#カワイクイキタイ8「どうせなら楽しく傷つけて」
いつか、とか。だれか、とか。そんなの別に興味ないから。今、あなたがみててよ。
たくさんの顔が無い人、やたらと声が大きい人。あたかも正義であるかのような、あたかも正解であるかのような、優しいふりして近づいてきてブスっと刺すのは卑怯じゃない?信じた私がばかだったなんて悲しいこと言わせないで。信じていたのに。信じていたのに。
悲しみと怒りを、間違えないでいたいのです。悲しみと怒りは、とてもよく似ているので。
なにを選んでも、どこに行っても、愛されもしないし天才になんてなれない。誰も見てないし誰も聞いてない。どうせ傷つけ傷つくなら、私はあなたに傷つけられたい。近くにいる理由なんかそれで充分。さ、存分に傷つけて。その代わり優しくね。せっかくなら楽しくね。
知ってる?誰もがうらやむあの人は、夜のお酒がやめられなくて彼女に捨てられたんだって。誰もがうらやむあの人は、誰も居ないベッドで一人夜な夜な泣いてるんだって。私がなりたいあの人にも、ああなりたい人がいて、あの人がなりたいあの人にも、ああなりたい人がいるんだって。
みんな、世界で自分だけがひとりぼっちなんだって。
脳みそと心を殺して満員電車に乗っている。へとへとになってまで、時給1350円で作るささやかな生活。仕事帰りに飲みに行って、家に帰れば君が居て、休みの日には出かけて、なんてことない毎日の、こんなにも誇れない暮らしの中に居て。こんなにも生活で、こんなにも窮屈で、こんなにも苦しかったのに、逃げだした今もなにも楽になってない。こんなの聞いてない。だったら、どうして私は。
進むって、前に?後ろに?なにに喜んで、なにに悲しんでいいのかもう分からないね。なにを失って、なにを拾ってきたのかもう覚えてないね。ずっと願ってたはずなのに。一生懸命生きていれば、いろんなことが大丈夫になって、いろんなことが楽しくなるって信じていたのに。どこまでいっても、どこにもいけないままだ。
ならせめて選びたい。どうせ傷つくのなら、私はあなたがいい。あなたに傷つけられたい。私を傷つけていいのは、あなただけということにしよう。勝手に部屋に入って、むちゃくちゃに散らかしていい。勝手に本棚の本、読んでていい。カギは開けとくから、いつ来ていつ出て行ってもいい。今日がもし最後の日でも、思い残すことはなにもない。そうやって過ごそう。できるかな。できるよ、きっと。