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金子彰宏トリオ

JRを乗り継いで、会場のある船橋までなかなか着かない時間がもどかしかった。
『間に合った』
お店に入ると、運良く最前列の席はまだ人がいなくて、恐れ多くもピアノの右横の席についた。
金子彰宏さんのトリオのライブを観るのは2回目だった。

僕は、彼のピアノにいつも魅了されている。
彼のピアノの音はみずみずしさがあって、オリジナル曲は全く飽きることなくメロディが湯水のように溢れ出てくることを感じている。
この半年くらい、“Look Back”という彼のオリジナル曲を繰り返し聴いていて、聴くたびに脳を浄化させてもらっている。
NHKの朝ドラ『虎に翼』の主題歌になっている米津玄師さんの“さよーならまたいつか!”という曲があるが、何気なく耳にしながらいつの間にか懐かしもあるメロディを覚えてしまう。そんな日本人の心に響くノスタルジーがこの“Look Back”にはあって、メロディは美しく、ピアノのソロパートの5周目には演歌のこぶしのような金子節となって高みに至る。
そのトリオの演奏を目の前で見られるというのは、僕にとっては贅沢で特別な記憶となっている。

配信で見た前回5月の大宮のライブでは、2つのアルバムからと未収録のオリジナル曲を演奏。
そこで耳にした曲が再度この日に聴けるかと思っていたら、セットリストは異なる構成で、ジェリー・マリガンのジャズの名曲やガレスピーのラテンテイストのナンバーも取り上げたり、Sing Like Talkingの“Maybe”をお父様に捧げるカバー曲として演奏していた。

ライブでは、ビル・エバンスの友人アール・ジンダースがエバンスのために書いた“How My Heart Sings!”のような美しい三拍子の“Early Bird”(アルバム未収録)や、疾走感と力強さが同居する“Great Thief”(アルバム収録曲)、2種のリズムで交互に演奏されるアルバムのタイトル曲“No Name Samba”など珠玉のオリジナル曲の数々を聴くことができた。

中西和音さんの叩くドラムは、重くズッシリと安定感がある。その音は、コンテンポラリーミュージックにカテゴライズされることもある、スタンリー・カウエルと共演していたジミー・ホップスを思い起こさせる。

小西佑果さんのベースは、リズムセクションというよりも金子彰宏トリオの音楽表現の重要なファクターで、金子さんのピアノの音との相性に加えてベースの可能性を強く感じさせる存在感のある演奏をしている。

ライブの休み時間に金子さん自身が楽しそうに演奏していると、お客さんが話をしていたが、その演奏する姿もバンドの1つの魅力で、ベースの小西さんもにこやかに時にハミングしながら音の対話を楽しんでいる様子を目にした。

9月7日の赤坂のライブが楽しみで仕方ない。

Coquelicot F 22.June 2024

1st
1.Blues on the Conner
2.Great Thief
3.Look Back
4.Early Bird
5.My Little Sued Sues
6.Out of It

2nd
1.Night Lights
2.Batiste
3.Compensation
4.Maybe
5.No Name Samba

encore
・Fado

金子彰宏(p)
小西佑果(b)
中西和音(ds)

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