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【グロ注意】轢かれた野ウサギの死骸を観察したハナシ

中学生時分、学校帰りに轢死した野ウサギを発見し通り過ぎるも、わざわざ引き返してじっくりと観察してみたことがある。


※グロ注意※これ以下の文章は不快な表現が多発しますので読み進めるか否かはご自身でご判断ください

野生動物の轢死は日常茶飯事の思春期

私の中学から高校までの思春期6年間は、父親の地元に居を移していた期間だったので、町内全員に身元がバレてる環境の小さな小さなコミュニティ。
そのようなド田舎では、轢死した野生動物の死骸が放置されている事など日常の一部。

その日も友人とふたりで自転車で帰宅途中、反対側の歩道に何かしらの野生動物の死骸があるのを認めたこと自体は、ごくごく日常的な出来事であった。

私たちは道の反対側の歩道に動物が死んでるな~と思いながら通り過ぎた。
とくに話題にもしない、会話にものぼらないがお互いに「動物の死骸」があることは確認できている。

口火を切ったのは私だ、前のマユミに呼びかける。
「ねぇ、ちょっと戻って見てみらん?さっきの動物の死骸」
「えーーーーーーーーー?!」
マユミは自転車のブレーキを強く握りしめてすぐに止まった。
「急に止まるからビックリした〜」
「ウマの言ってることのほうがビックリする!」
「あれ、ウサギじゃない?しかも内臓出てたよね?これから先、内臓が出てる動物を見る機会なんて何回あると思うや?」
「ないやろ…なくていいよそんな機会…」
私たちは受験をし高校生になり社会人になる。
きっとどんどんこのド田舎からは離れていくだろう。
動物の死骸なんて転がってない道路で生活をするに違いない。

「小学生の時に怪我したクラスメイトの骨を見たことがあってさ…」
「えー…」
私はマユミを説得にかかった。

クラスメイトの怪我の目撃者になった

小学5年生で転校した先でクラスメイトの佐藤サンと廊下でおしゃべりをしていたら、走ってきた男子がいきなり私たちの目の前でうずくまって動かなくなったことがあった。

佐藤サンと私が男子生徒に近寄ると彼の膝の肉はえぐれ大量の血を流しており、足はもうピクリとも動かせないのがわかった。
これまでに見た事も無い表情をして苦痛に耐える彼を見て、私たちはただならぬ状況だということを瞬時に悟った、子供ながらに。

大人になった今にして思えば、彼の傷口から見えていた白いモノは皮下脂肪だったのじゃないかと思うが、小学5年生の私たちには骨に見えた。
「人間の骨」を見るのは火葬された身内の骨上げをする時だけで、その知識しかない私たちは目の前で流血しながら骨が見えている男子が死ぬかもしれない恐怖で、その場から一歩も動けなくなってしまった。
佐藤サンは既に泣き始めている。

教室から生徒全員が廊下に出て来て、その場はパニック。
学校に救急車が来て彼は病院に運ばれた。
授業は中止になり、担任は病院に行くので代わりの先生が来て自習になることが告げられた。
そして担任がこう言った。
「千徒さんと佐藤さんは先生と一緒に病院に行きます、ついて来なさい」
病院に着くまでの車中で担任は「ビックリして怖かったね」と言って私たちを落ち着かせてくれた、佐藤サンはずっと泣いていた。

病院では男子生徒の母親と合流し、担任は怪我の経緯を説明していた。
たぶん怪我を目撃して動揺しているクラスメイトのケアのために私たちを連れてきた説明もしたのだろう、彼のお母さんは私たちに「心配してくれてありがとうね」と声をかけてくれた。

この一件で私は「ショッキングな出来事を最後まで知る」という経験はとても貴重だと感じた。
最後まで知ると何かが残る。
その「何か」がナニとはハッキリ言えないが、今後の私の糧になる。
ような、気がした。

