共通テスト地理の「対策」は何をすればよいのか?勉強法を具体的に解説します。
多くの受験生、特に理系受験生にとって地理は副教科。
できるだけ時間をかけずに共通テスト地理を対策したい
90点とは言わないが、本番で80点くらいは取りたい
他の科目は順調に対策できているのに、地理だけ模試で点数が伸びてこない
このような考え、お悩みを持っている受験生は多いと思います。
この記事では共通テスト地理で「80点」を取ることを目標として、勉強時間を最短にする具体的な勉強法を解説していきます。
共通テスト地理で絶対にやってはいけない勉強法
正しい勉強法について述べる前に、「絶対にやってはいけない勉強法」を紹介しておきます。
それは「一問一答」「穴埋め問題集」を用いることです。
これらの教材で学習することは、日本史や世界史の学習、あるいは地理でも定期試験対策や私立大学の入試対策では非常に有効です。しかし共通テスト地理では非常に効率の悪い勉強法であると言わざるを得ません。
理由は明確で、「用語を問われる問題は共通テストでは出題されない」からです。
一問一答や穴埋め問題集で重視されていることは、「用語」を解答できるようにすることです。図表の読み取りが出題の中心となる共通テスト地理の勉強では使わないようにしてください。
最低限のインプットのあとにひたすらアウトプットする
では、共通テスト地理の正しい勉強法とはどのようなものなのでしょうか。
それは、「最低限のインプットをしたらひたすら問題を解きまくってアウトプットする」ことです。
前述のように、共通テストでは用語を問われることはありません。
その代わりに、統計や図表など資料の読み取り問題が出題されます。そしてその資料の多くは教科書や資料集に載っていない、初見のものになります。
インプットを完璧にしても共通テストで100点を取れることはありません。
ひたすら問題演習を重ね、初見の問題を解きまくり、「問題を解く力」をつけることが点数を上げるための最善の方法です。
また、共通テストの地理は「受験勉強をしていないと解けない」というものばかりではありません。
身の回りの事象に関する問題が多く出題され、小学生でも解くことのできるような問題もあります。
「まだ知識が十分じゃないから…」
と問題を解くことを躊躇う必要はありません。
参考書を1周読み、地理の世界の全体像が掴めたら問題に挑んでみましょう。
参考書を読んでよくわからないところも、問題を解くうちに意味がわかってきます。そのときにもう一度参考書に立ち返って復習すればいいのです。
市販の参考書を読んで最低限のインプットをする。
共通テスト形式の問題にチャレンジする。
わからなかったところについて、参考書を読んでインプットし直す。
というのが学習の具体的な進め方です。
インプットのやり方(参考書の学習)
なぜ教科書ではなく参考書なのか?
インプットに用いる教材は、市販の参考書がベストです。
教科書を使わない理由は、「情報量が多すぎるから」です。前述したように、共通テスト地理の学習におけるインプットの重要性は比較的低いです。特に最初期のインプットは「アウトプットを開始するための準備」です。
学校教科書は、地理総合と地理探究の2冊を合わせると約600ページもの分量があり、「まず1周」するには少しばかり重すぎます。資料の充実度は下がりますが、要点だけをまとめ直した市販の参考書を1周する方が効率が良いです。
どの参考書を選べばいいか
数ある市販の参考書の中で、どれを使って学習するのがよいのでしょうか。参考書選びに迷っている共通テスト受験生に私がオススメしている参考書はこれです。
駿台の宇野仙先生の「共通テスト地理集中講義[地理総合,地理探究]」(旺文社)です。
理由は「最もページ数が少ないから」です。他の参考書が500ページを超える分量だったり、上下巻に分かれていたりする一方で本書は300ページ以内にすべての内容がまとまっています。「とりあえず1周」するためには最適な参考書であると言えます。
参考書を「読む」とはどういうことか?
