#カワイクイキタイ16「虎と苗」
目があって、会釈するだけの世界線。愛想笑いする世界線。挨拶をする世界線。当たり障りない会話が始まる世界線。目が合うと嬉しい世界線。手を繋ぐ世界線。抱きしめる世界線。2人だけで話をする世界線。
顔も名前もしらない世界線。すれ違っても気付けない、話したくても話せない、あなたをしらない世界線。
いろんな世界があったはず。だったら、本当によかった。なにが足りないのかさえ気付けない、そんな恐ろしい世界にいるくらいなら、出会ってしまった方がずっといい。出会えないことの方がよほど恐ろしい。やっぱり、出会いたくて出会ったのか。
愛おしい日々は残さないと残らない。それも悪くない。見直すことも見せることもない。確かに積み重なっていればいい。一日、一ヶ月、一年かけて。さよならは嫌。枯れるのを待つ切り花より、水をやって育てる苗がいい。枯れてもいいし、咲いてもいい。花が咲くなら、どんな花でもいい。ブサイクでいい。どうせ綺麗だから。
誇り高く、晴れ晴れといたい。プライドはいらない。謎の自信もいらない。ただ素直に自然でいたい。どんなことも私を惨めにはできない。私は惨めにならない。悠々と、誰にも傷つけることができない、誰のことも傷つけない、敵視も嫉妬もされないしない、あなたのようにいたいです富士山。
どこにも行けないでいい。どこにも行く気がないのだから。部屋の窓から街灯の光が入ってくる。ネオンだったらよかったのに。『天使の涙』みたいで。この部屋に蔓延する孤独や怠惰や悲しみですら、映画にしてくれたかもしれないのに。
つまらないのが一番よくない。簡単なことはとてもつまらない。
今なにを考えているか。今なにが欲しいのか。想像するのは喜びじゃないか。聞くもんじゃない。思うものだよ。
ただその人をよく見ていればいい。声をよく聞いていればいい。だんだん分かってくる。些細なことがヒントになる。苗が伸びる。分からなかったあなたのことがなんとなく分かる。その時はじめて、言葉がいらない。言葉がいらない瞬間を、言葉を尽くして育ててる。
欲しいものを、欲しいときにあげたい。欲しいものがなにか考えたい。考えることを、大変だとか面倒だとか思いたくない。思うわけがない。
そんくらいのことはできると思うよ。どうしようもない私でも。明るくも元気でもないけど。ニコニコしてないけど。性格も口も悪いけど。一緒にいてもあんまり楽しくないかもしれないけど。ちゃんと嬉しいとか楽しいとか愛おしいと思っているのが、無かったことになりませんように。
喜びでいましょ。悲しみや、苦しみじゃなくて。誰かや何かの代わりじゃなくて。枯れても咲いてもなんでもいい。枯れるなら要らない、咲くから好き、そんなんじゃないよ。
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