野生動物の損傷具合がショッキングなレベルであること、ひとりで見るのは怖いが一緒に見ればいけそうであること、その2点が説得のポイント。
嫌がるマユミを私はジワジワと説得した。

ひとまず引き返そうハナシはそこから

最初は見たくないと断っていたマユミだが、小学生の時に彼の怪我をしっかりと見た経験を良かったと思っている事を引き合いに出し、ウサギの死骸がショッキングな見た目だからこそちゃんと見てみないか1人で見るのはヤだけど2人なら…と揺さぶると、迷い始めた。
「どうする…?見る?えー…どうしよどうしよ…見ようか…ん〜…」
あと一押しの手応え。

「ひとまず、あの場所まで引き返そう?下がるだけ、まだ道の反対側にあるじゃん死骸は。見える場所までは戻るけど、道を渡るかどうかはソコで考えよう」
「…わかった」
うら若き15才、肝が据わらないのでちょっと近寄る作戦に出る。

「どう?ウサギ?」
「ん、ウサギっぽい。血まみれ」
「ひぃーーー…ウマどうする?見るの?見たいの?」
「私は見たいよ、マユミは?」
「はぁ…道渡る?よし、渡ろう…見よう…」
二人の覚悟は決まった。
私たちはお互いの手を固く握り合い、道を渡った。
見ると決めた私たちは、もう引き返せない。
やっぱや~んぴ、なんて言えない、それが15才の清い決心である。

ウサギを観察したその日に事件が起きた

野ウサギは白色じゃないことが多いが、そのウサギは白色だった。
もしかするとペットとして飼われている白ウサギだったのかもしれない。

細長い小腸と思しき臓器が飛び出ておりその臓器にボソボソとした何かがまとわりついていた、血まみれであるが鮮血というよりもオレンジがかっている。
「麺に見える…」
「私も同じこと考えてた」
「夕食がミートソーススパゲティだったらさすがによう食わん…今日そろそろミートソースかも…」
「あ~…ウチもそろそろミート…」
私たちのその日の夕食は、ミートソーススパゲティだった。
清らかな決心を後悔した、見なきゃよかったと。

翌日の学校で私たちはひどく落ち込んでいた。
「もう二度とミートソーススパゲティを食べられんような気がする」
「私は一生もう食べんでいい、て気になってる」
我が家のミートソーススパゲティ率は非常に高かったが、ウサギ以後の私はスパゲティそのものをあまり好まなくなった。
なかでもミートソーススパゲティとボロネーゼは未だに積極的に避ける、ウサギが原因で。
マユミの現在はどうなのだろう、あの頃は二度と食べられない気がすると言っていたが。

確認してみたら衝撃の事実が発覚した

中学の時に一緒にウサギの死骸を見たマユミに、現在ミートソーススパゲティが食べられるかどうかの確認をする。

友よ、そんなにスッカリ忘れるものか。
あんなに力を合わせて覚悟を決めて見たのに?

確認したい事のだいぶ前から説明する。
私には忘れられない出来事だったのに、共有した友は忘れている衝撃の事実を知らされる。

あの日の夕食と翌日の落ち込みっぷりを説明して、やっと本題に辿り着く。
マユミもなんとなく記憶を取り戻してきたようだ。
アンタが「麺に見える」てゆったんやで。

衝撃の出来事をコロッと忘れておいて笑い転げる、質問に答えないマユミ。
せっかく忘れてたのに思い出させるなと苦情が入る。
今ミートソース食えんのか?食えねぇのか?肝心なのはソコなんだけど。

普通に食べてて、何よりである。
…でも?

ミートソースは食べない、て。
出来事忘れてるくせに。
ショッキングな出来事をすっかり消して覚えていないにも関わらず、ミートソースは食べずに生きて来た、その原因がウサギの死骸を見たことだとも知らずに。

ショッキングな死骸を見て私たちに残ったもの、それは「嫌いな食べ物が増えた」という弊害だった。
ショッキングな出来事を最後まで知ると何かが残るのだが、その何かがいつも良い影響を生むとは限らない。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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