【大人バレエ日記】大人バレエは、生かさず殺さず
推定年齢、たぶん60代後半ぐらいかなあ。
大人バレエ界は年齢不詳なので、ひょっとするともう70に突入されてるかも?なのだけど、とにかく練習熱心な方と今日もレッスンで一緒だった。
昨年、私が初めて舞台に出た時も出演者として同じ楽屋で、その方はこれまで何度も舞台に出た経験があるということで、いろいろ教わった大ベテランさん。
普段でも受けるレッスンが私とよく一緒で(というかたくさん出ておられるので必然的に一緒になる確率が高いということなのかも知れない)今日は同じバーについたのでちょっとお話をした。
聞けば、昨日もはるばる遠方にある、とある教室までレッスンに行かれてたそうで、今日も朝から別の先生。。まさかとは思うけど、このお年で毎日レッスンされてるんだろうか、とそのスタミナに驚いた。
私は50代半ばだけど、毎日続けてレッスンなんかしたら脚がもたない。体力も回復しきれないので引き上げ力も落ちて満足にできないと気付いてから、レッスンは間を空けて週に多くても3回までと決めている。
若い子は毎日どんどん動いてコツコツ練習を積み重ねていけるけど(逆にそうしないとダメなんだろうけど)、私たちはとにかく「無理は禁物」。
カラダ第一笑
なので、その練習熱心なアラウンド70さんも、口に出しては言わないけど「無理しないほうがいいのに」と心の中ではずっと思ってた。
だって体力、気力はなんとか続いても、体のあちこちは悲鳴を上げてそうだったから。
歳をとると、脚はどうしてもO脚になり、股の間が開くというか、内腿の締まりが悪くなって歩くたびに体が左右に揺れる。
その方もバレエで鍛えているとはいえ、やはり歩き方にどうしても老いが見られ、それが前より進行している気がしていた。
以前から「股関節が痛い」とよく言っておられたけど、パドプレでさえ足を引きずるようにし、なのにグランバットマンを勢いで上げて、そのあと顔を苦しそうに歪めているのを何度も見た。
私と目が合うと「やりすぎなのはわかってるの。ちょっと休まなくちゃねえ」と苦笑いしながら、それでもじっとしてられないんだろう、変わらずハードにレッスンし続けておられるようだった。
コロナ自粛でレッスンも強制終了がかかり、自粛後すぐにお会いした時は顔つきもちょっとふっくらとされていて、足もだいぶよくなったと喜んでおられたのに。。
今日お会いして、またストイックに逆戻りされた様子だったので、舞台でも近いのかと聞いてみるとそうじゃないと言う。
そして寂しそうにこう続けた。
「舞台はもう。。股関節がやっぱり痛くて、脚が満足に上がらないのよ」
・・・そうなんだ。。あんなに好きだった舞台を諦めるなんて、よっぽどなんだろうな。
とすると、去年ご一緒した舞台が最後の?
そう思うと、自分のことのように切なくなった。
「あなたはまだどこも痛くない? 動けるうちに舞台も出てたくさん楽しんだほうがいいわよ」
実感のこもったアドバイスに、深くうなずく。
そう、大人バレエもいつかは終わりがくる。
多分それは、どこかに「痛み」を伴って、私たちを夢から遠ざける。
練習してもしても1ミリ上達するかしないか。
でも練習しないとその1ミリどころか1メートルぐらいすぐ後退する。
かといって練習しすぎると、ケガというレッドカードを渡されて泣く泣く引退。
大人バレエの道は、かくも険しく、哀しい。。
少しでも長くその道を歩き続けられるように、自分自身で「生かさず殺さず」身体のあちこちを大事に使い続けていきたい。