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たまには車でのんびりと
「明るい場所」に行きたくなって、車で出掛けることにした。運転手は自分、同乗者はなし、珍しくひとりの時間。
ここ数日は雨も降らずに、良いお天気だ。いや、お天気良すぎて暑すぎる。
ずっとお天気だから、だいたい昼間は明るいけれど、それにしても「明るい場所」ってどこだ?車で川沿いを遡る。駅を越えて、小さなトンネルに入って、そこから出たらT字の交差点。
どっちに行こうかな?どっちに行ったら明るいかな?
信号待ちの間に考える。右に行ったらスタジアム。左に行ったら高速道路の乗り口が出てきて、その先にはゴルフ場。
どっちでも、大差ないか・・・信号変わる前に決めなくちゃ。
スタジアムの方にウインカーを出してみる。カッチカッチカッチ。
青に変わったら、周りの車が一斉に動く。自分も一緒に動き出す。
スタジアムに向かって道なりに進むと、またトンネルだ。さっきのよりは少し長いトンネル。でも車の進む先に出口の光が見えている。
あっという間に通り抜けたら、あれ?スタジアムに向かうと思っていたのに、高速道路の乗り口が出てきた。そうか、こっちにもあったんだ。
スタジアムはこの先、緩やかな坂を下ったところ。
あと信号2つでスタジアム前の交差点だ。
そのあとはどっちに行くんだっけ?
右に曲がれば郊外から田舎道。左に曲がれば、長いトンネルの先の街中に出られる。まっすぐ行くと住宅街。
街中へ出るほどの時間はないし、住宅街にも用事はないので、また右に曲がってみる。
郊外の工業団地を通り抜けたら、あたり一面平らになった。
「高い建物がなくなった」
目に入るのは、田んぼと畑。時々見えてくる民家もせいぜい2階建て。その庭先の駐車場に止まった軽トラ。荷台にはプラスチックケースが山積みされている。
のどかで氣持ちいいな〜と、広がる景色を楽しみながら、車でゆっくり走っても誰の迷惑にもならないのがいい。
対向車はほとんど来ない。時々すれ違うけれど、みんなそんなに慌ててない。
「そうだなー慌てても仕方ないね」
そんな氣持ちになってきた。なんかいいな、のんびりしてて。
そういえば、行き先を決めないでドライブするなんて、いつ以来だろう。いつも時間とスケジュールに追われて、ここの次はどこで何をして・・・このところそんな日々が続いてたな。
家でゆっくりする時間も少なくて、のんびり出掛けることもほとんどなくて、何かに追われる生活。今は仕方がないと割り切っていたつもりだけれど、やっぱりどこか疲れてたんだ。
疲れていたら、優しくなれない。疲れてることに、さらに疲れる。
茶筒みたいに寸法きっちりに納まってしまうと、蓋が外れなかったりする。茶筒はきっちりハマる方が茶っぱが湿気ないでいいけれど、ハンドルには「アソビ」が必要だよね。ハンドルがちょっと揺らいだぐらいですぐに車の方向が変わったら危ないもんね。
そんなことを思いながら、遠回りでスタジアムまで戻ってきた。
「あ〜!楽しかった!」
氣がつくと、自分の心が明るくなってた。
そうか・・・ここに行きたかったんだな、私。
心が行きたがってた「明るい場所」の意味がわかって、ホッとしたドライブになった。