#カワイクイキタイ14「あなたとわたしはよく似てる」
一人で眠る快適さを知っていながら、私たちはどうして誰かと寝床を分け合いたがるのだろう。一人の方がたくさん食べられるのに、味が変わるわけじゃないのに、おいしいものを一緒に食べたいのはどうしてだろう。
私たちが分け合っているのはどうやらモノじゃないらしい。
さみしさの形が似ていればいい。かなしみの形が似ていればいい。どうせ分からないんだったら、全然分からないよりちょっと分かった方がいい。よろこびとかおどろきも、なんとなく似てたらいい。同じじゃなくていい。あなたとわたしはよく似てるから、似てないところも大事なんだよ。
干した下着が風にあおられて、機嫌よく泳いでらっしゃる。外に下着を干すなんて、なんて、つまんないこと言わないで。私は「魚みたいだね」って話がしたかったのに。
でも難しいところなんだけどね、これは「『魚みたいだね』って話をしようよ」って言ってする話じゃないんだよ。わかる?分かんないか。
雨の音も相まって、とても美しかったのに。せっかく私たちだけだったのに。
私のかなしみに冗談でもおめでとうなんて言わないでほしかった。私のかなしみに、これでよかったんじゃない?なんて、知った口利かないでほしかった。なんも分かってない。なんで分かんないんだ。なんで分かんないんだ、こんな簡単なこと。
想像力は愛だ。想像力を欠いた言葉は全部「あなたが大切じゃない」の意訳だ。想像力を使った言葉は全部「あなたが大切です」の意訳だ。
嫌がることをしない。喜ぶことをしたい。一緒に住んでる猫までかわいがること。一口ちょうだいと言わなくても一口くれること。かなしみやさみしさを想像すること。自分のことにするんじゃなくて、自分のことのように想像すること。
油断していいよ。ここにあなたを攻撃するものはなにもない。お腹見せてくれてうれしい。大丈夫、傷付けない。やわらかい部分見せてくれてありがとう。守ろう。どうかゆっくりと眠れますように。
だって、あなたもわたしも、自分を傷つけない相手の前でしか、安心して眠れないのだから。