#12 東京
僕が千葉の田舎出身であることはご存知の方も多いかと。最寄りのコンビニまで歩いて20分くらいかかるので当然車社会だが信号がねぇ。交差点の通過は思いやりと譲り合いの精神という世界だ。夏には川に飛び込んで遊び、秋は焼き芋。冬は雪遊びに興じる自然豊かな環境で幼少期を過ごした(春の記憶はあまりない笑)
そんなChira少年の世界を一変させたのがポルノグラフィティの「メリッサ」だった。ポルノにハマってからは、彼らが出演する回は「Mステ」も「HEY HEY HEY」も「うたばん」も全部録画してかぶりついて観てた。ギターを手に入れてからは更に音楽にのめり込んでいった。。。
その頃、特に印象に残っている「Mステ」のライブがある。六本木ヒルズの屋上でポルノがメリッサを演奏してた。演奏はもちろんだけど、キラキラ輝く都会のビルに囲まれてる彼らもまたカッコいいと思った。当時、僕の中でポルノグラフィティは神格化された存在だったので、六本木ヒルズが同じ日本にあることが信じられなかった気持ちも覚えてる。東京という都市も架空のものだと本気で思ってた。それはまるで映画の中の世界だったんだ。
今回はこんなテーマに挑戦。「東京」。
2014年、春の某日。僕はChiraのデビューライブを終えてライブハウスを後にした。見にきてくれたお客さんとどれだけ写真を撮ったり話したりしても初ライブの熱は冷めやらず、火照った体にまだ寒い春の夜風が心地よかった。裏口から出ると、風俗店の前で数人の若い男性がはしゃいでいた。その目の前を歩く塾帰りと思しき女子高生。道路を挟んだ向かい側には、おばあさんが屋台で甘栗を売っていた。
僕はそれらの合間を縫ってタクシーに乗り込み、ホテルへと向かった。生まれて初めての東京でのライブ。僕はソロなので、たった一人で東京のステージに立つことが怖くもあり不安でもあったが、それ以上に闘志や情熱を燃やしていた。たぎる想いをギターに叩きつけ、己の全てをメロディに乗せて吐き出した、そんなライブだった。窓から見える夜景が、燃え尽きた僕を祝福してくれているかのようだった。
予算の都合上、ホテルはお世辞にも快適とは言えない宿だった。ビジネスホテルを謳ってはいたが、実際のところそこは独房のような作りで本当にベッドしかなかった。トイレ、シャワー、洗面所は共同だ。全館禁煙だったが、その理由は部屋が狭すぎて火災の恐れがあるから。刑務所みたいな部屋だったが、弁当とビールを腹に流し込んで幸せな気持ちに包まれた。
翌朝、宿を出るとき受付のおばあさんのイントネーションがおかしいことに気づいた。さりげなく出身を尋ねると外国の方だった。愛想の悪いおばあさんは、さっさと事務室に姿を消したが、その背中を見て彼女がここで働く理由はなんだろうとぼんやり考えたりした。
朝食に入った牛丼屋では、金髪に青い目をしたビジネスマン風の男たちが英語で言い合いしていた。彼らが東京に来た理由は仕事だろうが、だとすれば彼らにとって東京とは仕事か?
受付のおばあさんにとって東京とは何なのだろう。夢や憧れ、希望をギターと一緒に背負って上京した僕にとって、東京とは夢であり、目標であり、それはポルノグラフィティだったり六本木ヒルズの夜景だったりしていた。
26歳になった今でも、僕にとって東京はある種架空の存在だ。八重洲の居酒屋に集まるおっさんも、銀座のバーで静かに飲む紳士も、原宿で遊んでる女子高生も新大久保でハットグ食べてるOLも、それぞれが背負う東京はそれぞれに違う。様々なバックグラウンドの人たちが集まってできた「東京」という文化は、蜃気楼やオアシスのように儚いもので、だからこそ人は惹かれるのだろうか。東京はやっぱり未だに架空の存在だ。そんな架空の都市で飲んだりライブしたりしてることもまた不思議な感覚。
あなたにとって東京とは何ですか?
Chira
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