#カワイクイキタイ32「光の方へ」
蛾か羽虫かのように光の方へふらふらと。
いいな、君は。
みんなに愛されて。みんなに必要とされて。いつも笑顔で。幸せそうで。
私が獣だったら君を食べたい。
そうしたらなれるだろうか。君みたいな人に。
それとも、君も本当は私みたいなんだろうか。
何回生まれ変わっても、何回魂を洗っても、こんなもんだろう。
光の方へふらふらと。
暖かそうなところ。よさそうなところ。おもしろそうなところ。
今いるところを柔らかい寝床にすればいいのに。
見たことないものを見たがる。知らないものを知りたがる。わくわくしていたい。どきどきしていたい。心が動く瞬間に、一度でも多く立ち会いたい。
生きててよかったと思いたい。
生きてるだけでいいはずなのに。
つまんない。
大袈裟な売り文句に期待したものほど。とても素晴らしいと勧められたものほど。あまりにも、あまりにも。世界が号泣、その言葉に興醒めする。私、世界どうでもいいかも、ごめん。
味がしない。匂いがしない。食べたかわかんない。
虚しいともまたちがう。
退屈。
あまりにも、あまりにも。
平積みされたベストセラー。ミリオンヒットの映画。
いいんだけど。
どうせ流すなら、知らない涙がよかった。
なんて呼べばいいのかわからないままで。
当たり障りのないものはないのと同じなんだよな。
その帰り道。
見なくても帰れる帰り道。手を繋いで帰る道。
春の桜や夏の笹、秋の月や冬の鍋が、明日も明後日もずっとそうだったらいいなと願う。
ずっと退屈だったらいいな。
君と平和に暮らせたらいいな。
そう心から思っていて、なにに疲れ果てているかって、これが同じ人間から出てきていることにで。
疲れるなんて言わないで。
私が一番、私に疲れてるんだから。
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このnoteは、覗いて見ていいスカートの中です。