*ビールと生きる憧れ
できることなら、
仕事で頑張って、くたくたな状態で帰宅したとき、冷蔵庫に手を伸ばして缶ビールを取り出し、プシュッと音を立て、ゴクゴクゴクッと喉を鳴らし、思いっきり息を吐き出した後に、「うまいっ!」と言える人生を送りたかった。
ドラマやCMで美味しそうにビールを飲んでいる芸能人たちを見てたら、自分もこんなふうになれたらなと、ふと思ってしまった。
お酒が好きなのに飲めないという人は、この世にどれだけいるんだろうか?
まったく飲めなかったら好きにはならないのかな。
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大学に入学した当初、お酒に強いか弱いかを判断するパッチテストを受けた。ガーゼを剥がしてすぐには赤くならなかったが、数分後にじわじわと症状が現れた。どうやらわたしの身体はアルコールを分解するのが苦手なようだ。大学生活が始まってウキウキしていた自分にとってはあまり嬉しくない結果。
「ホントは飲めないタイプ」と記されたイエローカードを授けられた。
それからというもの、お酒を飲む機会は徐々に増えていったけれど、その分つらい経験も増えた。消し去りたい過去もある。
もしかしたら「恋バナ」よりも「お酒での失敗」の方が語れるエピソードが多いかもよ?と思わせるほど永遠のテーマなのではと感じる。
まわりに迷惑をかけたこともあるくせに、大学時代は特に、みんなと飲むのがただただ楽しくてつい飲んでしまうということがよくあった。「ホントは飲めないタイプなんだよ〜」と笑いながら平気で飲んでた。そうして失敗を繰り返してた。
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「ホントは飲めないタイプ」というのがどういうことであるか、それは今だからわかること。
ちょっとくらいなら平気、
今日は調子がいいからイケそうな気がする、
まだ大丈夫かな、
というような油断が後々自分を苦しめることになった。大学入学時に渡されたイエローカードは「調子に乗るなよ」という忠告だったんだな。
現にお酒を飲んだら意識が遠のくことを知ってしまってからは、お酒を飲みたい!という衝動に駆られても身体が拒否するようになった。
だから、くたくたな身体が求めるものはお酒ではない。お茶か水だ。どちらかを口にしてしまえばお酒への衝動は収まる。
それで全然構わないのだけれど、
飲みたい!と思うことはやっぱりあるわけで、心はお酒を求めているわけで、そんな状態のときに、美味しそうにビールを飲む姿を目の当たりにしたら、ふと思ってしまうよね。
お酒が飲める人生だったらな、と。