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横浜FC 5月度最優秀監督と雑草達による執念の戦術構築

どん底から巻き返した前半戦

2023年シーズンJ1第17節

ホーム三ツ沢競技場 対浦和レッドダイアモンズ戦

試合結果 0 – 0 ドロー 勝ち点1獲得

これにて前半戦終了。我が横浜FCは勝ち点13で18チーム中16位、降格圏をギリギリ抜け出した形で後半戦を迎えることとなりました。

今シーズンの最初の10節は3分7敗の勝ち点3
その後の7試合は3勝1分3敗と勝ち点10。
これで合計勝ち点13です。

直近7試合の戦績から皮算用をすれば残り17試合で勝ち点24。総合計37。残留には試合数と同じ勝ち点が必要と俗に言われていますが、それを3点上回る計算で、チーム史上初のJ1残留です!(繰り返しますが、皮算用です 笑)

その直近7試合の中では、一昨年まで圧倒的な王者だった川崎フロンターレを2-1で撃破した試合が印象深く爽快なものでした。

しかし、今節、アジアチャンピオンを相手に双方無得点で引き分けた浦和戦こそ、今シーズン、いや、もしかしたら横浜FCの歴史の中でも画期となった試合かもしれません。

見失うことのなかった目標

守備重視では攻撃は難しいのか。。。


「ハイラインハイプレスの攻撃的戦術を導入しようとしたがプレーのクオリティが不足し、かえってボロボロに。11節から身の程を弁え、堅守速攻に方針転換して持ち直した」

ここまでの展開への理解は、大方がこんなところだと思います。
直近のセレッソ戦、鳥栖戦では、重心が下がったチームは先制されてもなかなか得点の匂いを醸しだせないまま連敗に終わってしまいました。

そんな中、選手達のインタビューでは「守備は整理してきたので、ここからどう得点するかが課題」という言葉がしばしば上がっていました。ただ、そう言われても、改善のイメージが湧かなかったサポも多かったのではないでしょうか。私もそうでした。

J1上位とのがっぷり4つ

ところがです。
間違いなくJ1上位のクオリティを持っている浦和を相手に、ホームではありますが0-0のドロー!しかも、「堅守速攻の弱者の戦術」で耐えて引き分けに持ち込んだのではなく、かなりがっぷり4つ。終盤は逆にうちが攻め立てていました。そりゃ、「自分達は優勝を狙うチーム」と思い込んでいる浦和サポからしたら自チームにブーイングもしたくなりますかね。

がっぷり4つが、身贔屓の思い込みではない証拠に、世界トップレベルを知る相手の酒井選手も「横浜FCが良いサッカーをしたのも事実」とコメントしていました。

決して個の能力が最初から高かったわけではない雑草集団が、弱者のサッカーにとどまらず、J1上位チームと対等に渡り合う。横浜FC史上、初めてそんな闘い方で勝ち点を得た、という意味でこの試合は画期的なものとなりました。

(浦和の西川選手を中心とした守備の高い能力、ゴールへの遠さを考えると「対等」はちょっと言い過ぎかもしれませんが。。。でも、うちだって堅守でしたからね。)

ただ、この試合が画期的と言っても、この日急に出来たわけではありません。周囲からどう思われようが、監督、選手達は本気で「守備を固めたところからさらに得点力」を目指していた、その積み重ねがこの浦和戦で結実した、ということですね。

ビジネスの基本、「目標は変えない」ということ

サッカーであろうが他のビジネスであろうが、大きな目標を達成するために必要なのは「現実に従ってやり方を試行錯誤すること」と「現実に従って最終目標まで変えてしまわないこと」です。「現実的と称して、目標の方を出来そうなレベルに近づける」ことは、やってしまいがちですが、禁忌です。

最初はハイラインハイプレスで目指した「攻撃力を持ってJ1で勝てるチーム」作り。堅守速攻に路線変更で「そうだよ。うちは弱いんだから現実を見なきゃ。」と思った人も多かったかと思いますが、それは半分当たっていて、半分はちょっと違っていました。

「現実を見て」「途中の手段として」堅守速攻に切り替えはしたものの、それはあくまでも途中経過。「攻撃力を持ってJ1で勝てるチーム」という目標まで、「現実を見て」変えたわけではなかったのです。

5月度最優秀監督

確かに1枠しかない降格枠を避けることが目標。集まった選手達は雑草の集団で、上位チームサポからは試合前から勝ち点3を計算されてしまう。おまけに全国2位の大都市にあるのにサポーターも少ない。

そんなチームですが、それでも、今年の横浜FCは「すごいチーム」だと思いますよ。何がすごいって、一つの組織が大きな目標を達成するための「やるべきこと」が全て行われています。

