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作品の舞台をめぐる旅

 実家の近くの駅で、久しぶりに一人でゆっくり電車を待っていたときのことです。

 高校生くらいの若者が、「この列車にはどうやって乗ればいいですか。」とたずねてきました。乗り方を説明してから、「旅行ですか。」とたずねると、卒業記念の旅行をしているとのことでした。若者が行先だと言う場所に観光地らしいところはなかったので、目的をたずねると、「このアニメの舞台をめぐっているんです。」と作品名を教えてくれました。作品名を聞いたことはあったものの、アニメの舞台をめぐる旅行にやってくる若者と出会うのは初めてで、とても驚きました。改めて調べてみると、自治体が協力して作品の舞台をめぐる旅の案内ページなども開設していました。

 これまで、作品の舞台をめぐる旅が自分自身とつながることがなく、今回の出来事で実感を持つことができました。また、ある地域にそれまでなかった魅力が付与されることについて、これまでは「日々の暮らしのある地域を観光客が意味づけして消費することは…」などと小難しいことを考えていたように思います。しかし、誰かが地域と出会う機会として、こうした旅はとても良いものだなと思いました。

 若者は少し寡黙に見えましたが、「この作品すごく良いですよ。ぜひ観てくださいね。」という言葉ははっきりとしていました。私もぜひ観てみたいと思います。
 
 若者の降りていく駅は私の降りる駅より前だったので、お土産にいくつか買っていた小さなお菓子を渡し、「今回も楽しんで、ぜひまた来てくださいね。」と声をかけました。

 私の実家はいわゆる地方都市で、人が減っていくことのさびしさを感じていました。他出してる私が言えることではないのですが。今回のような出会いに嬉しさを感じるとともに、地元のことをこれからも少しずつ考えていきたいと思いました。

 ヘッダーの画像は、私の好きな『徒然草』で仁和寺にある法師がお参りした石清水八幡宮付近を地理院地図で見たものです。

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