映画『MINAMATA』を観て、水俣のいまを知ってほしい②読書案内
今回は、水俣や水俣病のこと、患者さんのことについてさらに知りたい、学びたい方に、私のできる範囲での読書案内をします。映画を観る前にその背景を知りたい方、映画を観た後、さらに詳しく知りたいと思った方に、参考にしていただければ嬉しいです。ヘッダーは私が撮影した水俣の海(エコパーク水俣周辺)です。右奥に見えるのは国立水俣病総合研究センターで、となりには水俣病資料館があります。この日は天気も良く、とても綺麗な青い海でした。
◆原田正純(1972)『水俣病』(岩波新書)
この本では、水俣病が原因不明の時期からその正式発見、原因の特定に至るまでの経過を丁寧に説明しています。ユージン・スミスが水俣で写真を撮る時期(自主交渉派による活動が行われる時期)までの背景を知ることができる書籍です。著者の原田氏は、今回の映画の原作『写真集 水俣』に「水俣病:医学報告―その歴史と解説」(写真集のP184-192)を執筆しており、患者さんに寄り添って活動を続けた研究者です。
◆石牟礼道子(2004)『苦海浄土―わが水俣病(新装版)』(講談社、初版は1972年)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203535
この本では、水俣病の患者さんが直面した様々な困難、それらとたたかう姿、水俣病の認定を巡る訴訟の経過などを描いています。実際にたくさんの人と接して集められた声が、「方言」で書かれることでよりリアリティを持って伝わります。方言は出身者でないと読みづらいかもしれませんが、水俣で日々を生きる方々に著者が向き合ったようすを追体験できるかもしれません。
◆永野三智(2018)『みな、やっとの思いで坂をのぼる』(ころから)
水俣病センター相思社の永野三智さんが、患者相談のことや、様々な立場の方と対話してきた経験をまとめています。映画に描かれた世界のあと、水俣の地域と人々がたどった道のりを丁寧に知ることができます。患者さんだけでなく、出身者の方がどのように水俣病というできごとと向き合ってきたのかも知ることができます。個人的な感想として、著者がそれぞれの人と接するときの優しさが伝わる本でした。
映画を観て、その背景やその後のストーリーにも目を向けてほしい
ユージン・スミスが写した水俣のすがたは、長いながい水俣病を巡る歴史の一場面です。自主交渉派と呼ばれる人たちがなぜ激しいたたかいをしなければならなかったのか、それまでの背景を知ることで、映画を観るときにより実感を持って登場人物の想いを受け止められると思います。そして、水俣病を巡る葛藤は写真集に撮られた時期で終わったのではないという点も重要です。訴訟を巡る問題だけでなく、地域社会や住民、行政など様々な主体がどのようにこの出来事と関わってきたか、そして今も関わっているかを、ぜひ知っていただきたいです。
この映画で水俣に関心を持った方は、ぜひ一度、実際に足を運んでみてください。水俣市立の水俣病資料館に加え、上で紹介した相思社による案内もおすすめです。修学旅行や大学のゼミ研修なども受け入れているようですので、先生方はぜひご検討ください。個人旅行にプラスアルファで学びを取り入れてくださるのもおすすめです。