ!!」と言わずにはいられない内容となっています。これだけのために本誌を買ってもいいくらいです。
内容はズバリ「これだけあればゲームプログラムが作れる!」と銘打たれた16種類のコマンド集。
プログラムとして書かれるコマンド
CLS 画面の表示を全て消去
LET 数を変数や配列の値として記憶
LOCATE または LC 次に文字を書く位置を指定
FOR NEXT 変数でNEXTまでを繰り返し実行
INKEY( ) キーボードから1文字入力
PRINT または ? 数や文字列を表示
CHR$ PRINTで文字コードの文字を表示
IF ELSE 判定でIFの次かELSEの次を実行
GOTO 指定した行番号に飛んで実行
SCR 画面に表示の文字コードを取得
END プログラムを終了
プログラムの作成に使うコマンド
RUN プログラムを実行
LIST プログラムリストを表示
数字 数字を行番号としてプログラム
SAVE プログラムを保存
LOAD 保存されているプログラムを読出
(以上、同誌より引用)
この漫画はまず最初に「なぜIchigoJamはBASIC推しなのか?」という読者の問いかけから始まります。「今時やるならJavaScriptじゃないの?」「SwitchでもできるScratchでビジュアルプログラミングがいいのでは?」とも。
これに対して講師役のDr.Dが、IchigoJamのBASICが電源ONで即プログラミングできることのメリットと理由を説明し、そこで相手役のつぐ美ちゃんが「じゃ、BASICのコマンドの基本をおさらいして行きましょう!」と言ってさっきのコマンドリストになるわけです。
いやこれ、プログラミングを始めてみようって人にとって一番大切なところですから!!
これまでに私のnoteでもたびたび書いてきたことですが、プログラミングって初手から選択肢が多過ぎる。そして初心者向けと銘打たれた書物の大半が初心者のことなんてひとつも考慮していない!
これでプログラミングやりたい人が増える方がどうかしてますよ。
今回の漫画の素晴らしいところは、まず「何でIchigoJamはBASICか」を説明することで選択肢をそれ一択に絞ったこと。次に「これだけあればゲームプログラムが作れる!」というのを示すことで覚えるべき内容を絞ったこと。
これが初心者に対して何かを教えるとき決定的に大切なことで、多くの専門家や専門書が出来ていないことなんです。
そして漫画ではこの流れにて「必要なコマンドを順番にやっていくぞ!」と進んでいき、CLS、PRINT、FOR~NEXT、IF~THEN~ELSE、INKEYの順番で実際に動くコードを紹介しながら説明して残りは以下次号!と次につなげてENDというわけ。いやー、引き方も最高だねこれ。くりひろし先生の作品の中で一番感動しましたよ今秋号。大きな拍手をお送りするとともに、次号も必ずこのnoteで紹介することを約束する次第です。
ただ…これ私のnoteなんで、少しだけ意見言ってよかですか?
その16種類…んー、このセレクトって「どんなゲームを作らせたいか?」によると思うのですが、私だったらCHR$とSCRの代わりにINPUTとRND( )を入れるかなぁ。
何でそう思ったかって言うと、この2つがあればとりあえず数当てゲームが作れるんですよ。数当てゲームっていうのは任意の範囲から乱数で決定された数が何であるかをプレイヤーに当てさせるゲームなのですが、これひとつで入力・表示・乱数・条件分岐の要素を学べることからプログラミング習得の第一歩としては最適な教材だと思うのです。
まぁでもこういうのは、人の数だけ「俺ならこれ入れてこれ外す」みたいな自論が出てくるかもしれませんね。そういうのを楽しめるのもまたこの記事の良いところなのでしょう。うわー今回ほめるところしかないわ!!マジでくりひろし先生 is God!!
読者投稿プログラム、IchigoJamにあの「フ■ッガー」が?…いや、これは「フロガー」だ!!
ベーマガと言えば読者投稿ブログラム。今回は「2進数と16進数の勉強」(IchigoJam1.4以降)、「移植版フライングアタック」(プチコン4)、「Wire Climber」(IchigoJam R)、「フロガー」(IchigoJam1.3.1以降)と全部で4作品が掲載されましたが、圧倒的な存在感を示しているのがここで紹介する「フロガー」です。
フロガー 作者(ペンネーム):A1 機種:IchigoJam1.3.1以降
■ストーリー
寒い!!早くあったかいお風呂に入ろう!!しかし、なぜかモンスターや激流が行く手を阻む!!
以下、作者に最大限のリスペクトの気持ちを込めてお伝えします。
おい作者(笑)。風呂っていったい何やねんその無理筋設定w
それにどう見ても「フ■ッガー」ですよねこれ?
だから「フ■ッガー」ですよねこれ?
カエルを風呂に入れたらゆでガエルになっちゃいますけどいいんですか?
