アイちゃんのお菓子作り

アイちゃんは、お菓子を作ってハルキくんにあげました。

お菓子を作る楽しさを知ってから早数年、今までは誰かにお菓子を作ってあげたことなんてありません。だから、とてもドキドキして恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。
ハルキくんは緊張したように「あああ・・・ありがとう。アア・・・アイちゃんも一緒に食べようねっ!」と言ってくれました。

ハルキくんと一緒に食べるお菓子は優しい味がしました。

それからも、ハルキくんはアイちゃんの作ったお菓子を一緒に食べてくれました。甘いお菓子、苦味のあるお菓子、酸味のあるお菓子・・・アイちゃんもいろいろなお菓子に挑戦しました。

でも、ある日ハルキくんはいなくなってしまいました。

しばらく、アイちゃんは自分のためにお菓子を作って食べていました。美味しいけれどちょっと寂しいなと思いました。

ナツオくんがアイちゃんの作るお菓子を食べたいと言いました。アイちゃんは腕によりをかけてお菓子を作ることにしました。

ナツオくんはアイちゃんの作るお菓子をむしゃむしゃ食べました。美味しそうですが、アイちゃんと一緒に食べてはくれません。
アイちゃんはちょっとつまらなかったのですが、でも美味しそうにお菓子を食べてくれるナツオくんを気に入りました。

ナツオくんは毎日、アイちゃんにお菓子を作ってほしいと頼みました。アイちゃん頑張って毎日いろいろなお菓子を作りました。

でも、ある日ナツオくんはいなくなってしまいました。

アイちゃんは悲しくなりました。
そして、旅に出たのです。

アイちゃんは顔のない国へいきました。
顔のない国の人達に手作りのお菓子を売ることにしました。

顔のない国の人達は、アイちゃんの作ったお菓子をたいそう喜んでくれました。
アイちゃんも嬉しくなりました。

その後のことはよくわかりませんが、顔のない国の人の噂では、アイちゃんはやがて顔のない国のプロのパティシエになったそうです。プロのパティシエの作るお菓子は絶品ですから、食べたいと言っている人が沢山います。アイちゃんは大忙しですが、とてもやりがいを感じているので幸せそうに微笑んでいるそうです。

でも、不思議ですね。顔のない国の人は自分の顔も他人の顔も見えないはずなのです。

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