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FIGHT ON 年をとるってのは細胞が老けることであって、魂が老けることではない。
ガチファンじゃない、有名な曲以外は知らないまま行った私のライブの感想。それゆえ、曲についての感想はほとんど書いておらず、初心者が見たヤザワのライブのただの個人的な感想となっております。ご了承ください。
FIGHT ON EIKICHI YAZAWA CONCERT TOUR 2024。という名の永ちゃんのライブに生まれて初めて参加した。相方マッキーは「何年ぶりだろ?」とウキウキしている。家から近い会場を申し込んだだけで、特に日程を気にしたわけではなかったが、今年のライブの最初の会場で2日目だった(どおりで前の日は取れなかったわけだ、初日だったんだもの)。
さて、実際には30年以上ぶり参加のマッキーと、初めて参加する私は、もちろんタオルを持っていない。タオルとは何か。おそらくファンでなくても観たことのある、ゼット(Z)の文字が大きくデザインされたYAZAWAのタオルのことだ。赤とか黄色とかカラフルなのがいろいろある。コンサート会場に行くまで買う気は全くなかったのだが、物販のテントに、色とりどりのタオルが縁日のたこ焼きやお好み焼き屋の看板のようにずらりと飾られているのを見ているうちに「買うか」となった。マッキーは黄色、私は黒に色とりどりのタオルを購入。
タオルは首にかけるのではなく、どちらかの肩の片方にだけかけるのが正しい持ち方であると、マッキーに教えてもらう。周りを見渡すと、老若男女すべての人が確かに片方の肩にだけタオルをかけて歩いている。
そのタオルは、ある曲の時に使われる。会場にいるすべての(タオルを持っている)ファンが、一斉に放り投げるのだ。
ファンの格好についても書いておきたい。白いスーツに白いスニーカー、中は黒に星一つのイラストのついたTシャツ、白い中折れハット(黒いリボン)が正装である。アイドルのライブに推しの色の服を着てグッズを持っていくようなのと同じ(多分。行ったことないので間違っていたらごめんなさい)。私は人生の中で初めてあんなにたくさんの白スーツの人を見た。ちょっと目立ちたい人は、スーツが黄色やオレンジや赤なんかになる。確かに目立つ(が、カッコよくなるかはその人による)。白いスーツでない人たちももちろんたくさんいるが、黒い革ジャンとか、リーゼントとか、女性は茶髪とかワンレンとか(死語?)も散見され、みんなそれぞれ気合を入れて来ている感じ(そして昔を彷彿させるカッコ……)。それなりにいきがった感じのチーマーみたいな(死語?)若者のグループもいましたが、圧倒的雰囲気を醸し出す方々の中ではとてもおとなしくちんまりと開演を待っていたのも印象的だった。
マッキーは白いパンツに黒いTシャツ、黒の上着、黒いハットでの参加で、いつも小田さんのライブに行くのとあまり変わらない格好だったが、小田さんのライブ会場では目立つ彼が信じられないぐらい周りになじんで目立たなくなっていたのがおかしかった。
コンサートが始まるまでの時間というのは誰のライブでも、開場を待ってグッズを買ったり、友達をまったりしている人たちから醸し出される空気がポジティブな感じで割と好きだが、今回もそういうライブを楽しみにしているウキウキ感と、待ちに待ったこの時!っていうちょっとした緊張感と、いつもと違うちょっとおしゃれしてきた気合とかが混ぜ合わさって(そしてほぼみんな白スーツだから)非日常なイベントっぽさが増して、始まる前から相当にいいなーと思った。いいオトナが仮装みたいな格好して並んでいるのもちょっと滑稽と言えば言えなくもないけど、それを上回る素敵さがある。
さて、そんな中、いよいよ開場となり、並んで会場の中へ。
私たちの席はスタンドながらも真正面で、見やすく、あとからくる人たちも「おっ、いい席ですね、楽しみましょうね」なんて言いながら座席につく。そういう、一体感というか、ナカマというか、知らない人同士だけど永ちゃんファン同士ですね(笑顔)みたいな雰囲気はとても心地よい。
8割がた席が埋まったかなというあたりで、アリーナ席から一人が「永ちゃんコール、始めさせていただきますっ!!」と立ち上がったかと思うと「えーちゃん!」と叫ぶ。周りが「えーちゃん!」と答える。会場が大体半々になって「永ちゃん!」「永ちゃん!」と続く。
こ、これが、コンサート前に送られてきた注意事項にあった「永ちゃんコール」か! 通常誰のライブもコンサート前になると「注意事項のメール」は送られてきて、例えばコロナの時は「マスク着用で、声は出さないでください」みたいなことだが、ヤザワは一味違う。「『永ちゃんコール』はコンサート上演中は禁止です」はい。「ライターなど火器の持ち込みは禁止です」まあ昔はねタバコ持ってる人いればね。今はまあだいぶ減っているでしょうね。「飲酒者の入場は禁止です」ちょっとおかしい。「入場の際に飲酒チェックをすることがあります」ふむふむ。「酒類の持ち込みは禁止です」「場内で飲酒を見つけた場合は退場していただきます」だいぶ飲酒に対してはいろいろ何回も書かれている。「周囲を威圧する服装(団体を思わせる服、日の丸の刺繍)の方の入場は禁止します」「コンサート会場の外での旗振り禁止」ハ、ハタ振り?