よく「参考書を使った学習のやり方がわからない」という相談を受けます。何時間くらいかけて読むのか、ノートにまとめた方がいいのか、マーカーをひきながら読んだ方がいいのか…などです。
筆者のアドバイスは「できるだけ早く、そして速く1周読め」です。
ノートにまとめる必要も、マーカーで重要そうな部分をチェックする必要もありません。参考書に書いてあることはすべて重要なので、そこからまとめ直す必要はありません。だからと言って一言一句読み漏らさないように、じっくり読む必要もありません。繰り返しになりますが、共通テスト地理におけるインプットの重要性は低いです。「まず1周」して、問題に取り組んでからの方が参考書の内容もよく理解できるようになります。
また、1周にかける時間も短い方がよいです。大事なポイントは何回も出題されるので、その解説で何度も同じことを読むことになります。読み物としての流れに沿いながら「流し読み」することが参考書を読む上で最も重要です。
問題演習に数年分取り組んだ後に、時機を見て「流し読み」は何度も行います。最初はピンと来なかったことも問題を解くうちに意味がわかってきます。最初は分からなくて当然という気持ちで「まず1周」し、問題演習と読み直しを重ねて理解を深めていきます。
アウトプットのやり方(過去問の演習)
「アウトプットは質より量」です。共通テストの過去問だけではなく、センター試験過去問、追試の過去問、模試問題集など、ありとあらゆる共通テスト形式の問題を消化していくことが点数を上げるための近道です。
「模試問題集は悪問が多いから取り組まない方がいい」とおっしゃる先生もいますが、筆者はそうは思いません。共通テストで必要とされている「初見の資料に対応する力」はたくさんの問題をこなすことで身に付きます。中には悪問や奇問と呼ばるものも混じっていますが、マニアックな知識を身につけることができると言い換えることもできます。
どの問題から解くべきかの優先度は以下の通りです。
共通テスト過去問
共通テスト追試験の過去問
模試問題集
センター試験過去問(2015-2020)
それ以前の過去問、地理Aの過去問など
1.共通テスト過去問
当然ながら、共通テストの本試験の優先度が最も高いです。河合出版の過去問題集、いわゆる「黒本」で学習することがおすすめです。
教学社の「赤本」との違いは、2015年以降のセンター試験の過去問が掲載されていることです。その一方で共通テスト追試験の過去問は一部しか掲載されていないのですが、2024年現在、「赤本」に掲載されていて「黒本」に掲載されていない3年分の追試の過去問は大学入試センターのwebサイトからダウンロードすることができます。
2.共通テスト追試験の過去問
追試験は本試験よりも少し難易度が高いですが、問題の質は本試験と同様に高いため優先的に取り組むべきです。
特に、「前年度の追試験」だけは絶対に解いておくようにしてください。
大学教員によって組織されている共通テストの作問委員の任期は2年で、1年は本試験の、もう1年は追試験の作問を担当するそうです。そして多くの先生は同じような問題を2年連続で作ります。つまり、前年度の追試験で出題された問題の類題が本試験で出題される可能性が高いのです。実際にそのような例は複数回確認されています。
過去3年分の追試験の問題は大学入試センターのwebサイトからダウンロードできます。
3.模試問題集
模試問題集は、「河合」「駿台」「Z会」「代ゼミ」の4予備校によって毎年出版されています。
その中で最も優先して解いておくべきなのは駿台が出版しているものです。
問題の質が最も高く、悪問や奇問も少なめです。
難易度に関しては模試問題集は全般に高めなので、点数については気にしないようにしてください。本番で80点を取れる人が模試で50点代を取ってしまうことも珍しくありません。点数に一喜一憂するのではなく、「初見の問題への対応力をつける」「知識の穴を発見する」という明確な目的を持って取り組んでください。
駿台の模試問題集を終えた後は、他社の模試問題集に進んでも、次の「センター試験の過去問(2015-2020)」に進んでもよいと思います。
4.センター試験本試験の過去問(2015-2020)
2020年まで実施されていたセンター試験の過去問は、資料の読み取りを伴わない問題が一部出題されるなど共通テストとは異なる傾向の問題も含まれていますが、取り組む価値があります。前述の「黒本」には2015年から2020年のセンター試験地理Bの問題が掲載されています。
5.その他の問題