大勢いる中で流動性の高い選手起用、選手間で健全に競争しつつ結束力が高い、複数の選手がリーダーシップをとってどんなに苦しい状況でも継続的、自主的に改善を継続。現実を見据えた改善に取り組みつつ、最終的な目標も忘れない。

次の章で書く具体的な改善も、単に監督が戦術を与えただけではなく、おそらく選手達の自主的な改善が積み重なり、結実してきたということではあると思います。

しかし、そのような体制になっていること、選手達が前向きに自主性を発揮できていること自体が、トップである四方田監督のマネージメントの手腕であることは間違いないと思います。

この記事を複数日にわたって書いている間に「四方田監督が5月度月刊最優秀監督を受賞」というニュースが飛び込んできましたが、これは、審査委員もよく見ていたと思います。そうです。素晴らしいマネージメントです。

守備と攻撃の改善の具体的ポイント

ちなみに、どうやってベタ引きの守備もしながらラインを押し上げることができたのか。(あくまでも素人の分析ですが)

プレス時の前後の連動性向上、そしてコンパクトさの維持

選手達のインタビューを参考にすると、どうも前からのプレスと後ろとの連動性を高めたようです。ラインを上げてもコンパクトで相手に中盤でスペースを与えず、ボールをひっかけられてもすぐに再度取り返せますし、ラインが下がっている時でもコンパクトで、高い精度でビルドアップできます。

チャレンジ&カバーの徹底

また、今はチャレンジアンドカバーの連動性が非常に高くなっています。サイドの近藤選手とかがドリブル突破されたら、ちゃんとその後ろに次のDFが構えていて、それも破られたらその後ろ、最後はブロ、と2段構え、3段構え、4段構えで徐々に相手の侵入方向を規制しながら守っているのは見ていて面白いです。

対カウンター戦術の安定が、ハイライン時の自信へ

引いて守っている時にそうしているのはわかりますが、面白いのはカウンターを食らった時です。この試合では、結構ドリブルしてきた相手選手は放置して、自分は一目散に所定の位置まで駆け戻るような場面を何度か見かけました。また、サイドの近藤選手、林選手が、上がってきた相手と結構距離を置くような場面も見かけました。多分ですけど、

(1)まずはゴール前を固める。サイドに釣り出されて真ん中を開けない

(2)チャレンジ&カバーの体制ができるまで一人で相手に行きすぎない。

ということが徹底されているのじゃないでしょうか。
サイドから攻めてきた相手と距離を空けすぎていると、それは2021年の弱い守備を彷彿とさせてハラハラします。しかし、真っ先に中央をガシッと固めれば、そうそうやられないものですね。

ただ、戦術だけではなく、最近のマテウスのハイパフォーマンスもカウンター守備の安心要素として見逃せません。

こんな感じで、カウンターを食らった時の守り方も整理され、安定感が出てきたので、それも自信を持ってラインを押し出せることにつながっていると思います。

今後の課題

今後の課題は決まっていますね。

「得点を取り切る」

ことです。どんなにラインを高くして、攻撃でサポを盛り上げたところで、得点しなければ「完成した」とは言えません。

正直、浦和GKの西川選手は凄かったです。CBの外国人達も素晴らしかったです。しかし、それで点が取れなくても仕方ないのではなく、だからこそ、今後どうしたらいいのか見えたのじゃないでしょうか。

(1) 62分の潮音のミドルシュート;相手DFに当たってのディフレクションで、結構惜しかったです。どんなにいいGKでも反応しきれない、ディフレクションによるゴールはどのリーグでも多いと思います。どうも、「跳ね返されてカウンターになるのを恐れて、あまりイージーにシュートしないようにしている」のかな?と思う場面も多いですが(山下とか)、打てば何かが起きます。もっと積極的にシュートを打っていいのではないでしょうか。

(2) 航基の能力;さすが航基。能力の高い浦和のDF陣も、航基の得点能力を恐れて、ボールを弾くより、航基の動きを押さえることに注力していた場面がありましたね。航基の動きをもっと活かすと同時に、それでDFが釣られたスペースをもっと活かすべきだと思います。例えば、航基が突っ込んでいけば、少し後ろ、ペナルティーアーク前後が空くわけですから、そこからミドルとか。(これは上記(1)にも通じますが)

(3) サイド突破で、もう一回縦に侵入できれば、もっと決定的チャンスになります。山下とか林とか、既にいいプレーをしていますが、もう1段階チャレンジしてほしいです。

まあ、ここに書いたことなんか、うちの選手達は最初から常識としてわかっていて、当然改善しようとしているとは思います。と、なれば、守備が整理されたのと同じように、いずれ、もっと、もっと得点能力が上がってくるとはおもいます。

なにしろ、四方田監督率いる「目標をブラさずカイゼンし続ける集団」ですから。

いやあ、リーグ戦再開が待ちきれません。まずは、アウェイで京都にリベンジを!


ブロ、ブロ、ブローダーセン♫

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