原作である「フ■ッガー」の詳しい説明はこちらに。
アーケードゲームの古典にしてボードゲーム的なジレンマ要素を持った良作だと思っています。
Windows10で以前に入手した「FLOGGER」と比べてみましょう。
(確かXBoxで無料で入手したと思ったけど違ったかなぁ…)
左がWindows版「フロッガー」、右がIchigoJamの「フロガー」。
Win版のはほぼ昔のアーケードゲームに近い感じ。
ゲームは…うわこれ、ほぼ原作と比べても遜色ないよ?IchigoJamで「フロッガー」をここまで移植するなんて…。ここまで作り込んであるなら、むしろ堂々と「IchigoJam版フロッガーです!」って言い切って発売してもらいたいくらいです。
もしかしたら「Tinyフロッガー」とかになるかもしれないけど、それでも。
面クリアすると主人公がガッツポーズするのは「これはフ■ッガーではなくフロガーなんだ!」という作者のこだわりなのでしょうか。アツイです。
いやはやこれはすごいものを見させていただきました。
これだけのために本誌を買ってもいいくらいです(2度目)。
JavaScriptでプログラミングできるIchigoLatte入門~電子サイコロを作ろう
「IchigoLatte」とはJavaScriptというプログラミング言語が使えるIchigoJamの親戚のようなもの。双方の開発者である株式会社jig.jpの福野会長によれば「ちょっと大人なこどもOS」だそうです。どっちやねん~!とツッコミを入れずにはおれませんが、まぁそこは微妙なお年頃ということでひとつ。
そのIchigoLatteで電子サイコロを作ってしまおう!というのがこのページの主旨。サイコロってボードゲーマーにとって必需品だからちょっとだけ興味ありましたが、IchigoLatteは残念ながら持っていないのですよね~。それとボードゲームってサイコロを2つ使うことが多いので、今回のこれ2d6に対応してくれてたらなー、なんて思ってしまいました。でもこういうのゲームの集まりに持って行ったらめっちゃウケそう!!ということでIchigoLatte入手したらいつか作るかも知れないのでピックアップしておきます。
なお同じオフィス加減の松下さんの記事で「プチコン3号Smile BASICの初歩の初歩~パズルゲームを作ろう」というのもあります。こちらはプチコン3で「さめがめ」みたいなパズルゲームを作ろうというもの。初歩の初歩と言いながら内容的にはちょっと高度だと思いますが、プチコン使いは注目しておいて損のない記事です。
その他の注目記事
今回はプログラミング系を中心に紹介してきましたが、この雑誌は「電子工作」のマガジンであり、「エレクトロニクス技術の未来を拓くホビー誌」とのことなので、そちら側の記事で私的に面白いと感じたものをピックアップしてお届けしたいと思います。
ブレッドボードで簡単組立て「タッチセンサピアノ」ブレッドボードパーツセット
面白いと思ったというよりは、これが一番「自分でも作れそう」と思ったのでセレクト。ブレッドボードに部品を挿すだけの簡単工作だそうなので、ハンダを使うと基板をハンダの海に沈めてしまう私でも安心。もちょっと複雑でもいいから黒鍵もほしかったなーなんてゆうのは贅沢?
音声で電気製品をオン・オフできる音スイッチの製作
これあったらいちいち「おいエアコンのリモコンどこいったんや」とかいうことがなくなってとても便利。ただ予算4,500円で難易度★★★かぁ。ちょっと考えてしまう…。あと作動にACアダプタが必要なのも要注意。記事自体は「なるほど音を拾って電気信号に変換するのってそうやってるんだ」というのが分かるように書いてあり、勉強になります。
プログラミングで温泉たまごを作って、おいしく食べよう
温泉たまごを作るときに必需の作業である「温度を一定に保つ」をプログラミングで解決しようという試み。中学校の技術・家庭科(技術分野)における「プログラムによる制御と計測の内容」に対応する記事とのこと。なんと10ページに及ぶ大作です。
出来上がる成果物は美味しい温泉たまご。こういうの具体的かつ即物的で良いですよね。プログラミングが生活と密接にかかわることを学べるという点で教材としても◎と思います。ただ本当にこれ授業でやるとすると教師の側にかなりセンスが必要だとは感じますが…。なお記事中には温泉たまごに関するノウハウやたまごについての豆知識なども載っており、電気やプログラミング苦手な方もそっち方面で楽しめます(笑)。
クムクムR321Jを使ってみた
最近は小学校低学年からこういうのでプログラミングやるんですね。言語はScratchやPython、Arduinoに対応しているとのこと。ボディが透明なのは電子部品や電線など技術の部分を隠さず見せることで技術者の卵である子供たちに「ものづくりを好きになってもらいたい」という思いから。そのコンセプトに製作者の熱い想いを感じます。
プログラムのサンプルは上記「学びの広場」というサイトにて豊富に用意されているそうなので、最初はプログラミングの知識が無くてもいろいろ試してみることができそう。使いこなせば店番をしてくれる(!)ようにすることもできるそうなので、これは夢が広がりますね。
AMラジオキットを見直そう
そうなのですよ。民放AMラジオ44局が2028年秋までにFM化なのですって。詳しくはこちらの記事に詳しく載っています。
昔はAMも良く聴いてましたよ。一番聴いていたラジアメ(ラジオはアメリカン)がTBSラジオだったので、私の中ではラジオと言えばAMだったくらいです。いきなりAMを停止するという話ではないとはいえ、時代の流れ的なノスタルジーをどうしても感じてしまいますよね。この記事ではそんなAMラジオ受信機を自作するためのキットを数多く紹介しています。
ということで今回の「電子工作マガジン AUTUMN2021」紹介はここまで。
ここに書いてあるものをそのまま作らなくとも、「何か作ってみたい欲」をかき立ててくれる良い雑誌です。秋の夜長に何かしらこうしたことにチャレンジしてみたい方はぜひ本誌をお手元に。
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