小さな喜び

私事も甚だしいが、もうすぐ2歳になる娘がいる。先日、妻が友人とランチに行っていたので、久しぶりに娘と二人でお出かけした。娘は話すほうは簡単な単語を繋げる程度だが、言われたことは大分理解できるようになってきた。

さて、娘とのデートはある程度ルーティンが決まっていて、お昼前に出かけて、お昼ごはんは友人のやっているお蕎麦屋さんでお蕎麦や親子丼などをいただき、その後はぷらぷらと散策する。疲れたところでお茶をするというコースである。

この日はお昼を食べたあと、新宿へ向かい、そこから明治神宮まで歩いた。本来は歩いている間にお昼寝をしてもらう予定だったが、今日は元気らしく全く寝る気配はなかった。

ご存知の方も多いでしょうが、明治神宮の境内は砂利道となっており、道の両脇に大きな木が並ぶ。この木々の枝葉が覆い茂っていて気持ちの良い緑のトンネルを形成している。

娘も興奮したのか、砂利道を飛んだり跳ねたりと走りまわっていた。神様のお庭ではしゃぐのはあまりほめられたことじゃないだろうが、子供は元気が一番。

何度か一緒に神社にお参りしているので、娘も最近は見様見真似で自分なりに作法を覚えようとしている。お賽銭を投げたあとにパンパンと小さな手を叩く姿(いや、フォルムか?)はなんともかわいらしい。それを見ながら、私も親バカ丸出しでにやけてしまう。

神様からのご褒美なのか、タイトルになっている「小さな喜び」は帰り道で見つけた。帰りはさすがに疲れたらしく、明治神宮の境内から離れて程なくして娘はベビーカーの中でぐっすりと寝てしまった。いつもなら一緒にカフェでジュースを買ってあげるのだが、今回は寝ていたため私だけコーヒーを飲み、お店を出たあたりで娘が起きてきた。

さすがに何もないのはかわいそうに思い、彼女の好きなどら焼きを買ってあげた。わが娘ながらこの子は食べっぷりがいい。まずは申し訳程度にパパに一口を譲ったあと、あっという間に半分を平らげた。残り一口ぐらいのところで、私は思いつきで”それをママに残してあげたら?”と言ってみた。

娘はそれを聞くなり、残りを紙包みにしまいこみ、小さな手でそれを握り締めた。気軽に言った私のほうがびっくりではあったが、家までは30分弱、どこまで耐えられるか試してみることにした。

電車に乗っている間はじっとその紙包みを凝視する娘の姿はかわいくもあり、かわいそうにも思えた。途中から紙包みをクンクンしはじめ、仕舞いには紙包みの端を噛みはじめた!そして家の最寄り駅に着いた頃にはとうとうどら焼きを紙包みから取り出して、どら焼きとにらめっこを始めた。

最後はどら焼きを見ながら、紙包みをかじるというなんとも不思議な技を出しながらも、何とかぐちゃぐちゃになったどら焼きをママに届けることができた。

がんばった娘を見ながら、親としてはなんとも誇らしい。きっとママの日ごろの接し方が良かったのだろなと幸せを感じずにいられない気持ちになった。

そういえば、昔にマシュマロ実験に関する記事を読んだことがある。この実験では、自制心の強い子供は将来成功する確率が高いという結論になった。その後の追加検証では、マシュマロ実験の結論は一部否定されたものの、自制心は現代社会で生きるのに重要な能力の一つであることはやはり否定できないと思う。

娘はこれから嫌々期に差し掛かることになるが、やはり素直で強い子に育ってほしいと改めて思う一日になった。ちなみに、パパとママの分のどら焼きも別途買っていたが、これらの大部分は娘のお腹に納まったことは後日談である。

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