その他に取り組みうる問題としては、2014年度以前のセンター試験の過去問や、地理Aなどがあります。
しかしこれらの問題には手を付ける必要はありません。ここまでで紹介しただけで本試験4年分、追試験4年分、模試問題集20セット分、センター試験6年分の合計34セットあります。これらの問題を消化していれば演習量としては申し分ないでしょう。
また、2014年以前のセンター試験地理Bの試験は難易度が低く、また統計も現在と大きく異なるものが使われている問題があるため、独学で取り組むのは危険です。
アウトプットの復習のやり方
問題演習に取り組んだ後、それを正しく復習することは案外難しいものです。
共通テスト地理では、同じ問題を反復して解くことで得られるものは少ないです。その問題から得られた知識を抽象化することが大切です。
以下のような手順で復習すれば、問題演習で得るものを最大にすることができます。
丸つけをする
解説を「すべて」読む
新しく得た知識はなにか書き出す
インプットが怪しいところを見つけ、参考書に立ち戻る
1.丸つけをする
説明不要です。点数は特に模試問題集では気にしない方がいいですが、一応計算しておきましょう。
2.解説を「すべて」読む
正解した問題を含めて、解説をすべて読んでください。参考書を読むときと同じように、「流し読み」で、できれば2回読みましょう。
問題解説には、基本的には無駄なことは書かれておらずその問題を解くために必要な知識が端的にまとめられています。インプットの比重を少なくしている分、この解説を読むという行為が重要な学習になります。
正解した問題の中にも、偶然正解した問題や、理解が不十分な箇所がある問題が絶対にあります。完全に理解した上で問題を解けていることの方が少ないはずです。正解した問題の解説の中にも自分の知らないことはないか、「流し読み」しながらも読み飛ばさないようにしましょう。
3.新しく得た知識はなにか書き出す
ここが復習で最も重要なポイントです。例えば以下の問題を解いたとします。
ニュージーランドに該当するものは「イ」、牧草地に該当するものは「A」です。
この問題を解き、解説を読むことで得られる知識は以下のようなものがあります。
イギリスの国土のほとんどは標高200m以下で、低平である(ヨーロッパの多くの国に当てはまる)
ニュージーランドは標高が高い地域が比較的多い(新期造山帯に属するため)
イギリス、ニュージーランドともに牧草地の面積の割合が高い(冷涼で、土壌は肥沃ではないため牧畜が盛んである)
イギリスは森林面積の割合が低い(産業革命前後の過度な伐採による)
ニュージーランドは耕地面積の割合が低い(牧畜が農業の中心である)
このように、問題を解いて得られた知識を抽象化することで「次の問題に活かせるものは何か」を明確にすることができます。それぞれの問題で知らなかったことはなにか、すべて書き出してみましょう。
4.インプットが怪しいところを見つけ、参考書に立ち戻る
最後に参考書を読み返し、インプットの再整理をしましょう。
例えば上で挙げた問題を間違えていたら、「農業」の章の中の「土地利用」の部分を読み直します。また、
「ヨーロッパの中で標高が高い土地の割合が高い国はどこか」
「森林面積の割合が特に高い国、低い国はどこか」
「新期造山帯は世界のどこに分布しているか」
など、連想ゲームのように問題に関連する問いを立て、答えられないところは参考書を読み返すことまでできれば完璧です。
共通テスト地理の勉強法のまとめ
市販の参考書を読んで最低限のインプットをする。
共通テスト形式の問題にチャレンジする。
わからなかったところについて、参考書を読んでインプットし直す。
まずは参考書を1周だけ「流し読み」して、とにかく問題演習に挑戦してみましょう。アウトプットを繰り返すことが共通テストの点数を上げるための近道です。
共通テストで80点を目指すなら地理塾
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この記事で紹介した勉強法を実践する上で大きな問題点になるのが
「解いた問題を正しく復習できるか」
という部分だと思います。
地理塾の共通テスト対策講座では
共通テストで繰り返し出題されているポイントはなにか
解いた問題からどんな知識が得られるか
関連する覚えておくべき知識にはどんなものがあるか
という部分を特に重視した解説を行います。
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