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【Tempalay】惑星X 周遊紀行【日本武道館_20241003】ライブレポート


 彼らの音楽を聴き始めた頃、一部のアルバム名が「from JAPAN(1〜3)」と名付けられているのはなぜだろうと思ったのをライブ中に思い出した。そしてその答えが今回の公演で示されていると感じた。それは、彼らは音楽を通して旅を続けていて、その旅先で彼らが何者であるかを示すかのように、アルバム名にfrom JAPANを掲げているのでは、ということだ。

 結成から10年の歳月の中で、Tempalayは彼らの地図を縦横無尽に拡げてきた。初期のころには実際にアメリカツアーで獲得した思い出が色濃く刻まれているけれども、目を閉じれば広がる音の旅はパリアラスカロンドンニューデリーと世界中を行き来し、さらには深海、近未来、霊界にまで至り、ついに今回惑星Xにまで到達したのである。

 惑星Xへの旅をTempalayと共にし、彼らの10周年を祝福するため、武道艦に乗り込む私たち。搭乗するやいなや、作りこまれた世界観にフルパワーで圧倒され続ける。正直、TempalayとPERIMETRONなんて凄いのは知っている。とんでもないのが来ると最初から期待値も高い。目撃者Xの特典映像だって半端なかったし。でも、それでもその期待を殴りかかりながら越えてくるのが、彼らの体現する武道館公演だ。この人生で見るべきだった夢を見たとしか言えない、多彩で、妙で、心地よく、攻撃的で、美しい空間が間違いなくそこには存在した、はずである。

 なぜそんなにTempalayが好きなのかと聞かれると、とても難しい。ただ、彼らの音楽を聴いていると、この世界の清濁、芸術や混沌、自然や物理、創造物、愛、抗えないものなどの限りない万物を体験しているような気持ちになる。やはりそれは、彼らがTempalayというバンドを通して旅をしているからで、まさしく「ドライブ・マイ・イデア」なのだ。

 大人になり、人の親になって度々思うことがある。それは、人生は長い旅なのだということ。すべての経験も失敗も興奮もむなしさも別れも、生きていく上での数々の旅先までのスパイスである。私も誰しも取るに足らないが、ひとりひとりがこういうものを連綿と営んできたからこそこの世界がある。半径5mの日常から少し視界を広げ、創造の旅に誘ってくれるのが、Tempalayの魅力だと思う。

 さて、次の旅先は?座標は日比谷野外音楽堂を示しているらしい。メンバーの出産などを経てもしかしたらスケジュールは少し先かもしれないけれど、それまで私も良い旅を続けようと思う。未知の惑星は我々のすぐ隣に、いつだって存在しているという。

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