大学生の頃(大昔)、サークルでドライブに行った帰り、偶然にも横浜アリーナの脇を通ったところ、ずらっと並んだ改造車(ナンバーはヤ・ザ・ワ、830)の前に特攻服の皆さんがおり、私たちは「目を合わせちゃだめだよ」とか言いながら通りすぎた思い出がある。『団体を思わせる服・日の丸の刺繍』ってあれねーとしみじみする私。旗も、あったかもねぇ……
しばらくすると、最初に音頭を取った人が「ありがとうございましたーっ!!」と言って深々とお辞儀をすると、みんなが拍手をしてコールが終わる。すると別なところから「永ちゃんコール、始めさせていただきますっ!」と誰かが立ち上がり、「えーちゃん!」「えーちゃん!」と始まる。終わりにはちゃんと「ありがとうございました!」と言ってお辞儀をする。そう、ヤンキーとは(あ、言っちゃった)礼儀正しい人たちなのだ。スタンド席も、端からウェーブが沸き起こる。タオルが振られるので、見ていてカラフルだしみんなの「うえーい」という感じがウェーブに乗って会場中を巡っていくのは、会場自体がこれから何かを生み出すために脈打っているみたいに見えた。
そこで、マッキー(ヤザワ上級者)が私(ヤザワ初心者)にアドバイスする。タオルは端を握ったまま、手首を使って上に向かって振るようにするのが正しいタオル投げの方法とのこと。そうじゃないと、タオルが前の人の頭の上とかに落ちちゃうでしょ、迷惑でしょ。ヤンキーは、周りの人にも配慮できるのだ。
そうしてそうして、時間通りに会場が暗くなると観客は一斉に立ち上がり、拍手と歓声が永ちゃんを出向える。ノリノリ気合満々の永ちゃんが登場すると、声と拍手が一層大きくなる。70歳を過ぎたという話だが、動きも歌声もすべてすべて若くカッコいい。魂は老いていないのだ。
そう、永ちゃんは、カッコよかった。たぶん、20代の私だったら、カッコよいとは思わなかったと思う。昔はカッコつけているような気がして、興味がなかったけど、それは食わず嫌いというものだったのかも、と動くヤザワを見ながら思う。年をとるってのも悪くないな、こうやって昔興味がなかったものも好きになれるんだな、と思う。
そのカッコよさって何かって言うと、実は格好つけていないところだと思う。でも一生懸命歌う、踊る、聴きに来たオーディエンスを楽しませようとありったけの力でステージをこなす、そういう格好つけてじゃなくて、真摯に仕事に向き合っている姿が格好いいと思うのだと思う。
自分は自分の仕事に真摯に向き合っているだろうか、と考える。手際よくやるのと手抜きをするのは全然違う。やらなきゃいけないことが多くても手を抜かずに一生懸命、仕事に向かい合っているだろうか。もし永ちゃんが適当に歌っていたら、聴いている人たちは「適当だな」って感じて、応援しなくなるかもしれない。自分も仕事相手に「適当だな」って思われていないだろうか、きちんと相手にも向き合っているだろうか。永ちゃんの姿をみてそんなことも考えてしまう。
ヤザワ初心者なので、うっかりアンコールの前の時間にトイレに行ってしまった。というのは、思いのほかアンコールが始まるまで時間が短く、手を洗っているうちに前奏が始まってしまったのだ。隣で同じく手を洗う女性と「あら、あら、始まっちゃった!」と慌てて会場へ入る。ヤザワ初心者でも知っているあのタオルを投げる曲だったのに! で、通路を小走りしながらタオルを投げる(アドバイス通り端っこを握ったままなので、タオルを落としたりしない)。とにかく老いも若きも男子も女子も皆タオルを放るのである。スタンド席から見ると圧巻である。その「止まらないha~ha」が終わってやや息切れしていると続いて「トラベリンバス」が。これもタオルを投げるのだ。そして、これがまた、楽しい~。トラベリンバスは永ちゃんには珍しい(個人の感想です)メジャーコードの曲なので、ウキウキ感が増す。2曲続けてタオルを投げると、ちょっとした運動にもなってよい(普段どれだけ運動不足なんだって話)。
アンコールは曲の間奏に「永ちゃんコール」が許されているので、開演前にやっていたあの「永ちゃんコール」が会場中で起こる。すごい。ヤザワ上級者マッキーによると、昔はずっとこういう異様な雰囲気で、火のついたライターを投げて退場させられたヤツもいたとか(だから今は火器持ち込み厳禁なのね)。今は観る方もみんな年取って落ち着いてきたのかなーと言っていた。
アンコールが2曲終わると、永ちゃんは手を振りながらステージから消えていった。会場の灯りがつく。ジャスト2時間。すごい。ほかのライブでは味わったことのない、密度の濃い一体感のある2時間だった。
帰り道、会場から出た観客は、もちろん全員オラオラしていた(ように、見えた……)。
最後に、タイトルに書いた「年をとるってのは……」というセリフは、今回のツアーのサブタイトル?みたいに書かれていた言葉。この言葉がとっても気にいったので、タイトルに書いてみた。Fight On(戦い続ける)っていうコンサートツアーの名前もかっこいいよね。普段なるべく戦いは避けたい私でありますが、生きていくために何か(自分自身かもね)と戦わなくてはならない時もあるわけで、そんな姿勢を改めて教えてもらったようなライブであった。
ライブ後、通勤の車のBGMはヤザワになった。オラオラ運転をしないよう気をつけている。