地ビール?クラフトビール?
いつの間に地ビールからクラフトビールになったんだろう。
子どもの頃は、間違いなく「地ビール」と呼んでいたと思う。
でも、最近は「クラフトビール」の方がよく聞く気がする。
酒税法改正で地ビール製造が解禁されたのは、1994年4月。
地ビール人気の火付け役とも言われている大阪の箕面ビールが作られ始めたのは1997年。
いつ、クラフトビールと呼ぶようになった?
そんなことを考えながら、『毎日新聞記事データ集』という新聞コーパスを使って、実際に調べてみた。
1994年から2020年の計17年分。
全国紙における、「地ビール」の使用件数は552件、「クラフトビール」の使用件数は177件。
これだけのデータであれば、「地ビール」の方がよく使われている、と結論づけることもできる。
でも、もうちょっと踏み込んで、発行年ごとの使用状況も見てみた。こちらも全国紙のデータ。
「地ビール」は1994年から使用が見られ、一番多いのは1994年の63件、2012年以降は、2018年の14件をのぞいて、一桁台である。
一方、「クラフトビール」の使用が初めて見られるのは2013年。一番多いのは2016年の37件で、2013年の登場以降、2014年と2020年をのぞいて、二桁台となっている。
このデータから、「クラフトビール」という語の登場とともに、2012〜2013年ごろにいっきに使用状況が入れ替わったのがわかる。
この頃、何があったんだろう、とぼーっとデータをながめていたとき、大阪版には2012年にも「クラフトビール」の記事があったことに気がついた。
そして出てきた記事の見出しがこれ。
「豪ビール会社を買収へ−−キリンHD」」
どうやらこの年に、キリンHDがオーストラリアのリトル・ワールドという会社を買収したらしい。
記事本文には、
「リトル・ワールドは、現地で市場が拡大している『クラフトビール』と呼ばれる地域ブランドのビールの製造・販売を手掛けている。」とある。
(「クラフトビール」と呼ばれるという表現からもわかるように、この頃は「クラフトビール」はまだ新しい語であった。)
この記事の興味深いところは、craft beerを「地ビール」とは訳さずに、「クラフトビール」としたところ。
2013年7月の記事にはすでに「日本発の主なクラフトビール」といった記述もあるので、すっかり「地ビール」から「クラフトビール」に置き換わっていることがわかる。
その頃には、「地ビール」はもう古いものとなっていて、「クラフトビール」とすることで新しく見せたとも捉えられるし、
カタカナ語が増加傾向にありその波に乗ろうとした、とも捉えられるし、
ただ、カタカナ語でかっこよく見せようとした、とも捉えられる。
他にも考えられる理由があるかもしれない。
craft beerを「クラフトビール」とした人、出てこーい!笑
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