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小鳥のようにうたいながら 2021( 皐月 May 〜 葉月 August)


そんなこんなで春には新しい生活となりました。
心の奥の方をきゅうきゅうと締めつけていた何かがちょっとゆるんだのかもしれません。
うまく呼吸ができるようになったような感覚です。
無意識のうちに 頑張りすぎたり我慢していたりすること、ありますよね。


春から夏へ
まだまだ世の中は不自由を強いられていたけど、
みんな ただ立ち止まっているわけではありませんでした。

難局に直面した時こそ、良くも悪くも本質や本心があらわになったりします。
秘めたパワーや本領を発揮することもありますね。

自分のほんとうに必要なもの、心地よいもの、安心できるものを求めて 選択をするという機会も多かったと思います。
なんとか より良くなるようにと今できることを模索し続けます。

時は止まってくれません
前へ進むしかないのですね

落としどころをさぐりながら
折り合いをつけながら
少しずつ前へ前へ

どうか、深呼吸を忘れずにね。



***

皐月 May

⭐︎さしかかる遠心力にのまれつつ二人三脚 百年時代

⭐︎針穴は小さくなってゆくばかり差し伸べられるのあたたかさ

⭐︎ 母は花、花は母なり スズランの咲いて知らせる五月、母の日

⭐︎ドレスよりエプロン姿がらしいよと君の好物ならぶ食卓

⭐︎今ならば言えると思う「どこでも」じゃなく「ペンギンを見にいきたいの」

⭐︎溜息のわたしのブルー吸い込んで溶けるガラスの向こうのうみへ

⭐︎スクランブル交差点の主張しあうサイン見上げて信号は赤

⭐︎大げさな広告のエクスクラメーション自分に甘くなりがちな雨

★「パートナーになりませんか」と掲示板「時間ください」と視線を逸らす


水無月 June

⭐︎ 待ち人来ず、失せ物出ず、の半年目 来年の春に待ち合わせしよう

⭐︎いつもなら気にせぬはずのそよかぜにゆれる前髪気にしつつ 初夏

⭐︎目を閉じて闇夜の空に浮かぶとき どこまでいけば星になれるの

⭐︎立葵 恋するように咲いてゆく紅さす空は青春を過ぎ

⭐︎茶と花を香りでえらび盲目の父へ届けるみちしるべかな

⭐︎父の日に こさえるいなりじゅんわりと少し甘めに少し柔めに

⭐︎ まるっこい矢印みたいに空を指し雨からそっとわれを守りつ

⭐︎ どうしたの、ここへ入っておいでよと さういふものにわたしもなりたい

★さすらいのきみ 今ごろはどのあたり?苺月夜はまた雨となる


文月 July

⭐︎カーテンの外されてから三ヶ月 がらんどうの窓を拭う雨

⭐︎やわらかな風はらむレースカーテン 憧れていたウェディングドレス

⭐︎ 天の川 雨見つかじるカステラのザラメのごとく底にひそめり

⭐︎君がため短冊もなく笹もなくジャドウを赦すドウダンツツジ

⭐︎後ろ姿 鋏を知らぬ髪柔きポニーテールとゆれる兵児帯へこおび

⭐︎帰り道きみと頬張る愉しさもまたおあずけのベビーカステラ

⭐︎ 人の波 ひとりじゃないから絡まってめんどくさくてあたたかいのよ

⭐︎傷つけず君から皮を剥くように はずした薔薇の棘はもう過去

★目に見えぬみちまっすぐにゆく尾翼 明日にはどこかへ辿り着きたり


葉月 August

⭐︎置き去りのラケット ガットの切れたまま十五のころのわたしみたいな

⭐︎引退試合 おわりを告げる笛の音とアウトラインの毛羽立つシャトル

⭐︎ぷかぷかと遊び疲れた夕暮れの波打ち際にのこる足跡

⭐︎海の家閉ざす浜辺はぼんやりと かき氷ぶん淡色となり

⭐︎これだけじゃないよと悪戯な顔で 謎めくような︎螺旋階段

⭐︎ひそやかに「︎無題」につけるタイトルで記憶に残す ソール・ライター

⭐︎幼な子のことばはたどたどしくても「あんぱんまん」はキッパリとして

⭐︎あんぱんは胡麻のあるほうねと伝え お使いの子の帰り待つ母

★画面越しに拍手を送りつづけてる 我が子を抱きしめるようにして

 ー ちる ー



この夏はビッグイベントがありましたね。
TOKYO 2020

2013年 夏、  2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定して日本は沸きました。
もう8年も前のことです。

その後、競技場建設や競技開催地やエンブレムの変更… 次々と出てくる問題をやっと越えたら ウィルスの蔓延。
ついに一年延期する事態となりました。
そして ようやく、という開催目前になっても嘘みたいに問題が出てきて、どうなってしまうのか誰にも予想がつきませんでした。

そして不安の中、試行錯誤の末、宙に浮いたままになっていた『TOKYO 2020』というタイトルのままオリンピックは開催となりました。

パンデミック、緊急事態宣言下での異例のオリンピック&パラリンピック。
当初の賑やかで華やかなイメージとは大きくかけ離れたカタチとなりました。

それでも ぽかんとしていた空白に輪郭が生まれます。
そして、素描に色が入れられていくみたいに 次々とストーリーが生まれていきました。

笑顔や涙 たくさんの感動を詰め込んで、物語は無事に完結しました。
ほんとうによかった。
物語はやっぱりハッピーエンドが好きです。


これも歴史として残ります。
そんな中にわたしたちは確かに生きていました。
これからも様々な時を刻みながら 年表はずっと先へとのびていくのですね。


次回は 9月〜12月を振り返ります
どうぞよい一日を、よい一週間を

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