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軽率に整形をしてみたら、年を重ねる楽しみが増えた話。

骨を切るだとかそういうたぐいの大掛かりなやつを除き、ぼくの周囲(特に同世代)では「整形」をしている子のほうが多い印象を受ける。一昔前で言うプチ整形ってやつ。二重埋没とか。ちなみに今は美容医療って呼びかたが一般的らしい。

それなりの人数が集まる飲み会では、ほぼ絶対にどこにヒアルロン酸を入れただのボトックスを打っただのという話題が上るほどだ。整形だとか美容医療だとかって聞くと「女性」のイメージが強いけれど、男の子もけっこうやってる。このあいだ昼から遊ぶ予定だったのに「昨日ダーマペンやったばかりだから日光に当たれない」とかいう理由で遅刻してきた男子がいて、意識の高さに感心してしまった。

そんな話を聞いているうちに、むくむくと自分の中でも整形欲が高まってきてしまった。気になっているのはエラボト(咬筋をボトックス注射で緩めてエラの張りを緩和させる)、ほうれい線ヒアル、ガミースマイル(笑うと歯茎が見えてしまう)矯正、などなど。しかしそれを友だちに相談すると、「エラを気にするのはわかるけど、エラなくなると老けて見えるよ」「永作博美だってエラがあるからバランス取れてるんだよ」「ガミースマイル、コンプレックスに思ってるところ言うの悪いんだけど、私ちーちゃんの笑いかた好きなんだよね楽しそうで」などと言われてしまい(ちなみに言っておくが友人たちはYouTubeの広告とかでよく流れてくる遠回しな意地悪だとかで言ってるわけじゃない、完全に本心)、迷ってしまっていた。単純なので。

けれども先月あたり、友だちに撮ってもらったポートレート写真を見て、自分の顔面の異変に気づいた。あれ、なんかぼく、顔デカくなってない? その原因には心当たりがある。寝ているあいだの食いしばりだ。12月〜4月の受験期は、毎年フラッシュバックと悪夢がひどい。今年は特に悪夢が頻回で、毎日夜中に叫び声を上げていた(らしい。記憶がないときもあるので、パートナーのヒガンテくんから聞いたところによると)。そのせいでどうも睡眠中に歯を食いしばり続けているようで、朝起きると顎周りに筋肉痛というか、なんともいえない倦怠感を感じるようになっていた。

数ヶ月そんな生活を続けていれば、そりゃ元々発達していた咬筋もさらに進化を遂げたって無理はない。エラについてはそれこそ被写体をやるようになって自分の姿を客観視する機会が増えたおかげで以前ほどのコンプレックスは感じなくなってきたけれど、顔が大きく見えるのは本意ではない。あくまでカクッとした顎のラインを誇りに思うようになっただけで、咬筋の発達も顔の形が変わるのも望んでいた変化じゃない。

そこでエラボトに踏み切ることにしたのだ。カンナムオンニで調べてみると、モニター価格で激安の施術コースがわんさか出てきた。口コミを吟味し、良さそうなクリニックで予約を取った。そして当日、担当の先生に「かなり発達しているから100cc入れてもいいかもしれない」と勧められたものの、完全にエラを抹消することは望んでいないため、相談した結果50ccでお願いすることに決まった(基準は40ccらしい。ちなみに両側併せた量)。

現在、施術から2週間ほど経過した。左右差を加味して注入してもらったのだけれど、やはりそこは完全には解消されなかった(これは先生の腕うんぬんではなくぼくの咬筋が発達しすぎていたせいな気がする)。でも“よく見れば”程度だし、全体的にはシュッとして食いしばり癖がつく前くらいになったので満足である。満足ついでに今月頭、今度はほうれい線にヒアルロン酸を入れてきた。たるみではなく皮膚が薄くなったゆえ目立ち始めたようなんだけど、シワが出るなら全体にバランスよく出てほしい。口元のところだけ目立つので、老けて見えるとかどうとかよりもバランスの悪さが気になっていた。

不自然になることを恐れている、とカウンセリングで先生に話したら「初回だから控えめにしましょうか」と提案してもらったため(ヒアルロン酸は一定期間を過ぎると吸収されてしまうので定着しない)そのようにしたのだけど、もっと思い切ってもよかったかなくらいの仕上がりになった。とはいえだいぶ改善されたので、エラボトと同じく満足している。

noteやメディアでも繰り返し書いてきたけれど、ぼくはぼくの容れ物を好みに整える作業が好きだ。それが服好きに繋がり、ピアスやタトゥーに繋がり、整形(美容医療)に繋がったのだろう。韓国式の施術を導入しているクリニックが増えてきたからか、破格で受けられるのも嬉しい。ぼくが大学生くらいのとき、エラボトってたしか10万くらいはしていた気がする。作業の方法や手段が増えて、年を重ねる楽しみも増えた。今後も財布と相談しつつ、無理のない範囲で自分の容姿を自分の好みに近づけていきたい。

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伊藤チタ
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