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闘将の系譜 Vol.1~夢へ真っすぐ(前編)~

いよいよ聖地へ挑む

第103回全国高校サッカー選手権大会は、今日1月11日(土)準決勝2試合が開催される。会場は、高校サッカーの聖地「国立競技場」。開会式・開幕戦を除き、この夢舞台で試合ができるのは全国でたったの4チームのみ。
前橋育英・東福岡・東海大相模 そして流経大柏。

流経大柏は、名将・本田裕一郎氏(現・国士舘TA)が、それまでのサッカー指導歴とは異なる、新たな挑戦として土台を築いてきた場所である。

選手権の出場は今大会を含めて8回。
初出場は19期生で第84回大会。
21期生が86回大会で初優勝。高円宮杯とのダブルを達成。
大前元紀選手(現・南葛SC)がインターハイを含む3大大会全てで得点王。
24期生が89回大会ベスト4。
28期生が93回大会ベスト4
31期生が96回大会準優勝。3
2期生が97回大会準優勝。
35期生が100回大会1回戦敗退。

高校サッカーファンの方であれば、当然、千葉県の難しさをご存知のはず。そのなかで、これだけの勝率と千葉県2大会連続出場という記録は、まさに強豪・名門と呼ばれるに相応しいチームである。

過去の戦績は記録でしかない。強豪・名門と呼ばれる流経大柏。現在3年生である38期生は全国大会の経験がない。
同じ千葉の強豪・名門であり最大のライバルである市立船橋、柏レイソルとの提携により強化を図ってきた日体大柏。八千代、習志野、他の私立勢力・・・・。

全国大会という大きな壁を幾度にもわたってライバルに阻み続けられたが、流経大柏の歴史の轍に、自分たちの新しい歴史を刻もうと闘い続け、いよいよ「聖地・国立競技場」へたどり着いた。

2人の闘将

38期生の特筆すべき点は、多くのメディアが記しているとおり「2人の主将」体制。個性派軍団をまとめあげるのは本当に大変なこと。皆、悩み苦しみ、チームを牽引してきた。過去にはシーズン途中に主将が変わることは、時折あったが、私が知るなかで2人の主将というのは記憶がない。

38期生の主将は佐藤夢真君(FC多摩)と奈須琉世君(柏レイソルA.A. TOR'82)。彼らは「全国を知らない世代」と言っていたが、この2人が共に支え合い、仲間と共に駆けて遺してきた流経の轍には、今、新しい歴史が刻まれようとしている。

彼らは主将でありながら、同じポジションを争うライバルでもある。他チームにあるだろうか、2人の主将が同じポジションを任され共闘しているという状況が。3回戦でぶつかった熊本県代表の大津が世代最強のセンターラインと言われていたが、世代最高の2人の主将も、全くひけをとらないどころか、それを上回るインパクトがある。

聖地で朱く燃える2人の龍にも期待大柏。

夢へ真っすぐ

この記事で最後に語りたいのは、闘将・佐藤夢真君である。縁あって彼とは中学生時代から小さい関わりがあった。記憶がある「日本一を獲ります」と言ったことを。

そして、その約束が果たされる時が近づいてきた。知る人ぞ知る街クラブとなった「FC多摩」出身。今ではレギュラーの多くが、J下部へ進み、かつてほど流経大柏の門を叩く選手は少なくなった。

彼がどのような選択肢のなかで流経大柏への進学を決意したのかはわからないが、千葉県に来ること自体、自ら茨の道を選択し、しかも流経大柏であったことは、今でも嬉しく思う。

2023年度シーズンの高円宮杯プレミアリーグにて彼がスタメンデビューしたのは、第14節AWAYの尚志戦。当時、チーム状況が停滞しており、2年生の実力者が少しずつスタメンに名を連ねていた。そのなかで、守備の一員として抜擢されたと予想している。

しかし、緊張やプレッシャー、チームの停滞、そして尚志の圧力が影響したのか、ゲームに入ることができておらず、パスミスが散見され、彼のサイドから危機になる場面が重なった。結果、早い段階での交代となった。ほろ苦いデビューとは言い難い、そんな状況であった。

最高学年となった今シーズン。彼の主戦場は、プレミアリーグではなく、2つ下のカテゴリーとなる関東プリンスリーグ2部。2つ下とは言え、強豪ひしめく関東のリーグ。そのレベルは相当なものである。

トップチームがプレミアリーグで首位を走り続けているとき、関東プリンスリーグを闘うBチームは、苦戦を強いられていた。

初戦こそ桐光学園に2-2で引き分け、前橋商業には勝った以外は、負けや引き分けが重なり、思うように勝点を積み上げられないでいた。しかし、その重く苦しい時間を「主将」として引っ張っていたからこそ、融合の架け橋になれたのではないだろうか。

首位を走るトップチームが首位を走る好調さを維持している状況で、わざわざメンバーを変える必要性もない。悔しさやもどかしさ、様々な感情を持ちながら、それを簡単に表出せず、トップの主将である奈須君と舵取りを継続してきた。

インターハイの切符を、最大のライバル市立船橋へ奪われ、時を同じくして、プレミアリーグの順位は下降。

チームを再び盛り上げ、選手権の優勝を奪還し、日本一へ登りつめるために、佐藤夢真が這い上がってきたのである。

佐藤夢真君(FC多摩)

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